CentOSの次を探すあなたへ:最適な後継Linuxを紹介

はい、承知いたしました。「CentOSの次を探すあなたへ:最適な後継Linuxを紹介」と題し、約5000語の詳細な説明を含む記事を作成します。


CentOSの次を探すあなたへ:最適な後継Linuxを紹介

かつて多くのシステム管理者や開発者にとって、サーバーOSの標準とも言える存在だったCentOS。Red Hat Enterprise Linux(RHEL)との高い互換性を持ちながら無償で利用できるその性質から、本番環境のサーバー、開発・テスト環境、学習用途など、幅広い分野で活用されてきました。しかし、2020年末に発表されたCentOS Projectの方針転換、特にCentOS Linux 8のサポート期間短縮とCentOS Streamへの移行は、多くのユーザーに衝撃を与え、新たなOSへの移行を迫られる事態となりました。

もしあなたがCentOSを利用しており、今後の移行先を探しているならば、その選択肢は一つではありません。この記事では、CentOSの終焉がなぜ起こったのか、そしてCentOSの精神や機能を継承する、あるいは異なるアプローチを提供する様々な後継候補を詳しく紹介します。あなたのシステムや要件に最適なLinuxディストリビューションを見つけるための情報を提供し、スムーズな移行を支援することを目的とします。

1. なぜCentOSは終焉を迎えたのか? CentOS Projectの方針転換

CentOS(Community ENTerprise Operating System)は、商用OSであるRHELのソースコードを元に、Red Hat社とは独立したコミュニティによって開発・提供されてきたフリーなLinuxディストリビューションです。RHELとの高い互換性と無償であることから、多くの企業や個人に利用されてきました。CentOS 7は2024年6月末までサポートが継続されますが、2019年9月にリリースされたCentOS 8は、当初2029年5月までサポートされる予定だったにも関わらず、2021年12月31日をもってサポートが終了するという異例の事態となりました。

この急な方針転換の背景には、Red Hat社のCentOS Projectに対する戦略変更があります。Red Hat社は、CentOS Linuxを「RHELのダウンストリーム(RHELのリリース後にそのソースコードから派生するディストリビューション)」としてではなく、「RHELのアップストリーム(RHELのリリース前に開発やテストが行われる先行ディストリビューション)」であるCentOS Streamに注力することを発表しました。

具体的には、従来のCentOS Linuxが「RHELの安定版リリースを追従する」形だったのに対し、CentOS Streamは「RHELの次のマイナーリリースに向けた開発ブランチ」という位置づけになります。これは、CentOS StreamがRHELよりも頻繁に、かつRHELに取り込まれる前の開発途中の変更を含む可能性があることを意味します。

Red Hat社の狙いとしては、

  • 開発プロセスの透明性の向上: RHELがどのように開発されているかを外部に公開し、開発初期段階からコミュニティのフィードバックを得る。
  • エコシステムの活性化: ISV(Independent Software Vendor)やパートナー企業が、RHELの将来のバージョンをより早期にテストし、互換性の問題を事前に特定できるようにする。
  • CentOS Projectへのより直接的な貢献: コミュニティがRHELの開発に直接関与できる機会を提供する。

といった点が挙げられます。しかし、CentOS Linuxのユーザー視点では、これは「安定したRHELクローンが無償で手に入る」という従来のメリットが失われることを意味しました。CentOS Streamは開発ブランチであるため、従来のCentOS Linuxのような「エンタープライズレベルの安定性」を本番環境で期待するのは難しいと判断するユーザーが多く、後継となる新たな安定版OSを探す必要が生じたのです。

特に、CentOS 7から8への移行を計画していたユーザーや、CentOS 8をすでに導入していたユーザーは、短期間での再度の移行を迫られることになり、大きな混乱を招きました。この出来事は、オープンソースプロジェクトであっても、その基盤となる企業の意向によって将来が大きく左右される可能性があるという現実を突きつけました。

2. CentOS後継候補の主要な選択肢

CentOS Linuxの終焉を受けて、多くのユーザーが代替となるOSを探し始めました。そのニーズに応える形で、いくつかの新しいプロジェクトが立ち上がったり、既存のディストリビューションがCentOSユーザーの受け皿として注目されたりしています。主な後継候補としては、以下のディストリビューションが挙げられます。

