「CPU Over Temperature Error」とは?原因と対処法を徹底解説
はじめに:PCからのSOS、「CPU Over Temperature Error」とは
あなたのPCが突然、起動時に見慣れないエラーメッセージを表示したり、OS上で警告を出したりしたことはありませんか?特に、「CPU Over Temperature Error」というメッセージが表示された場合、それはあなたのPCの心臓部とも言えるCPUが危険なほど熱くなっているという、PCからの重要なSOSです。
CPU(Central Processing Unit)は、PCのあらゆる計算処理を担う、非常に重要なパーツです。しかし、このCPUは高性能になればなるほど、多くの熱を発生させます。適切に冷却されないと、CPUは過熱し、その結果、様々な問題を引き起こす可能性があります。その最も顕著な兆候の一つが、「CPU Over Temperature Error」なのです。
このエラーを無視することは、PCの性能低下、不安定化、最悪の場合、CPUやマザーボードといった高価なパーツの故障につながる可能性があります。したがって、このエラーが発生した場合は、迅速かつ適切な対処が求められます。
本記事では、「CPU Over Temperature Error」がなぜ発生するのか、その具体的な原因は何か、そしてどのように対処すれば良いのかを、初心者の方にも分かりやすく、かつ詳細に解説します。約5000語にわたる徹底解説を通じて、あなたのPCを過熱の危機から救い、安定した動作を取り戻すための知識を身につけていきましょう。
PCの温度管理は、PCを長く、快適に使用するために不可欠なメンテナンス項目の一つです。この記事が、あなたのPCの健康状態を維持するための一助となれば幸いです。
「CPU Over Temperature Error」とは具体的にどのようなエラーか?
「CPU Over Temperature Error」は、マザーボードがCPUの温度センサーから取得した情報に基づいて、CPU温度が事前に設定された危険な閾値を超えたと判断した場合に発生するエラーです。このエラーは、主に以下のタイミングで表示されることが多いです。
- PC起動時(POST画面): PCの電源を入れた直後、OSが起動する前に表示されるBIOS/UEFI画面やPOST(Power-On Self-Test)画面でエラーメッセージとして表示されるパターンです。「CPU Over Temperature Error」、「System Halted, CPU Overheating」、「CPU Fan Error!」など、マザーボードメーカーによって文言は多少異なりますが、CPUの温度異常を示唆するメッセージが表示され、多くの場合はOSの起動が停止されます。これは、CPUが過熱状態にあるため、これ以上動作させると危険であるとシステムが判断し、保護機能として起動を停止させているためです。
- OS起動後: PCが起動し、WindowsやmacOSなどのOSが動作している最中に、システム監視ツールやマザーボードユーティリティソフトウェア、あるいはOS自体の機能によって警告メッセージとして表示されるパターンです。この場合、直ちにシステムがシャットダウンされることもあれば、警告のみでしばらく動作が継続することもあります。しかし、警告が出ている時点でCPUは危険な温度に達しているか、それに近い状態にあると考えられます。
このエラーが表示されるということは、マザーボードに搭載された温度センサーがCPUの温度をリアルタイムで監視しており、その値がBIOS/UEFI設定で定められた安全範囲を超えたことを意味します。マザーボードは、CPUを損傷から守るために、自動的にシステムを停止させる安全機構(Protection Mechanism)を備えているのです。
エラー発生のメカニズム
CPUは計算処理を行う際に電力を消費し、その消費電力は熱として放出されます。特に高負荷時には消費電力が増大するため、発熱量も大幅に増加します。この熱を効率的にCPUから奪い、外部に放出するのがCPUクーラーの役割です。
CPUクーラーは、通常、CPU表面に密着するヒートシンク(金属製の放熱器)と、そのヒートシンクの熱を空気中に拡散させるファンで構成されています(水冷クーラーの場合は仕組みが異なりますが、最終的に熱を外部に放出するという点は同じです)。CPUで発生した熱は、CPU表面からサーマルペースト(CPUグリス)を介してヒートシンクに伝わり、ヒートシンクから空気に熱が移され、ファンによってその暖かい空気がPCケース外に排出される、という流れで冷却が行われます。
「CPU Over Temperature Error」は、この冷却システムが何らかの理由で十分に機能せず、CPUが発生する熱を効率的に除去できていない場合に発生します。具体的には、CPU温度が例えば多くのマザーボードで設定されている80℃~90℃といった閾値を超えた際に、エラーとして検知されるのです。
他の温度関連のエラーや現象との関連性
「CPU Over Temperature Error」は、CPUの温度異常を示すサインの一つですが、他にも温度関連の現象やエラーが存在します。
- サーマルスロットリング(Thermal Throttling): CPUの温度が危険なレベルに近づくと、CPU自体が自己保護のために動作周波数を意図的に下げ、発熱量を抑えようとします。これがサーマルスロットリングです。サーマルスロットリングが発生すると、PCの動作が目に見えて遅くなります。エラーメッセージは出ないこともありますが、過熱の初期段階や、エラーを出すほどの温度ではないが高温である状態を示します。
- 自動シャットダウン: 「CPU Over Temperature Error」が表示されるほど温度が上昇した場合、マザーボードはCPUの損傷を防ぐために強制的にシステムの電源を落とします。これは、PCが突然落ちるという形で現れることがあり、作業中のデータが失われるリスクがあります。
- CPU Fan Error: これはCPUクーラーのファンが正常に回転していない、あるいはマザーボードがファンの回転数を検知できない場合に発生するエラーです。CPU温度が直接の原因ではありませんが、ファンが回っていないため必然的にCPU温度が上昇し、結果として「CPU Over Temperature Error」につながる可能性が高いです。
これらの現象は、いずれもPCの冷却システムに問題がある可能性を示唆しており、「CPU Over Temperature Error」は最も危険な温度状態であることを知らせる最終警告に近いものです。
CPUの温度管理の重要性:なぜ温度は重要なのか
PCのパフォーマンスと安定性を維持する上で、CPUの温度管理は非常に重要です。なぜCPU温度が高くなるのが問題なのでしょうか?
