はい、承知いたしました。Cloudflareを利用したウェブサイトのセキュリティ強化に焦点を当てた、約5000語の詳細な記事を作成します。記事本文を直接表示します。
あなたのサイトを守る Cloudflareの使い方とセキュリティ設定の詳細
ウェブサイトを運営する上で、セキュリティ対策は避けて通れない重要な課題です。サイバー攻撃は日々巧妙化・多様化しており、情報漏洩、サービス停止、サイト改ざん、マルウェア感染など、様々な被害のリスクが潜んでいます。これらの脅威からあなたのウェブサイトを守るために、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)として広く知られるCloudflareが非常に強力なツールとなり得ます。
Cloudflareは単なるCDNではなく、包括的なセキュリティ機能を提供しており、小規模なブログから大規模なエンタープライズサイトまで、様々な規模のサイトのセキュリティを強化できます。本記事では、Cloudflareを使ってあなたのウェブサイトをどのように守るか、その具体的な使い方とセキュリティ設定について、詳細かつ網羅的に解説します。
1. なぜCloudflareがウェブサイトセキュリティに有効なのか?
Cloudflareは、あなたのウェブサイトとインターネットユーザーの間に位置するリバースプロキシとして機能します。これにより、以下の点でセキュリティに貢献します。
- トラフィックのフィルタリング: 悪意のあるトラフィック(DDoS攻撃、ボット、脆弱性スキャンなど)があなたのオリジンサーバーに到達する前にCloudflareが検知・遮断します。
- IPアドレスの隠蔽: Cloudflareを介することで、オリジンサーバーの実際のIPアドレスが隠蔽されます。これにより、攻撃者は直接サーバーを狙うことが難しくなります。
- 多様なセキュリティ機能の統合: WAF (Web Application Firewall)、DDoS対策、Bot対策、SSL/TLS暗号化、アクセス制御など、多くのセキュリティ機能が一元的に管理できます。
- パフォーマンス向上との両立: CDNとしての機能によるコンテンツキャッシュや最適化は、セキュリティ対策と同時にサイトのパフォーマンス向上にも貢献します。
これらのメリットにより、Cloudflareは多くのウェブサイトにとって、手軽かつ効果的なセキュリティ対策の第一歩となり得ます。
2. Cloudflareの導入方法(セキュリティ設定の前提)
Cloudflareのセキュリティ機能を活用するには、まずあなたのウェブサイトをCloudflareに登録し、DNS設定を変更する必要があります。基本的な手順は以下の通りです。
- Cloudflareアカウントの作成: Cloudflareの公式サイトでアカウントを作成します。
- ウェブサイトの追加: ダッシュボードからあなたのウェブサイトのドメイン名を追加します。
- DNSレコードのスキャンと確認: Cloudflareが既存のDNSレコード(Aレコード、CNAMEレコード、MXレコードなど)をスキャンします。スキャン結果を確認し、必要に応じて手動でレコードを追加・編集します。この際、Cloudflareを介してトラフィックを処理したいレコード(通常はウェブサイトを指すAレコードやCNAMEレコード)のプロキシステータスをオレンジ色の雲マーク(Proxied)に設定します。メールサーバーを指すMXレコードなどは、通常はグレーの雲マーク(DNS Only)のままにします。
- ネームサーバーの変更: ドメインレジストラ(ドメインを取得した会社)の管理画面で、ネームサーバーをCloudflareが指定するものに変更します。この変更がインターネット全体に反映されるまでには、数分から数時間かかる場合があります。
ネームサーバーの変更が完了し、Cloudflareがサイトのアクティブ化を認識すると、Cloudflareの各種設定があなたのウェブサイトに適用されるようになります。セキュリティ設定は、Cloudflareダッシュボードの各セクション(特に「Security」セクション)で行います。
3. Cloudflareセキュリティ設定の詳細解説
Cloudflareのセキュリティ設定は多岐にわたります。ここでは、主要な機能とその設定方法、推奨される設定について詳しく解説します。
3.1. SSL/TLS設定:通信の暗号化
ウェブサイトの通信を暗号化することは、ユーザーのプライバシー保護とデータ改ざん防止のために不可欠です。Cloudflareは無料のSSL証明書を提供しており、手軽にHTTPS化を実現できます。