  1. AlmaLinux: CloudLinux社が支援する、RHELバイナリ互換のコミュニティ主導ディストリビューション。
  2. Rocky Linux: CentOSの共同創設者の一人、Gregory Kurtzer氏が中心となって立ち上げた、RHELバイナリ互換のコミュニティ主導ディストリビューション。
  3. CentOS Stream: Red Hat社が提唱する、RHELの先行開発版。
  4. Oracle Linux: Oracle社が提供するRHEL互換ディストリビューション。無償利用が可能。
  5. Red Hat Enterprise Linux (RHEL) そのもの: 商用ではあるが、特定条件で無償利用枠が設けられた。
  6. その他の選択肢: Debian, Ubuntuなど、RHEL系とは異なる系統のディストリビューション。

これらの選択肢は、それぞれ異なる開発体制、目標、技術的な特徴を持っています。次に、これらの主要な後継候補について、さらに詳しく見ていきましょう。

3. 主要な後継候補の詳細な比較と解説

ここでは、前述の主要なCentOS後継候補について、その特徴、メリット・デメリット、ユースケースなどを掘り下げて解説します。

3.1 AlmaLinux

  • 開発背景: AlmaLinuxは、サーバーOSベンダーであるCloudLinux社が、CentOS Linuxの代替となるRHEL互換ディストリビューションを提供するために立ち上げたプロジェクトです。CloudLinux OSの開発で培ったRHEL互換システムのノウハウを活かし、迅速に開発が進められました。プロジェクトは後にAlmaLinux OS Foundationに移管され、独立した非営利組織による運営体制が確立されています。
  • 目標: RHELとの1:1バイナリ互換性を維持し、エンタープライズレベルの安定したプラットフォームを無償で提供すること。CentOSがかつて果たしていた役割を、コミュニティ主導で引き継ぐことを目指しています。
  • 特徴:
    • RHELとの高いバイナリ互換性: RHELの公開されているソースコードからビルドされており、RHELとほぼ完全に互換性があります。これにより、RHELやCentOSで動作していたアプリケーションやドライバの多くがそのまま動作することを期待できます。
    • コミュニティ主導: AlmaLinux OS Foundationという非営利組織によって運営されています。これは特定の企業(CloudLinux社)に依存しすぎない体制を築き、長期的な持続可能性を確保することを目的としています。ガバナンス構造は公開されており、技術委員会や理事会によって意思決定が行われます。
    • 無償: ライセンス料なしで利用できます。ソースコードも公開されています。
    • 安定したリリースサイクル: RHELのリリースサイクルに準拠しており、安定したエンタープライズ環境に適しています。
    • CloudLinuxの知見: 開発にCloudLinux社の技術者やノウハウが活かされており、エンタープライズ環境での信頼性が期待できます。
    • 多言語対応: グローバルなコミュニティによって、多言語のドキュメントやサポートが提供されています。
    • 移行ツール: CentOS 7/8などからAlmaLinuxへ簡単に移行できるツール(elevateなど)が提供されています。
  • メリット:
    • CentOS/RHELからの移行が比較的容易。
    • エンタープライズ用途に求められる安定性と信頼性。
    • 特定の企業に支配されない、コミュニティによる透明性の高い運営。
    • 充実したドキュメントと活発なコミュニティ。
    • 無償でありながら、商用サポートを提供するベンダーも存在する。
  • デメリット:
    • 新しいプロジェクトであるため、実績や長期的な持続性については、CentOS Linuxが長年積み上げてきたものと比較するとまだ歴史が浅い。
    • RHELのリリースからAlmaLinuxが追従リリースされるまでにわずかなタイムラグがある(RHELのソースコードが公開されてからビルドが始まるため)。
  • 移行ツール:
    • elevate: CentOS 7/8からAlmaLinux 8/9へのインプレースアップグレード(システムを再インストールせず、そのままアップグレードする)を支援するツール。Leappプロジェクトをベースにしており、比較的安全に移行を進めることができます。
  • ユースケース:
    • 既存のCentOS 7/8サーバーからの移行先。
    • RHEL互換の安定した本番サーバー環境。
    • Webサーバー、データベースサーバー、アプリケーションサーバーなど。
    • 開発・テスト環境。
    • CentOSの使い慣れた環境をそのまま引き継ぎたいユーザー。