- 性能維持(サーマルスロットリングの回避): 前述のように、CPUは高温になるとサーマルスロットリングを発動させ、性能を意図的に低下させます。これはCPUを物理的な損傷から守るための重要な機能ですが、PCを使っている側としては、ゲームのフレームレートが低下したり、エンコード時間が長くなったりと、明らかなパフォーマンスの低下を感じることになります。CPUの潜在能力を最大限に引き出すためには、適切な温度を維持し、サーマルスロットリングを回避する必要があります。
- システムの安定性: 高温はCPUだけでなく、マザーボード上の周辺回路やメモリなど、他のコンポーネントにも悪影響を及ぼす可能性があります。温度が高い状態で長時間動作させると、システムが不安定になり、フリーズやブルースクリーン(BSoD)の原因となることがあります。
- パーツの寿命: 電子部品は一般的に、高温にさらされる時間が長いほど劣化が早まります。特にCPUやマザーボード、メモリといった重要なパーツの寿命は、適切な温度管理によって大きく左右されます。常に高温で運用しているPCは、そうでないPCに比べて故障しやすくなるリスクが高いです。
- 静音性: CPU温度が高くなると、CPUクーラーのファンは温度を下げるために回転数を上げます。ファンの回転数が上がると、当然ながら動作音も大きくなります。適切な冷却ができているPCは、必要以上にファンが高速回転する必要がないため、比較的静かに動作します。
一般的なCPUの適正温度範囲
CPUの適正温度範囲は、CPUのモデルやメーカー(Intel、AMDなど)、そして使用状況(アイドル時、高負荷時)によって異なります。しかし、一般的な目安としては以下のようになります。
- アイドル時(負荷がほとんどかかっていない状態): 30℃~50℃程度が一般的です。
- 通常使用時(ウェブブラウジング、オフィス作業など): 40℃~60℃程度が目安です。
- 高負荷時(ゲーム、動画編集、ベンチマークなど): 60℃~85℃程度であれば、多くのCPUで許容範囲内とされることが多いです。
ただし、最新の高性能CPUは、設計上、ある程度の高温(80℃台後半~90℃台前半)でも動作するように設計されている場合もあります。しかし、これはあくまで「壊れない」というレベルであり、可能であれば70℃台以下を維持するのが理想的です。
危険な温度の目安: 多くのCPUで、90℃を超える温度は危険信号と考えられます。「CPU Over Temperature Error」は、この90℃やそれ以上の温度に達した際に発生することが多いです。100℃近くになると、CPUは損傷を防ぐために強制的にシャットダウンしたり、極端なサーマルスロットリングを行ったりします。
したがって、CPUの温度は常に適切な範囲内に保つことが、PCの性能、安定性、寿命にとって非常に重要なのです。
「CPU Over Temperature Error」の主な原因
「CPU Over Temperature Error」が発生する原因は多岐にわたりますが、そのほとんどは冷却システムに関連する問題です。ここでは、可能性の高い原因から順に、それぞれを詳しく見ていきましょう。
1. 冷却システムの問題(最も一般的)
PC内部で発生する熱を最も直接的に処理するのが冷却システムです。ここに問題があると、CPU温度はすぐに上昇します。
- CPUクーラーの取り付け不良・外れかけ: CPUとCPUクーラーのヒートシンクは、隙間なく密着している必要があります。取り付けネジが緩んでいたり、固定クリップが外れていたりすると、CPUとヒートシンクの間に隙間ができ、熱がうまく伝わりません。特に、PCケースを開けて内部を触った後や、PCを移動させた後に発生することがあります。
- CPUグリス(サーマルペースト)の劣化・乾燥・塗布量不足/過多: CPUグリスは、CPUの表面とヒートシンクの底面の間に存在する微細な凹凸を埋め、熱伝導率を高めるためのものです。時間が経つと乾燥したり劣化したりして、熱伝導率が低下します。また、グリスの量が不足していると隙間を埋めきれず、量が多すぎるとかえって厚みが出て熱伝導を妨げることがあります。工場出荷時に塗られているグリスや、一度取り付けたクーラーを外して再利用する場合などに劣化が問題になることがあります。
- CPUクーラーのファン故障・回転数低下: CPUクーラーのファンが故障して全く回転しない、あるいはモーターの劣化などで回転数が極端に低下している場合、ヒートシンクから放熱された熱を外部に排出する能力が著しく低下します。ファンが回っているように見えても、規定の回転数が出ていない場合もあります。