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SSL/TLSセクションの場所: Cloudflareダッシュボードの「SSL/TLS」セクション。
-
SSL/TLS暗号化モード (Encryption modes):
Cloudflareには4つの暗号化モードがあります。オリジンサーバー(あなたのサーバー)のSSL設定状況に応じて、最適なモードを選択することが非常に重要です。- Off (Not Recommended): SSL/TLS暗号化を使用しません。ウェブサイトはHTTPで提供されます。セキュリティ上のリスクが高いため、絶対に使用しないでください。
- Flexible: Cloudflareとユーザー間はHTTPSで暗号化されますが、Cloudflareとオリジンサーバー間はHTTP(暗号化なし)です。
- メリット: オリジンサーバーにSSL証明書が不要で、設定が最も簡単です。
- デメリット: オリジンサーバーへの通信が暗号化されないため、Cloudflareとオリジンサーバー間の通信経路上でデータが傍受されるリスクがあります(中間者攻撃)。セキュリティ上のリスクがあるため、非推奨です。
- Full: Cloudflareとユーザー間、Cloudflareとオリジンサーバー間の両方がHTTPSで暗号化されます。ただし、オリジンサーバーで使用するSSL証明書は自己署名証明書など、Cloudflareが提供する証明書や認証局から発行された有効な証明書でなくても構いません。
- メリット: 通信経路全体が暗号化されます。
- デメリット: オリジンサーバーの証明書が自己署名などの無効な証明書の場合、Cloudflareはオリジンサーバーの正当性を検証しません。攻撃者が偽のオリジンサーバーを立てて通信を乗っ取るリスクがゼロではありません。
- Full (strict): Cloudflareとユーザー間、Cloudflareとオリジンサーバー間の両方がHTTPSで暗号化されます。さらに、オリジンサーバーには認証局から発行された有効なSSL証明書がインストールされている必要があります。
- メリット: 通信経路全体が暗号化され、Cloudflareがオリジンサーバーの証明書を検証するため、最も安全性が高いモードです。
- 推奨: オリジンサーバーに有効なSSL証明書をインストールできる場合は、この「Full (strict)」モードを強く推奨します。 Lets Encryptなどの無料証明書を利用することも可能です。
- Origin Pull (Authenticated Origin Pulls): (Business/Enterpriseプラン向け) CloudflareからオリジンサーバーへのHTTPS接続において、クライアント証明書を使用してオリジンサーバーがCloudflareからの正規のリクエストであることを確認する高度な認証方法です。セキュリティをさらに強化したい場合に有効です。
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Minimum TLS Version: ウェブサイトへの接続を許可する最低限のTLSプロトコルバージョンを指定します。古いTLSバージョン(TLS 1.0やTLS 1.1)には既知の脆弱性が存在する可能性があるため、TLS 1.2以上に設定することを推奨します。ただし、古いOSやブラウザを使用しているユーザーからのアクセスが制限される可能性もあります。
- Opportunistic Encryption: HTTPでアクセスされた場合でも、可能であればHTTPSでの接続を試みます。ユーザーエクスペリエンスを向上させ、部分的に暗号化されていないコンテンツ(混合コンテンツ)のリスクを軽減します。基本的に有効化を推奨します。
- Automatic HTTPS Rewrites: HTTPでロードされるリソース(画像、CSS、JavaScriptなど)へのリンクを、自動的にHTTPSに書き換えます。これにより、混合コンテンツの問題を解決し、ブラウザの警告を防ぎます。基本的に有効化を推奨します。
- HSTS (HTTP Strict Transport Security): ブラウザに「このサイトは常にHTTPSでアクセスするべきである」と記憶させる設定です。一度HSTSが有効な状態でアクセスしたユーザーは、次回以降HTTPでアクセスしようとしても自動的にHTTPSにリダイレクトされます。これにより、SSLストリッピング攻撃(HTTPS接続をHTTP接続にダウングレードさせる攻撃)を防ぎます。