3.2 Rocky Linux

  • 開発背景: Rocky Linuxは、CentOSの共同創設者であるGregory Kurtzer氏が、CentOS Linuxの終焉を受けて「CentOSのかつての精神を蘇らせる」ことを目標に立ち上げたプロジェクトです。Project Rockyとして開始され、その後Rocky Enterprise Software Foundation (RESF) という非営利組織によって運営されています。プロジェクト名は、もう一人のCentOS共同創設者であるRocky McGaugh氏に敬意を表して名付けられました。
  • 目標: RHELとの1:1バイナリ互換性を持ち、コミュニティによって完全に運営される、エンタープライズグレードの安定した無償OSを提供すること。CentOSが提供していた信頼性と安定性を、コミュニティの手に取り戻すことを目指しています。
  • 特徴:
    • RHELとの高いバイナリ互換性: AlmaLinuxと同様に、RHELのソースコードからビルドされ、高い互換性を持っています。
    • コミュニティ主導: Rocky Enterprise Software Foundation (RESF) という非営利組織によって運営されています。RESFは特定の企業に依存せず、コミュニティメンバーの貢献によって成り立っています。この点は、ガバナンスモデルにおいて、CloudLinux社の支援から始まったAlmaLinuxとの違いとして強調されることがあります(現在はAlmaLinuxもFoundationに移管済み)。
    • 無償: ライセンス料なしで利用できます。ソースコードも公開されています。
    • エンタープライズへの注力: 本番環境での利用を強く意識しており、安定性、セキュリティアップデートの迅速な提供に力を入れています。
    • 活発なコミュニティ: CentOSからの移行ユーザーを中心に、非常に活発なコミュニティが形成されています。
    • 移行ツール: CentOSなどからRocky Linuxへ移行するためのツール(migrate2rocky)が提供されています。
  • メリット:
    • CentOS/RHELからの移行が容易。
    • CentOSの「精神的な後継者」としての位置づけを好むユーザーにとって魅力的。
    • 特定の企業の意向に左右されにくい、純粋なコミュニティ運営。
    • 安定した本番環境に適した信頼性。
    • 無償でありながら、商用サポートを提供するベンダーも存在する。
  • デメリット:
    • AlmaLinuxと同様、プロジェクトとしての歴史は浅い。
    • RHELのリリースからRocky Linuxが追従リリースされるまでにわずかなタイムラグがある。
  • 移行ツール:
    • migrate2rocky: CentOS 7/8、AlmaLinux 8/9、Oracle Linux 8/9などからRocky Linux 8/9へのインプレースアップグレードを支援するツール。複数のソースからの移行に対応している点が特徴です。
  • ユースケース:
    • 既存のCentOS 7/8サーバーからの移行先。
    • RHEL互換の安定した本番サーバー環境。
    • Webサーバー、データベースサーバー、アプリケーションサーバーなど。
    • 開発・テスト環境。
    • CentOSの「コミュニティによって作られた無償RHELクローン」というアイデンティティを重視するユーザー。

AlmaLinux vs Rocky Linux: どちらを選ぶか?

AlmaLinuxとRocky Linuxは、どちらもRHEL互換の無償OSであり、CentOSの後継として非常に近い位置にいます。機能や互換性において、両者に大きな差はありません。どちらを選ぶかは、主に以下の点によって判断されることが多いです。

  • 開発・運営体制:
    • AlmaLinuxはCloudLinux社の支援を受けてスタートし、現在はAlmaLinux OS Foundationが運営。技術的なノウハウやリソース面での強みがある。
    • Rocky LinuxはCentOS創設者の一人によって立ち上げられ、Rocky Enterprise Software Foundation (RESF) が運営。より「純粋なコミュニティ主導」を強調する傾向がある。
  • コミュニティの雰囲気: 両者とも活発ですが、わずかに文化やフォーカスの違いがある可能性があります。
  • 移行ツールの好み: 提供されている移行ツールの使いやすさや対応ソースが異なる場合があります(例: migrate2rockyは他のRHELクローンからの移行もサポート)。
  • 特定の企業のサポート: どちらのディストリビューションに対して、より多くの企業が商用サポートを提供しているかなども選択の理由となり得ます。

結局のところ、技術的な差異は最小限であり、どちらもCentOSの強力な代替となります。両方を試してみて、より自分たちの組織文化や好みに合う方を選ぶのが良いでしょう。多くのユーザーは、どちらか一方に決め打ちせず、両方を比較検討し、場合によっては両方を利用するケースも見られます。