- ヒートシンクのホコリ詰まり: ヒートシンクは多くのフィン(薄い金属板)で構成されており、表面積を増やして効率的に熱を空気中に放出する構造になっています。しかし、このフィンとフィンの間にホコリが溜まると、空気の通り道が塞がれ、熱交換の効率が劇的に低下します。PCを長期間使用していると、静電気でホコリが引き寄せられ、特にヒートシンクに溜まりやすいです。
- 水冷クーラーの場合の特有の問題: 水冷クーラーを使用している場合は、上記に加え、ポンプの故障(冷却液が循環しない)、ラジエーター(空冷クーラーのヒートシンクに相当)のホコリ詰まり、冷却液の劣化・減少・漏れといった原因が考えられます。ポンプが停止すると、CPUは全く冷却されなくなるため、非常に危険です。
2. ケース内のエアフロー不足
PCケース内の空気の流れ(エアフロー)が悪いと、CPUクーラーがいくら頑張っても、ケース内部に熱がこもり、最終的にCPU温度が上昇します。
- PCケースの吸排気ファンの不足・故障・取り付け方向の間違い: ケースファンは、外の冷たい空気をケース内に取り込み(吸気)、内部の暖かい空気を外に排出する(排気)役割を担います。ファンが少なかったり、故障していたり、取り付け方向が間違っている(吸気ファンと排気ファンが互いに打ち消し合う方向など)と、ケース内の換気がうまくいきません。
- ケーブル類の整理不足による空気の流れの阻害: PC内部のケーブル(電源ケーブル、SATAケーブルなど)が乱雑に配置されていると、空気の通り道を塞いでしまい、スムーズなエアフローを妨げます。
- PCケースの通気口が塞がれている: PCケースの吸排気口が壁や障害物に密着していたり、PCケース自体が狭いスペースに押し込まれていたりすると、新鮮な空気を取り込みにくく、暖かい空気を排出しにくくなります。
3. CPUの負荷過多
CPUが常に高い負荷で稼働していると、当然発熱量も増大します。冷却システムがその熱を処理しきれなくなると、温度が上昇します。
- 長時間の高負荷作業: 最新のゲーム、動画編集、エンコード、3Dレンダリング、科学計算など、CPUに高い負荷をかける作業を長時間続けると、CPU温度は高くなります。冷却システムが作業に見合わない能力しかない場合、温度は危険なレベルに達する可能性があります。
- バックグラウンドで動作している不要なプロセス: 知らないうちに多くのアプリケーションがバックグラウンドで動作していたり、OSのアップデート処理などが裏で走っていたりすると、CPU使用率が上昇し、アイドル時でも温度が高くなることがあります。
- マルウェア感染によるCPU使用率の異常な上昇: ウイルスやマルウェアに感染すると、それらが不正な処理を実行するためにCPUを過剰に使用することがあります。これにより、CPU使用率が常に100%に張り付くような状態になり、温度が急上昇するケースがあります。
4. オーバークロック
CPUを定格よりも高い周波数で動作させるオーバークロックは、PCの性能を向上させる魅力的な手段ですが、同時に消費電力と発熱量を大幅に増加させます。
- 冷却能力が追いついていない状態でのオーバークロック: オーバークロックによって増加した発熱量を処理できる、より強力な冷却システムを用意しないと、CPUは簡単に過熱します。
- 電圧の上げすぎ: 安定動作のためにCPU電圧(Vcore)を定格より上げることも多いですが、電圧を上げすぎると発熱量が指数関数的に増加するため、過熱の原因になりやすいです。
5. 環境温度
PCが設置されている場所の室温も、CPU温度に直接影響します。
- PCを使用している部屋の温度が高すぎる: エアコンを使わない真夏日など、部屋の温度が30℃を超えるような環境では、冷却システムが取り込む空気自体の温度が高いため、CPUを十分に冷やすことが難しくなります。
- 直射日光が当たる場所での使用: PCケースに直射日光が当たると、ケース自体の温度が上昇し、内部の温度も高くなります。
6. BIOS/UEFI設定
マザーボードのBIOS/UEFI設定によっては、冷却システムが適切に動作しないことがあります。
- ファン制御設定の誤り: BIOS/UEFIでファン制御モードを手動設定しており、回転数が低い固定値に設定されている場合や、温度に応じた回転数制御(Smart Fan Controlなど)の設定が適切でない場合、温度が上昇してもファンが十分に加速せず、冷却が追いつかないことがあります。
- CPU電圧設定の誤り: オーバークロックをしていなくても、何らかの理由でCPU電圧が不必要に高く設定されていると、発熱量が増加します。
7. ハードウェアの故障(稀)
- マザーボードのファンコネクタ故障: マザーボード上のCPUファンコネクタが故障していると、ファンが正常に回転しないことがあります。