- 設定項目: HSTSを有効にするか、最大エージ(ブラウザが設定を記憶する期間)、サブドメインに適用するかなどを設定できます。有効化を強く推奨しますが、一度有効にすると無効にするのが難しいため、慎重に設定してください。特に最大エージを長く設定するほど、設定を元に戻した場合の影響が大きくなります。最初は短い期間でテストし、問題なければ期間を長くすると良いでしょう。Preload機能(主要ブラウザにHSTSリストとして登録してもらう)は非常に強力ですが、元に戻すのが極めて困難なため、慎重に検討が必要です。
3.2. Firewall設定:アクセス制御とWAF
「Firewall」セクションは、Cloudflareセキュリティ機能の中心的な部分です。ここでは、特定の条件に基づいてトラフィックを許可、ブロック、またはチャレンジ(追加認証を要求)するルールを設定できます。
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Firewallセクションの場所: Cloudflareダッシュボードの「Security」->「WAF」または「Firewall」セクション。
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Security Level (セキュリティレベル):
訪問者の行動パターンに基づいて、Cloudflareが自動的にチャレンジを表示する頻度を設定します。- Off: 無効。
- Essentially Off: 最もアグレッシブな攻撃者のみにチャレンジ。
- Low: 脅威スコアの高い訪問者にチャレンジ。
- Medium: 脅威スコアが高いか、怪しい行動をする訪問者にチャレンジ。
- High: 脅威スコアが高いか、最近5分以内にチャレンジを通過していない訪問者にチャレンジ。
- Under Attack: DDoS攻撃を受けている場合に使用します。すべての訪問者にJavaScriptチャレンジを表示します。これにより、正規のユーザーにはわずかな遅延が発生しますが、ボットや攻撃者からの大量のリクエストを効果的に阻止できます。
- 推奨: 通常時はMediumまたはHighを設定し、DDoS攻撃を受けている場合にUnder Attackに切り替えるのが一般的です。ただし、ログインページや特定のAPIエンドポイントなど、チャレンジがユーザーエクスペリエンスを損なう可能性のあるページでは、Firewall Rulesを使用して特定のパスを除外する設定を行う必要がある場合があります。
-
Challenge Passage: 訪問者がチャレンジ(CAPTCHAやJavaScriptチャレンジ)を通過した後、次にチャレンジを表示するまでの期間を設定します。通常は30 minutesで問題ありません。
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Browser Integrity Check: 訪問者のブラウザがHTTPヘッダーに共通の異常があるか確認します。これは、一般的にボットや悪意のあるプログラムによって使用されるヘッダーを検出するのに役立ちます。有効化を推奨します。
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IP Access Rules: 特定のIPアドレス、IPアドレス範囲(CIDR形式)、または国からのアクセスに対して、許可、ブロック、チャレンジ、またはJavaScriptチャレンジのアクションを設定できます。
- 設定例:
- 特定の国のからのアクセスを全てブロックする。
- 管理画面へのアクセスを特定のオフィスや自宅のIPアドレスからのみ許可する。
- 不正なアクセスを繰り返す特定のIPアドレスをブロックする。
- 注意: IPアドレスは変更される可能性があるため、長期的なブロックには別の手段(Firewall Rulesなど)も併用することを検討してください。
- 設定例:
-
User Agent Blocking: 特定のUser Agentを持つアクセスをブロックします。これは、特定のボットや古い、または不正なブラウザからのアクセスを拒否したい場合に便利です。
-
WAF (Web Application Firewall): ウェブアプリケーション層(HTTP/HTTPS)の攻撃を検出・防御する機能です。SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング(XSS)、ディレクトリトラバーサル、リモートコード実行(RCE)など、一般的なウェブ脆弱性を悪用する攻撃からサイトを保護します。
- Cloudflare Managed Rules (旧: OWASP ModSecurity Core Rule Set): Cloudflareが提供する、一般的なウェブ攻撃パターンに対応したルールセットです。OWASP CRSをベースにしたものや、Cloudflare独自のものがあります。