3.3 CentOS Stream

  • 開発背景: CentOS Streamは、Red Hat社がCentOS Projectの方針転換に伴い、従来のCentOS Linuxに代わるものとして位置づけたディストリビューションです。
  • 位置づけ: RHELの「先行開発版」または「ローリングプレビュー」と説明されます。RHELの次のマイナーリリースに含まれる予定の機能やバグフィックスが、CentOS Streamで先行して導入されます。そして、CentOS Streamでのテストやフィードバックを経て、それらがRHELに取り込まれます。
  • 特徴:
    • RHELのアップストリーム: RHELの開発ブランチとして機能します。
    • ローリングリリース的な要素: 従来のCentOS Linuxのような固定された安定版リリースではなく、継続的にアップデートが提供されます。
    • 最新機能の先行テスト: RHELに取り込まれる前の新しい機能や変更を試すことができます。
    • 無償: ライセンス料なしで利用できます。
    • Red Hatの直接的な関与: Red Hat社が開発を主導し、リソースを投入しています。
  • メリット:
    • RHELの将来のバージョンを早期に把握し、テストできる。
    • RHELの開発プロセスに直接フィードバックを提供できる。
    • 常に比較的新しいパッケージを利用できる。
    • Red Hatからの直接的なサポート(コミュニティレベル)が得られる。
  • デメリット:
    • 安定性: 従来のCentOS LinuxやRHELのような「エンタープライズグレードの安定性」は保証されません。開発ブランチであるため、予期せぬバグが含まれる可能性があり、本番環境での利用にはリスクが伴います。
    • 予測可能性: アップデートが比較的頻繁に行われるため、システムの挙動が予測しにくい場合があります。
    • 後方互換性: RHELのメジャーバージョン間のような厳密な後方互換性は期待できない場合があります。
  • ユースケース:
    • RHELの次のバージョンで自社製品やサービスが動作するかを事前にテストしたいISVや開発者。
    • RHELの開発に貢献したいコミュニティメンバー。
    • 最新に近いパッケージで開発を行いたい開発環境。
    • 本番環境ではなく、テスト環境やステージング環境。
    • Red Hatとの関係が深く、CentOS Streamを利用することでRHELの方向性を早期に掴みたい企業。

CentOS Streamは、従来のCentOS Linuxの代替として本番サーバーにそのまま利用できるものではない、という点を理解しておくことが重要です。その位置づけは大きく異なり、開発者やRHELエコシステムの参加者向けのディストリビューションと言えます。

3.4 Oracle Linux

  • 開発背景: Oracle Linuxは、データベースやエンタープライズソフトウェアで知られるOracle社が提供するLinuxディストリビューションです。RHELのソースコードを基盤としており、RHEL互換性を強く意識して開発されています。Oracle社自身がエンタープライズ向けの自社製品の基盤として利用しており、その安定性と信頼性には力を入れています。
  • 特徴:
    • RHELとの高い互換性: RHELのソースコードからビルドされており、RHELとバイナリレベルでの互換性があります。
    • Unbreakable Enterprise Kernel (UEK): Oracle Linuxの大きな特徴の一つが、Oracle社が独自に開発・メンテナンスしているUEKです。これはLinuxのメインラインカーネルをベースに、Oracle製品の性能向上や特定のハードウェアサポートなどが強化されています。UEKはデフォルトのカーネルとして提供されますが、従来のRHEL互換カーネル(RHCK: Red Hat Compatible Kernel)も選択できます。
    • 無償利用可能(有償サポートあり): Oracle Linux自体はライセンス料なしでダウンロード・利用できます。しかし、アップデートやサポートを受ける場合は、Oracle社との有償契約が必要です。このモデルは、CentOSのような完全無償とは異なり、特定のベンダー(Oracle)にサポートを期待できる点が特徴です。
    • Oracle製品との親和性: Oracle DatabaseをはじめとするOracle社のエンタープライズ製品との組み合わせで利用されることが多く、これらの製品との高い互換性と性能が保証されています。
    • Ksplice: 有償サポート契約者は、Kspliceと呼ばれる機能をオプションで利用できます。これは、システムの再起動なしにカーネルやユーザー空間のセキュリティアップデートを適用できる技術です。ダウンタイムを最小限に抑えたい場合に非常に有効です。
  • メリット:
    • RHEL互換性があり、既存のRHEL/CentOS環境からの移行が比較的容易。
    • エンタープライズベンダーであるOracle社によって開発・サポートされている安心感(特にOracle製品ユーザー)。
    • UEKによる性能向上や最新ハードウェアへの対応。
    • Kspliceによるダウンタイムなしのアップデートオプション(有償)。
    • 無償で利用開始でき、必要に応じて有償サポートを追加できる柔軟性。
  • デメリット:
    • サポートが必要な場合はOracle社との有償契約が必要。完全無償のCentOSやAlmaLinux/Rocky Linuxとはモデルが異なる。
    • コミュニティ主導ではなく、特定のベンダー(Oracle)に依存している。Oracle社のビジネス戦略によって将来が左右される可能性がある。
    • Oracle社のブランドイメージや、特定の用途(主にOracle製品利用環境)での利用が中心となる傾向がある。
    • コミュニティの活動は、AlmaLinuxやRocky Linuxほど活発ではないと感じるユーザーもいる。
  • ユースケース:
    • Oracle DatabaseやMiddlewareなど、Oracle社製品を利用しているシステム。
    • 安定したエンタープライズ環境を構築したいが、RHELの費用を抑えたい場合。
    • 特定のベンダー(Oracle)からのサポートを必要とする企業。
    • UEKやKspliceといった独自機能に魅力を感じるユーザー。
    • 既存のRHEL/CentOSサーバーからの移行先として、有償サポートの選択肢も視野に入れている場合。