- CPU自体のセンサー異常: 非常に稀ですが、CPU自体の温度センサーが異常な値を報告している可能性もゼロではありません。しかし、この原因は極めて少なく、他の原因を先に疑うべきです。
これらの原因が単独で、あるいは複数組み合わさることで、「CPU Over Temperature Error」が発生します。原因を特定するためには、これらの可能性を一つずつ潰していく作業が必要になります。
「CPU Over Temperature Error」の対処法:ステップバイステップ
「CPU Over Temperature Error」が発生した場合、PCの損傷を防ぐために迅速かつ適切な対処が必要です。焦らず、以下のステップに沿って原因特定と対処を行いましょう。
ステップ1:PCのシャットダウンと冷却
エラーが表示された場合、まず何よりも優先すべきは、PCを安全にシャットダウンし、十分に冷却することです。
- 安全なシャットダウン: POST画面でエラーが出ている場合は、画面の指示に従ってシャットダウンするか、それができない場合は電源ボタンを長押しして強制終了させます。OS上で警告が出ている場合は、可能な限りOSのシャットダウン手順を実行します。
- 電源ケーブルを抜く: シャットダウンが完了したら、必ずPC本体から電源ケーブルを抜いてください。これにより、通電によるさらなる発熱や、作業中の感電リスクを完全に排除できます。
- PCを触らずに冷ます: 電源を切っても、内部のコンポーネントはしばらく熱を持っています。PCケースに触らず、しばらく(最低でも30分~1時間、可能なら数時間)放置して、内部が完全に冷めるのを待ちます。この間に、設置場所の換気を良くしたり、室温を下げるなど、冷却を助ける環境を整えるのも良いでしょう。
注意: エラーが出ているにも関わらず、PCを使い続けたり、再起動を繰り返したりしないでください。これはCPUにさらなるダメージを与えるリスクを高めます。
ステップ2:物理的な点検と清掃
PCが十分に冷めたら、PCケースを開けて内部の物理的な状態を点検し、徹底的な清掃を行います。この作業は、最も可能性の高い原因である冷却システムの問題に対処するための重要なステップです。
- 静電気対策: PC内部のコンポーネントは静電気に弱いです。作業を始める前に、必ず体に溜まった静電気を逃がしてください。金属製のPCケースに触れる、またはリストストラップ(帯電防止リストバンド)を使用するのが効果的です。カーペットの上など、静電気が発生しやすい場所での作業は避けてください。
- PCケースを開ける: PCケースの側面パネルを開けます。開き方はケースによって異なりますので、取扱説明書を参照してください。通常は背面パネルにあるネジを外してスライドさせるか、ヒンジで開くタイプです。
- CPUクーラーの取り付け状態を確認: CPUクーラーがマザーボードにしっかりと固定されているか確認します。ネジ止め式の場合はネジが緩んでいないか、プッシュピン式の場合はピンが奥までしっかり差し込まれているか、クリップ式の場合はクリップが所定の位置で固定されているかを確認します。もし緩んでいる場合は、しっかりと固定し直します。ただし、取り付け不良が原因の場合、グリスの再塗布が必要になる可能性が高いです(後述)。
- CPUクーラー(ヒートシンクとファン)のホコリを徹底的に除去: これが最も重要な清掃作業です。
- ファン: ファンブレードに溜まったホコリを、柔らかいブラシや綿棒などで優しく取り除きます。ファンを回転させながらホコリを飛ばす行為は、ファンの軸受にダメージを与える可能性があるので、手で固定しながら行うか、エアダスターを使用してください。
- ヒートシンク: ヒートシンクのフィンとフィンの間に詰まったホコリを、エアダスターや細いブラシ、ピンセットなどを使って徹底的に除去します。エアダスターを使う際は、ホコリが舞い上がるため、屋外や換気の良い場所で行うのが望ましいです。また、エアダスターは缶を立てて使用し、逆さにしたり傾けすぎたりしないように注意してください(液化ガスが出てくる可能性があります)。フィンを曲げないように優しく作業します。
- ファンを取り外して清掃: クーラーによっては、ファンをヒートシンクから取り外せることがあります。取り外せる場合は、ファンとヒートシンクを別々にして清掃すると、より効率的にホコリを除去できます。
- ケースファン、吸排気口のホコリ除去: PCケースに付いている吸気ファン、排気ファン、電源ユニットのファン、そしてケースの吸排気口やフィルター(フィルターがある場合)も同様にホコリを除去します。特に吸気側にはホコリが溜まりやすいので念入りに行います。
- ケーブルの整理: 内部のケーブルが空気の流れを妨げている場合は、結束バンドなどを使ってまとめ、マザーボードやケースの側面などに沿わせるように整理します。これにより、エアフローが改善されます。