- 設定: 各ルールセット(例: Cloudflare Managed Rules, OWASP ModSecurity Core Rule Set)に対して、特定のルールを個別に有効/無効にしたり、アクション(Off, Simulate, Block, Challenge)を設定したりできます。
- アクション:
- Off: ルールを無効にします。
- Simulate: ルールに一致した場合、ログに記録するだけで実際にはアクションを行いません。新しいルールを有効にする前に、誤検知がないか確認するために使用します。
- Block: ルールに一致した場合、アクセスをブロックします。
- Challenge: ルールに一致した場合、訪問者にチャレンジ(CAPTCHAやJavaScriptチャレンジ)を表示します。
- 推奨: まずはSimulateモードで有効にし、Firewall Eventsログで誤検知がないか数日間確認します。問題がなければBlockモードに切り替えるのが安全な手順です。特定のアプリケーションで誤検知が多い場合は、そのルールだけを無効にするか、特定のURLパスに対してWAFを無効にする(後述のFirewall Rulesで設定)などの対応が必要です。
- Custom Rules: Cloudflare Managed Rulesで対応できない、あるいはより詳細な条件でWAFを適用したい場合に、独自のルールを作成します。特定のヘッダー、クッキー、リクエストボディなどの条件に基づいて、アクションを設定できます。
- Rule Groups: Cloudflare Managed Rulesは複数のルールグループに分かれています(例: SQLi, XSS, PHP, INFO)。サイトで使用している技術や想定される脅威に応じて、必要なルールグループのみを有効にするなど、設定を調整できます。
- Cloudflare Managed Rules (旧: OWASP ModSecurity Core Rule Set): Cloudflareが提供する、一般的なウェブ攻撃パターンに対応したルールセットです。OWASP CRSをベースにしたものや、Cloudflare独自のものがあります。
-
Firewall Rules (高度な制御):
これがCloudflare Firewallの最も強力で柔軟な機能の一つです。複数の条件(IPアドレス、国、User Agent、リクエストパス、ヘッダー、クッキー、参照元など)を組み合わせて、複雑なアクセス制御ルールを作成できます。- 設定可能な条件の例:
(ip.src eq 1.2.3.4)
: 特定のIPアドレス(ip.geoip.country eq "US")
: 特定の国(http.user_agent contains "bad_bot")
: 特定の文字列を含むUser Agent(http.request.uri.path contains "/admin")
: 特定のパスを含むURL(http.request.method eq "POST")
: 特定のHTTPメソッド(http.request.headers["X-Custom-Header"] eq "secret")
: 特定のヘッダーの値(http.cookie contains "sessionid")
: 特定のクッキー(http.request.uri.query contains "id=")
: クエリストリングの値(cf.threat_score gt 10)
: Cloudflareの脅威スコアが一定以上
- 論理演算子:
and
,or
を使用して複数の条件を組み合わせられます。 - 設定可能なアクション:
- Block: アクセスをブロックします。
- Challenge (Captcha): CAPTCHA認証を要求します。
- Challenge (Managed): Cloudflareが管理するチャレンジ(より高度なボット検知など)を要求します。
- Log: 条件に一致した場合、ログに記録するだけでアクションは行いません。ルールのテストに使用します。
- Allow: 条件に一致した場合、他の制限(WAFなど)をスキップしてアクセスを許可します。
- JS Challenge: JavaScriptチャレンジを要求します。
- Interactive Challenge: より高度な対話型チャレンジを要求します。
- Bypass: 指定したセキュリティ機能(WAF、Bot Fight Modeなど)をバイパスします。
- 設定例:
- 例1: 管理画面への海外からのアクセスをブロック
- 条件:
(http.request.uri.path contains "/admin") and (not ip.geoip.country in {"JP" "US"})
(日本のIPとアメリカのIP以外) - アクション: Block
- 条件:
- 例2: 特定のUser Agentからのアクセスを全てブロック
- 条件:
(http.user_agent contains "evil_scanner")
- アクション: Block
- 条件:
- 例3: ログインページへのブルートフォース攻撃対策として、特定のパスへのPOSTリクエストにチャレンジ
- 条件:
(http.request.uri.path eq "/login") and (http.request.method eq "POST")
- アクション: Challenge (Managed) (ただし、正規のユーザーも影響を受ける可能性があるため、Rate Limitingと組み合わせるのがより一般的です)
- 条件:
- 例4: 特定のIPアドレスからのアクセスに対してはWAFを適用しない
- 条件:
(ip.src eq 2.3.4.5)
- アクション: Bypass -> Security Features -> WAF
- 条件:
- 例1: 管理画面への海外からのアクセスをブロック
- 優先順位: Firewall Rulesには優先順位があり、番号の小さいルールから順に評価されます。AllowルールはBlockルールより優先されるように設定することが重要です。例えば、「特定のIPからのアクセスを許可する」ルールは、「全ての海外からのアクセスをブロックする」ルールよりも優先順位を高く設定する必要があります。
- 推奨: Firewall Rulesは非常に強力なため、設定ミスが正規ユーザーのアクセスを妨げる可能性があります。新しいルールを追加する際は、まずアクションをLogにして効果を確認し、問題がなければ目的のアクションに変更することを強く推奨します。
- 設定可能な条件の例:
3.3. Rate Limiting:リクエスト頻度の制限
Rate Limitingは、特定のURLパスへのリクエスト頻度を制限することで、ブルートフォース攻撃、サービス拒否攻撃(DoS)、ウェブサイトスクレイピングなどからサイトを保護します。
-
Rate Limitingセクションの場所: Cloudflareダッシュボードの「Security」->「DoS Attack Protection」->「Rate Limiting Rules」または「Security」->「WAF」->「Rate Limiting」。
-
設定項目:
- If a request matches: レート制限を適用するURLパスとHTTPメソッドを指定します。ワイルドカード
*
を使用できます(例:/login
,/api/*
,/images/*
)。 - When matching: どの時間枠でリクエスト数をカウントするか指定します(例: 10 seconds, 1 minute, 5 minutes)。
- Rate is more than: 指定した時間枠内に許可する最大リクエスト数を指定します(例: 10, 100, 1000)。
- Then: 制限を超えた場合のアクションを指定します。
- Block: アクセスをブロックします。
- Challenge (Captcha): CAPTCHA認証を要求します。
- Challenge (Managed): Cloudflare管理のチャレンジを要求します。
- Log: ログに記録するだけです。テストに使用します。
- JS Challenge: JavaScriptチャレンジを要求します。
- With the response: ブロックまたはチャレンジした場合に表示するHTTPステータスコードや、エラーボディなどをカスタマイズできます。
- If a request matches: レート制限を適用するURLパスとHTTPメソッドを指定します。ワイルドカード
-
設定例:
- 例1: ログインページへのブルートフォース攻撃対策
- URLパス:
/login
- HTTPメソッド:
POST
(ログイン処理を行うメソッド) - 時間枠:
1 minute
- リクエスト数:
5
(1分間に5回以上のPOSTリクエストを許可しない) - アクション:
Block
またはManaged Challenge
- URLパス:
- 例2: APIエンドポイントへの過剰なアクセス防止
- URLパス:
/api/*
- HTTPメソッド:
(ALL methods)