Oracle Linuxは、特にOracle製品を利用している環境にとっては強力な選択肢となります。無償で利用を開始でき、必要に応じてサポートを追加できるモデルは、コストとサポートレベルのバランスを取りたい企業に適しています。

4. その他の選択肢と考慮事項

CentOS後継候補は、AlmaLinux、Rocky Linux、CentOS Stream、Oracle Linuxだけではありません。RHEL系にこだわるか、それとも異なる系統のLinuxへ移行するかによって、さらに幅広い選択肢が考えられます。

4.1 Red Hat Enterprise Linux (RHEL)

  • 開発背景: Linuxディストリビューションの商用分野におけるリーダーであり、CentOSのオリジナルとなるディストリビューションです。
  • 特徴:
    • エンタープライズグレードの安定性、信頼性、長期サポート。
    • 広範なハードウェアおよびソフトウェアベンダーからの認定とサポート。
    • Red Hat社からの直接的な商用サポート(サブスクリプション契約が必要)。
    • セキュリティ、管理ツールなどが充実。
    • 無償利用枠: CentOSの終焉後、Red Hatは開発者や小規模プロダクション環境向けに、無償のRHELサブスクリプションを提供しています(最大16システムまでなど、条件あり)。
  • メリット:
    • CentOSの「本家」であり、最も高い互換性と安定性を期待できる。
    • エンタープライズ用途で求められる最高レベルのサポートと保証。
    • セキュリティアップデートやバグフィックスが迅速かつ確実に提供される。
    • 無償利用枠ができたことで、特定用途においてはCentOS代替として利用可能になった。
  • デメリット:
    • 基本的に有償であり、大規模なプロダクション環境で利用する場合はコストがかかる。
    • 無償枠にはシステム数の制限があるため、多くのサーバーを持つ環境には適用しにくい場合がある。
    • RHELそのものへの移行は、サブスクリプション管理の概念が発生する。
  • ユースケース:
    • 企業の基幹システムやミッションクリティカルなシステム。
    • ベンダーからの強力なサポートを必須とする環境。
    • 大規模なインフラや、セキュリティ・コンプライアンス要件が厳しい環境。
    • 開発者や小規模な環境で、無償利用枠を活用する場合。

無償枠の登場により、RHELそのものがCentOSの後継として現実的な選択肢となりました。特に、サポートの重要度が高い環境や、特定のベンダー製品との連携が必要な場合は、RHELを直接検討する価値があります。

4.2 Debian / Ubuntu

  • 開発背景: Debianは、完全にコミュニティ主導で開発されている、非常に安定した汎用性の高いLinuxディストリビューションです。Ubuntuは、DebianをベースにCanonical社が開発しており、デスクトップからサーバー、クラウドまで幅広く利用されています。
  • 特徴:
    • RHEL系とは異なるパッケージ管理システム(apt)。
    • 膨大な数のパッケージと活発なコミュニティ。
    • Debianは安定性を重視し、長期的なサポートを提供するバージョンがある。
    • Ubuntuは比較的新しいパッケージを積極的に取り込み、LTS(Long Term Support)バージョンは5年以上のサポートが提供される。
    • 非常に広く普及しており、情報やノウハウが豊富。
  • メリット:
    • 無償で利用できる。
    • 非常に大きなコミュニティと豊富なドキュメント。
    • 特定の用途(Web開発、コンテナなど)では、RHEL系よりも情報が多い場合がある。
    • 安定版やLTSバージョンを選べば、長期的な運用が可能。
  • デメリット:
    • RHELとの非互換性: パッケージ管理システム、ディレクトリ構造、設定ファイルなどがRHEL系とは異なるため、既存のCentOS環境からの移行は、事実上ゼロからの再構築に近い作業が必要になることが多い。
    • RHEL向けに開発されたアプリケーションやスクリプトのポーティングが必要になる場合がある。
    • 商用サポートが必要な場合、提供ベンダーがRHEL系と異なる。
  • ユースケース:
    • 既存のCentOS環境を刷新し、新しいOS体系に移行することを厭わない場合。
    • 開発環境や特定のアプリケーションサーバーなど、RHEL互換性が必須ではない環境。
    • Webサーバー、コンテナホストなど、Ubuntu/Debianでの利用が一般的な用途。
    • RHEL系のサブスクリプションモデルを避けたいが、AlmaLinuxやRocky Linuxよりも実績のある別の選択肢を求める場合。