清掃と物理的な点検が完了したら、PCケースの側面パネルを元に戻します。
ステップ3:CPUグリスの塗り直し
CPUクーラーを取り外して清掃したり、取り付け不良が疑われる場合は、CPUグリスの塗り直しが必要不可欠です。古いグリスは熱伝導率が低下している可能性が高いですし、一度剥がしたグリスは再利用できません。
- CPUクーラーの取り外し: マザーボードからCPUクーラーを取り外します。固定方法(ネジ、プッシュピン、クリップなど)を確認し、慎重に外します。グリスが固着している場合、少しひねるようにすると剥がしやすいことがあります。無理に引っ張るとCPUがソケットから外れてピンを曲げてしまう可能性があるので注意が必要です(特にAMDのCPU)。
- 古いグリスの拭き取り: CPUのヒートスプレッダ(CPU表面の金属カバー)と、CPUクーラーのヒートシンク底面に付着している古いグリスを完全に拭き取ります。専用のグリスクリーナーや、薬局などで手に入る無水エタノール、またはイソプロピルアルコール(IPA)を少量、ティッシュペーパーやマイクロファイバークロスに含ませて優しく拭き取ります。アルコールは揮発性が高く、電子部品に比較的安全です。水や洗剤は使用しないでください。
- 新しいグリスの準備: 新しいCPUグリスを用意します。PCパーツ店などで入手できます。熱伝導率の高いものが望ましいですが、一般的な使用であれば付属のグリスでも十分なことが多いです。
- グリスの適切な塗布: グリスは塗りすぎても少なすぎてもいけません。最適な量は、米粒大~グリンピース大程度をCPUヒートスプレッダの中央に1点塗布するのが最も一般的で推奨される方法です。CPUクーラーの圧によって自然に広がります。他にも、細く線状に塗る方法(線塗り)や、全体に薄く均一に伸ばす方法(ヘラ塗り)などがありますが、1点塗りが最も手軽で失敗しにくい方法です。薄く均一に伸ばす場合は、気泡が入らないように注意が必要です。
- CPUクーラーの再取り付け: グリスを塗布したら、すぐにCPUクーラーを元通りに取り付けます。取り付けネジやプッシュピン、クリップを、マザーボードの指示に従って対角線上に少しずつ均等に締め付けていくのがポイントです。これにより、グリスが均一に広がり、ヒートシンクがCPUに平行に密着します。強く締め付けすぎるとマザーボードが歪む可能性があるので注意が必要です。
- 水冷クーラーの場合: ラジエーターのホコリ清掃に加え、ポンプのケーブルがマザーボードのCPUファンコネクタまたはポンプ用コネクタに正しく接続されているか確認します。冷却液の量を確認することは難しい場合が多いですが、異音などがする場合はポンプ故障やエア噛みを疑います。
CPUグリスの塗り直しは、CPU冷却性能を復活させる上で非常に効果的な対処法です。特にPCを数年使用している場合は、グリスの劣化が原因である可能性が高いです。
ステップ4:ファン動作の確認
物理的な清掃とグリスの塗り直しが終わったら、ファンが正常に回転しているかを確認します。
- PC起動時の目視確認: ケースを開けたまま、または側面パネルが透明な場合は、PCの電源を入れてすぐにCPUクーラーのファンやケースファンが回転を始めるか目視で確認します。すべてのファンがスムーズに回転していることを確認してください。
- BIOS/UEFI設定でのファン回転数確認: PC起動直後にBIOS/UEFI設定画面に入ります(起動時に特定のキー、例えばDelキーやF2キーなどを連打)。BIOS/UEFIには、システムの温度やファン回転数を表示する項目があります(「PC Health Status」、「Hardware Monitor」、「Monitor」など、マザーボードによって異なります)。ここで、CPUファンの回転数(RPM)が表示されているか、異常に低い値になっていないかを確認します。
- OS上でのモニタリングツールの使用: WindowsなどのOSが起動できる状態であれば、HWMonitor、HWiNFO、Core Temp、SpeedFanなどのモニタリングツールをインストールして実行します。これらのツールは、CPU温度、ファン回転数、電圧など、システムの詳細な情報をリアルタイムで表示できます。CPUファンの回転数が温度に応じて適切に変化しているかを確認します。
- ファンが故障している場合: もし特定のファン(CPUファン、ケースファンなど)が全く回転しない、異音がする、回転数が異常に低い、といった場合は、そのファンが故障している可能性が高いです。故障したファンは交換が必要です。CPUファンが故障している場合は、同じソケットに対応した交換用ファンまたはCPUクーラーを用意して交換します。ケースファンも、サイズ(例:120mm)を確認して交換します。