DebianやUbuntuへの移行は、RHELクローンへの移行に比べて労力がかかりますが、新しい環境を構築する機会と捉え、これらの優れたディストリビューションを選択することも十分に考えられます。

4.3 その他のRHELクローン

AlmaLinuxやRocky Linux以外にも、CentOSの終焉を受けて登場したRHEL互換ディストリビューションや、以前から存在していたRHELクローンがいくつかあります。例えば、EuroLinuxVzLinux(Virtuozzo社が提供する、コンテナや仮想化に最適化されたRHEL互換OS)などです。これらもRHEL互換性を謳っており、それぞれの特徴やベンダーサポートを提供しています。ただし、AlmaLinuxやRocky Linuxほど広くコミュニティの支持を得ているわけではない場合が多いです。検討する際は、プロジェクトの活動状況、コミュニティの規模、提供されるサポートなどを十分に評価する必要があります。

4.4 クラウド環境に特化したLinux

AWS上のAmazon Linux、Azure上のAzure Linux(旧CBL-Mariner)などは、それぞれのクラウド環境での利用に最適化されたLinuxディストリビューションです。これらはRHEL系(またはその派生)をベースにしている場合もありますが、特定のクラウド環境での利用が前提となります。クラウド移行を検討している場合、これらの選択肢も視野に入れることができます。ただし、オンプレミス環境や他のクラウド環境との互換性については注意が必要です。最近では、クラウドベンダーもAlmaLinuxやRocky Linuxのイメージを提供しており、これらのRHELクローンをクラウド上で利用することも可能です。

5. 後継OSを選ぶ際の重要な考慮事項

CentOS後継候補は多岐にわたります。あなたのシステムやビジネス要件に最適なOSを選択するためには、以下の点を慎重に考慮する必要があります。

  1. RHELとのバイナリ互換性:
    • 既存のシステムで動作しているアプリケーション、ミドルウェア、カスタムスクリプト、カーネルモジュールなどが新しいOSでもそのまま動作するかどうかは最重要ポイントです。RHELとのバイナリ互換性が高いOS(AlmaLinux, Rocky Linux, Oracle Linux)であれば、移行の負担を大幅に軽減できます。互換性の低いOS(Debian, Ubuntu)へ移行する場合は、広範なテストと改修が必要になることを覚悟する必要があります。
  2. 安定性と信頼性:
    • 特に本番環境で利用する場合、OSの安定性と信頼性は不可欠です。長期的な運用実績、バグフィックスやセキュリティアップデートの提供体制、開発コミュニティの活発さなどを評価します。AlmaLinuxやRocky Linuxは新しいですが、エンタープライズレベルの安定性を目標に開発されており、多くの企業が利用を開始しています。RHELは言わずもがな高い安定性を提供します。CentOS Streamは開発ブランチであるため、この点で注意が必要です。
  3. サポート体制:
    • OSの運用において、問題発生時のサポートは非常に重要です。
    • コミュニティサポート: フォーラム、メーリングリスト、チャットなどで、他のユーザーや開発者からの助けを得られるか。AlmaLinuxやRocky Linuxはコミュニティが非常に活発です。
    • ベンダーサポート(有償/無償): 特定の企業からの公式なサポートが必要か。RHELはRed Hatから、Oracle LinuxはOracleから有償サポートが提供されます。AlmaLinuxやRocky Linuxも、サードパーティベンダーから有償サポートが提供されています。
    • 提供されるサポートレベル(24時間365日対応、SLAなど)も確認が必要です。
  4. コミュニティの活動状況と持続可能性:
    • プロジェクトが活発に開発され、将来にわたって継続的にサポートされる見込みがあるか。GitHubでの活動、リリース頻度、コントリビューターの数などを参考にします。AlmaLinuxやRocky Linuxは、Foundationによる運営体制を確立し、長期的な持続可能性を目標としています。CentOS StreamはRed Hatの戦略に依存します。
  5. 移行の容易さ:
    • 既存のCentOS環境から新しいOSへ、どの程度容易に移行できるか。インプレースアップグレードツールが提供されているか、新規インストール後の設定作業がどの程度必要かなどを考慮します。AlmaLinuxやRocky Linuxは、CentOSからの移行ツールを提供しており、比較的スムーズな移行が期待できます。RHELやOracle LinuxもRHEL互換性があるため移行しやすいです。Debian/Ubuntuへの移行は、前述の通り最も手間がかかります。
  6. ライセンスとコスト:
    • 無償で利用できるか、それともライセンス費用やサブスクリプション費用が必要か。RHELは基本的に有償ですが、無償利用枠があります。AlmaLinux, Rocky Linux, CentOS Streamは無償です。Oracle LinuxはOS自体は無償ですが、サポートは有償です。総所有コスト(TCO)を評価する上で重要な要素です。
  7. 特定の用途への適合性:
    • OSを何に利用するか(Webサーバー、データベースサーバー、アプリケーション開発、 HPC、仮想化ホスト、コンテナホストなど)によって、最適な選択肢は変わる場合があります。特定のハードウェアやソフトウェアとの互換性、特定の機能(UEKやKspliceなど)の必要性も考慮します。
  8. セキュリティ:
    • セキュリティアップデートが迅速に提供されるか、セキュリティ強化機能が充実しているかなども重要な評価ポイントです。エンタープライズ向けのディストリビューションは、一般的にセキュリティに高い優先度を置いています。