ステップ5:BIOS/UEFI設定の確認と変更
ファンが物理的に正常でも、BIOS/UEFI設定によって回転が制限されている場合があります。
- BIOS/UEFI設定画面に入る: PC起動時に指定されたキーを押してBIOS/UEFI設定画面に入ります。
- 温度監視機能の確認: システムの温度(CPU Temperature, System Temperatureなど)が表示されている項目を確認します。ここで表示されている温度が、OS上のモニタリングツールなどで確認した温度と大きくかけ離れていないか確認します(センサーの異常を疑う場合)。
- ファン制御設定の確認と変更: ファン制御に関する設定項目を探します(「Fan Control」、「Q-Fan Control」、「Smart Fan Control」、「Hardware Monitor」内など)。
- 制御モード: マザーボードが温度に応じてファンの回転数を自動調整する設定(通常「Auto」、「Smart Fan Control」、「PWM Mode」、「DC Mode」を適切に設定するなど)になっているか確認します。もし「Manual」や「Fixed RPM」になっており、回転数が低く設定されている場合は、「Auto」モードに戻すことを検討します。
- 温度カーブ(Fan Curve): 温度に応じて回転数をどう変化させるかの設定(ファンカーブ)がカスタマイズできる場合、極端に低い回転数で設定されていないか確認します。必要に応じてデフォルトに戻したり、より積極的に冷却する設定に変更したりします。
- CPU Fan Warning/Monitor: CPUファンの回転数が一定値を下回った場合に警告を出す設定項目(CPU Fan Speed Warningなど)があれば、これが有効になっているか確認します。また、CPUファンが接続されているコネクタが正しく認識されているか確認します。
- オーバークロック設定の無効化: もしオーバークロックを行っている場合は、一時的にオーバークロック設定を全て無効にし、CPUを定格動作(Load Default SettingsやLoad Optimized Defaults)に戻します。定格に戻してもエラーが発生する場合は、オーバークロック以外の原因であることが明確になります。
- CPU電圧設定の確認: オーバークロックに関連してCPU電圧を手動で設定している場合、その値が適切か確認します。通常は「Auto」設定で問題ありません。誤って過電圧に設定していると、発熱量が大幅に増加します。オーバークロックを無効化すれば、電圧設定も定格に戻されることが多いです。
BIOS/UEFI設定を変更した場合は、忘れずに設定を保存(Save and Exit)して再起動します。
ステップ6:ソフトウェア的な対処
物理的な問題やBIOS設定に異常が見られない場合、OS上で動作するソフトウェアに原因がある可能性も検討します。
- OS起動後のCPU使用率の確認: Windowsの場合はタスクマネージャー(Ctrl+Shift+Esc)、macOSの場合はアクティビティモニタを起動し、CPUタブで各プロセスのCPU使用率を確認します。特定のプロセスが異常に高いCPU使用率で継続的に動作していないか確認します。
- 不要な常駐ソフトの停止: OS起動時に自動的に起動するアプリケーションの中には、CPUリソースを消費するものがあります。必要のないものは停止するか、自動起動を無効に設定します。
- マルウェアスキャンの実行: 不審なプロセスがCPUを大量に使用している場合、マルウェアに感染している可能性があります。信頼できるセキュリティソフトでフルスキャンを実行し、検出されたマルウェアを駆除します。
- OSやドライバのアップデート: ごく稀に、OSの電源管理機能やマザーボード、グラフィックカードなどのドライバが、ファン制御や電力供給に影響を与えている可能性もゼロではありません。OSのアップデートや、マザーボード、グラフィックカードなどの最新ドライバを適用してみることも有効な場合があります。特に、チップセットドライバーは電力管理に関わるため、最新版を確認すると良いでしょう。
ステップ7:環境の改善
PCが設置されている環境も、温度に影響を与えます。
- PCの設置場所を見直す:
- 壁から十分に離し、吸排気口が塞がれていないことを確認します。
- 風通しの良い場所に設置します。
- 直射日光が当たる場所や、暖房器具の近くには置かないようにします。
- カーペットなど、ホコリが舞い上がりやすく、吸気口を塞ぎやすい場所への直置きは避けます。
- 室温を下げる: 可能であれば、エアコンなどを使用して部屋の温度を下げます。特に夏場は、室温が高いだけでPC温度も高くなりがちです。
ステップ8:ハードウェアの交換
上記の対処法を試しても改善しない場合や、特定のパーツの故障が確認できた場合は、ハードウェアの交換が必要になります。
- より高性能なCPUクーラーへの交換: 現在のCPUクーラーの冷却能力が、CPUの発熱量に対して不足している可能性があります(特に高性能なCPUやオーバークロックしている場合)。より大型のヒートシンクを持つ空冷クーラーや、より強力な水冷クーラーへの交換を検討します。CPUのTDP(Thermal Design Power)値や、将来的なアップグレードの可能性も考慮して、適切な冷却能力を持つクーラーを選びましょう。
- ケースファンの増設や交換: ケース内のエアフローが不十分な場合は、ケースファンを増設したり、既存のファンをより風量の大きいファンに交換したりすることを検討します。吸気と排気のバランスも重要です。
- ケース自体の買い替え: 現在使用しているPCケースのエアフロー構造が根本的に悪い場合、通気性の良い設計のケースに買い替えることも有効な手段です。メッシュ素材を多用しているケースなどは、優れたエアフローを実現しやすいです。
- CPUやマザーボードの交換: ファンコネクタの故障など、マザーボード側の問題が疑われる場合、またはCPU自体の異常(非常に稀ですが)が疑われる場合は、これらのパーツの交換が必要になる可能性があります。ただし、これらの交換は専門知識と技術が必要であり、費用も高額になるため、慎重な判断が必要です。
ステップ9:プロフェッショナルへの相談
一連の対処法を試しても問題が解決しない場合、あるいはPCの分解やパーツ交換に自信がない場合は、専門のPC修理業者や購入元、メーカーのサポートに相談することを強く推奨します。無理に作業を続けて、他のパーツを損傷させてしまうリスクを避けるためです。
CPU温度のモニタリング方法
「CPU Over Temperature Error」が発生する前に、あるいは対処後に、CPU温度が適切に管理されているかを確認するために、温度をモニタリングする習慣をつけることは非常に有用です。
CPU温度をモニタリングする方法はいくつかあります。
- BIOS/UEFIでの確認: PC起動時にBIOS/UEFI設定画面で確認できます。これはOS起動前の状態での温度を示します。
- OS上で動作するモニタリングツール:
- HWMonitor: CPU、GPU、マザーボード、ストレージなど、PC内の様々なコンポーネントの温度、電圧、ファン回転数などを一覧で表示できる定番フリーソフトです。アイドル時と高負荷時の最大温度などを確認するのに非常に便利です。
- HWiNFO: HWMonitorよりもさらに詳細な情報を表示できる高機能なモニタリングツールです。センサー情報が非常に豊富で、トラブルシューティングにも役立ちます。
- Core Temp: CPUの各コア温度に特化したシンプルで使いやすいツールです。タスクトレイにCPU温度を表示させることもできます。
- RealTemp: Intel製CPUに特化したモニタリングツールです。
- SpeedFan: CPU温度に応じてファンの回転数を制御する機能も持つツールですが、設定が少し複雑な場合があります。
- マザーボード付属のユーティリティソフト: 多くのマザーボードメーカーは、Windows上で温度監視やファン制御ができる専用のユーティリティソフトを提供しています。これを利用するのも良いでしょう。
これらのツールを使用して、PCがアイドル状態の時と、ゲームやエンコードなどの高負荷作業を行っている時のCPU温度を確認します。アイドル時に温度が高すぎる(例えば60℃を超える)場合や、高負荷時に90℃に迫る、あるいは超えるような場合は、冷却システムに問題がある可能性が高いです。
モニタリングは、単に現在の温度を見るだけでなく、PCの負荷をかけたときに温度がどのように変化するか、ファン回転数がそれに追従しているかなどを確認することで、冷却システムが正常に機能しているか判断するのに役立ちます。
予防策とメンテナンス:エラーを防ぐために
「CPU Over Temperature Error」を未然に防ぐためには、日頃からの適切なメンテナンスと予防策が重要です。
- 定期的なPC内部の清掃: 最も効果的な予防策は、定期的なホコリ除去です。PCケースを開けて、CPUクーラー、ケースファン、吸排気口などのホコリを、数ヶ月に一度(設置環境によりますが、最低でも半年に一度)は清掃しましょう。特にホコリが溜まりやすい環境で使用している場合は、より頻繁な清掃が必要です。
- CPUグリスの定期的なチェック・塗り直し: CPUグリスは時間の経過とともに劣化します。PCの組み立てから数年(3年~5年程度が目安)経過している場合や、CPUクーラーを一度取り外した場合は、グリスの塗り直しを検討しましょう。