これらの考慮事項を、あなたのシステムの現状、ビジネス要件、技術リソースなどを踏まえて評価することで、最適な移行先を絞り込むことができます。

6. 移行プロセスに関するヒント

後継OSの選択と並行して、具体的な移行計画を立てることが重要です。以下に、移行プロセスを進める上でのヒントをいくつか紹介します。

  1. 現状分析と評価:

    • 移行対象となるCentOSサーバー上で動作しているアプリケーション、ミドルウェア、サービス、カスタムスクリプトなどをすべて洗い出します。
    • 各アプリケーションの依存関係、互換性要件(特定のOSバージョン、ライブラリバージョンなど)を確認します。
    • ネットワーク構成、ストレージ構成、セキュリティ設定(ファイアウォール、SELinuxなど)を把握します。
    • 重要なデータや設定ファイル、ログファイルなどの場所を確認します。
    • これらの情報は、移行先OSでの動作確認や設定引き継ぎ、トラブルシューティングに役立ちます。
  2. テスト環境での十分な検証:

    • 本番環境に移行する前に、必ずテスト環境(物理または仮想)で移行先OSのインストール、既存アプリケーションの動作確認、設定移行、パッチ適用などを十分に検証します。
    • CentOS 7からの移行の場合は、新しいメジャーバージョン(RHEL 8/9相当)への移行になるため、特に慎重なテストが必要です。CentOS 8からの移行でも、OSの細かな挙動の違いがないか確認します。
    • 性能テストや負荷テストを実施し、新しいOSでのパフォーマンスが許容範囲内であることを確認します。
  3. 確実なバックアップ:

    • 移行作業を開始する前に、対象サーバーのフルバックアップを必ず取得します。これにより、移行に失敗した場合でも元の状態に戻すことができます。
    • 設定ファイルやデータのバックアップも重要です。
  4. 段階的な移行:

    • 全てのサーバーを一度に移行するのではなく、重要度の低いシステムやテスト環境から段階的に移行を進めます。
    • スモールスタートで得られた知見や課題を、その後の移行計画に反映させます。
    • サービスの停止時間や影響範囲を最小限に抑えるための計画を立てます。
  5. 自動化ツールの活用:

    • 設定管理ツール(Ansible, Chef, Puppetなど)を利用している場合は、移行先OSに対応しているか確認し、必要に応じてプレイブックやクックブックを修正します。
    • これらのツールは、設定の適用やアプリケーションのデプロイを自動化し、移行作業の効率化と再現性向上に役立ちます。
    • 移行ツール(elevate, migrate2rockyなど)を利用する場合は、ツールのドキュメントをよく読み、推奨される手順に従います。
  6. CentOSのバージョンに応じた移行パス:

    • CentOS 7からの移行: CentOS 7はRHEL 7相当であり、新しいOS(RHEL 8/9相当のAlmaLinux 8/9やRocky Linux 8/9など)へ移行する場合は、メジャーバージョンアップグレードとなります。RHEL系では、Leappのようなインプレースアップグレードツールが存在しますが、設定の互換性など、注意すべき点が多く、新規インストールに近い感覚で計画するのが無難です。
    • CentOS 8からの移行: CentOS 8はRHEL 8相当であり、AlmaLinux 8やRocky Linux 8への移行は比較的容易です。elevatemigrate2rockyのようなツールを利用したインプレース移行が現実的な選択肢となります。ただし、CentOS 8はすでにサポートが終了しているため、早急な移行が必要です。
    • 新規環境への移行: 全く新しいサーバーやクラウド環境に移行する場合は、既存のCentOS環境を参考にしつつも、ゼロから新しいOSをインストールし、環境を構築する形になります。この場合、RHEL互換性にこだわる必要は薄れ、Debian/Ubuntuなども有力な選択肢となります。
  7. 情報収集とコミュニティの活用:

    • 選択したOSに関する最新情報(リリースノート、既知のバグ、移行事例など)を常に収集します。
    • 選択したOSのコミュニティフォーラムやメーリングリストに参加し、質問したり、他のユーザーと情報交換したりすることで、移行時の課題解決に役立てます。

OS移行は、サーバー運用の安定性に直結する重要なプロジェクトです。十分な準備と計画、そして慎重な実行が成功の鍵となります。

7. まとめ:最適な後継OSを見つけるために

CentOSの終焉は多くのユーザーにとって困難な状況をもたらしましたが、同時に、利用するOSを見直し、より自社のニーズに合ったプラットフォームを選択する機会でもあります。

本記事で紹介した主要な後継候補は、それぞれ異なる強みを持っています。

  • AlmaLinux / Rocky Linux: CentOS Linuxの精神を最も忠実に受け継ぐ、RHELバイナリ互換の無償・コミュニティ主導OSを求めるユーザーにとって、最も有力な選択肢です。両者の技術的な差は小さく、開発・運営体制やコミュニティの雰囲気、特定の移行ツールの有無などで判断することになるでしょう。
  • CentOS Stream: 本番環境には不向きですが、RHELの将来バージョンに備えたい開発者や、RHELエコシステムに積極的に関与したいユーザーにとっては価値のある選択肢です。
  • Oracle Linux: Oracle製品を基盤とするシステムや、無償利用開始しつつ有償サポートの選択肢も欲しいユーザーに適しています。UEKやKspliceといった独自機能も魅力です。
  • Red Hat Enterprise Linux (RHEL): 予算が許す場合や、無償利用枠で要件を満たせる場合、最高の安定性、信頼性、そしてベンダーサポートを求める企業にとって、やはり最も安心できる選択肢です。
  • Debian / Ubuntu: RHEL系からの移行コストを許容できる、あるいは新しい環境構築を機にOS体系を変更したい場合、幅広い用途と活発なコミュニティを持つこれらのOSも有力な選択肢となります。

最適な後継OSは、あなたのシステムの規模、用途、予算、必要なサポートレベル、そしてRHELとの互換性の重要度によって異なります。まずは現状を分析し、上記の考慮事項をリストアップして、それぞれの候補を比較検討することをお勧めします。

OS移行は簡単な作業ではありませんが、適切な計画と準備、そしてコミュニティのリソースを活用することで、乗り越えることができます。この移行を機に、システムの構成を見直したり、最新の技術動向を取り入れたりすることも可能です。

CentOSが残した遺産は大きく、その代替となるプロジェクトが多数誕生したことは、オープンソースコミュニティの強靭さを示すものと言えるでしょう。新たなLinuxジャーニーに踏み出すにあたり、この記事があなたの道標となれば幸いです。


参考文献:

  • CentOS Project公式サイト
  • AlmaLinux公式サイト
  • Rocky Linux公式サイト
  • Oracle Linux公式サイト
  • Red Hat公式サイト (RHEL, サブスクリプション情報など)
  • Debian Project公式サイト
  • Ubuntu公式サイト
  • CloudLinux社情報
  • Rocky Enterprise Software Foundation (RESF) 情報

(注:この記事は2023年後半の情報に基づいています。各ディストリビューションの最新情報やサポートポリシーについては、必ず公式サイトをご確認ください。)

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