- ファン動作の定期的な確認: PC起動時や、PC使用中にファンから異音がしないか、回転数が異常に低くなっていないかなどを時々確認します。モニタリングツールでファン回転数をチェックするのも良いでしょう。
- PCケースの設置場所に気をつける: 吸排気口を塞がないように、PCケースを壁から離して設置し、風通しの良い場所を選びます。タワー型PCの場合は、床に直置きするよりも、少し高くなった台などに置く方がホコリを吸い込みにくくなります。
- 適切な冷却能力を持つCPUクーラーの選択: CPUのモデルや発熱量に見合った、あるいはそれ以上の冷却能力を持つCPUクーラーを選択することが、安定した温度を保つために重要です。特に高性能なCPUや、将来的なアップグレードを検討している場合は、冷却性能に余裕のあるクーラーを選ぶと良いでしょう。
- ケースファンの適切な配置と増設: PCケースのエアフローを考慮し、吸気と排気のバランスが良い位置にケースファンを配置します。必要であればケースファンを増設し、ケース内の空気を効率的に循環させます。
- オーバークロックは慎重に行う: オーバークロックを行う場合は、CPUの選定、適切なマザーボード、そして何よりも強力な冷却システムが必須です。温度をしっかりモニタリングしながら、無理のない範囲で行うことが重要です。
- 信頼できる電源ユニットの選択: 電源ユニット(PSU)の品質も、システムの安定性に間接的に影響を与えることがあります。高品質で適切な容量のPSUは、安定した電力供給を行い、他のコンポーネントへの不要な負荷や発熱を抑えるのに役立ちます。
- 室温の管理: 可能であれば、PCを使用する部屋の室温を快適な範囲(20℃~25℃程度)に保つようにします。
これらの予防策と定期的なメンテナンスを行うことで、「CPU Over Temperature Error」の発生リスクを大幅に低減し、PCを長期間安定して使用することができます。
まとめ:「CPU Over Temperature Error」は早期発見と適切な対処が鍵
「CPU Over Temperature Error」は、PCの主要な計算処理装置であるCPUが危険なほど過熱していることを示す、非常に重要な警告です。このエラーは、PCの保護機能として表示されるものであり、これを放置したり無視したりすることは、PCの性能低下、不安定化、そして最終的にはハードウェアの損傷につながる深刻なリスクを伴います。
本記事で詳しく解説したように、このエラーの主な原因は、CPUクーラーの取り付け不良、CPUグリスの劣化や乾燥、ファンの故障、ヒートシンクやケース内のホコリ詰まりといった、冷却システムに関連する問題がほとんどです。その他、ケース内のエアフロー不足、CPUへの過負荷、オーバークロック、環境温度、BIOS/UEFI設定の誤りなども原因となり得ます。
「CPU Over Temperature Error」が表示された場合は、慌てずにPCをシャットダウンし、十分に冷却した後、本記事で紹介したステップに沿って対処を進めてください。最も効果的な対処法は、PCケースを開けて内部を徹底的に清掃し、特にCPUクーラーのホコリを除去し、可能であればCPUグリスを塗り直すことです。ファンの動作確認や、BIOS/UEFI設定の見直しも重要です。
これらの基本的な物理的メンテナンスで問題が解決しない場合は、ソフトウェア的な原因(高負荷プロセス、マルウェアなど)や、ハードウェアの故障(ファンやクーラー自体の性能不足・故障、マザーボードの異常など)を疑い、必要に応じてパーツの交換や専門家への相談を検討します。
そして何よりも、エラーが発生する前に、定期的なメンテナンスを行うことが最も重要です。PC内部のホコリを定期的に清掃し、ファンやグリスの状態をチェックする習慣をつけることで、「CPU Over Temperature Error」のリスクを大幅に減らすことができます。
PCは精密機器であり、適切なケアをすることでその寿命を延ばし、常に最高のパフォーマンスを発揮させることができます。CPUの温度管理は、PCの健康状態を維持するための基本中の基本です。
もしこの記事を読んで「うちのPC、最近なんか遅いな」「ファンがうるさいな」と感じた方は、それはすでに冷却システムに何らかの兆候が現れているサインかもしれません。「CPU Over Temperature Error」が表示される前に、一度PC内部の点検と清掃を行ってみることをお勧めします。
あなたのPCが常に快適な温度で動作し、最高のパフォーマンスを発揮し続けられることを願っています。
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