- 時間枠:
10 seconds
- リクエスト数:
100
- アクション:
Block
またはManaged Challenge
- URLパス:
- 例3: 画像ファイルへのスクレイピング防止(同じIPからの大量ダウンロードを防ぐ)
- URLパス:
/images/*
- HTTPメソッド:
GET
- 時間枠:
1 minute
- リクエスト数:
1000
- アクション:
Block
- URLパス:
- 例1: ログインページへのブルートフォース攻撃対策
-
推奨: Rate Limitingは、サーバーのリソース枯渇を防ぎ、特定の攻撃を抑制するのに非常に有効です。特にログインページ、会員登録ページ、お問い合わせフォーム、APIエンドポイントなど、特定の処理に負荷がかかりやすいパスに対して設定することを強く推奨します。ただし、正規のユーザーの利用パターンを考慮して、適切なリクエスト数と時間枠を設定することが重要です。最初はリクエスト数をやや高めに設定するか、アクションをLogにして様子を見るのが良いでしょう。
3.4. Bot Management:不正なボット対策
インターネット上のトラフィックの大部分はボットによるものです。全てのボットが悪質なわけではありません(検索エンジンのクローラーなど)が、中にはウェブサイトの脆弱性を探すスキャナー、スパムボット、コンテンツスクレイパー、クレデンシャルスタッフィングボットなど、悪意のあるボットも多数存在します。Cloudflare Bot Managementは、これらの不正なボットを識別し、適切に対処するための機能です。
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Bot Managementセクションの場所: Cloudflareダッシュボードの「Security」->「Bots」。
-
Bot Fight Mode (Free/Pro/Biz):
無償で利用できる基本的なボット対策機能です。既知の悪質ボットリストに基づき、それらのボットに対してJavaScriptチャレンジやManagedチャレンジを自動的に適用します。設定はトグルスイッチをオンにするだけです。手軽な対策として有効ですが、高度なボットには対応できない場合があります。 -
Super Bot Fight Mode (Pro/Biz):
Bot Fight Modeよりも高度なボット検知技術を使用します。さらに、「正当なボット(検索エンジンクローラーなど)」、「検証済みのボット(指定されたボット)」、「自動化ツール(Headless Chromeなどを使用)」など、ボットの種類に応じてアクションを制御できます。- 設定項目: 各ボットカテゴリ(Definite Bots, Likely Bots, Automated Tools)に対して、Allow, Block, JS Challenge, Managed Challenge, Logなどのアクションを設定できます。
- 推奨: Definite BotsはBlockまたはManaged Challenge、Likely BotsやAutomated ToolsはManaged ChallengeまたはJS Challengeを設定するのが一般的です。サイトの特性に応じて調整してください。例えば、APIエンドポイントにAutomated Toolsからの正規のアクセスが多い場合は、そのパスに対してのみBot ManagementをBypassするFirewall Ruleを設定する必要があります。
-
Managed Bot Rules (Enterprise):
最も高度なボット対策機能です。特定のボットシグナル(User Agent, Autonomous System Number (ASN), JA3 Fingerprintなど)に基づいて、より詳細なルールを作成できます。 -
Bot Analytics: どの種類のボットがどの程度アクセスしているか、それらのボットに対してCloudflareがどのようなアクションを取ったかなどを可視化できます。これにより、ボット対策の効果を確認したり、設定を調整したりするのに役立ちます。
3.5. DDoS Protection:分散型サービス拒否攻撃対策
DDoS攻撃は、大量のトラフィックやリクエストを標的のサーバーに送り付け、サービスを停止させる攻撃です。Cloudflareは、その大規模なネットワークと分散アーキテクチャにより、DDoS攻撃に対して非常に強力な防御を提供します。
-
DDoS Protectionセクションの場所: Cloudflareダッシュボードの「Security」->「DoS Attack Protection」。
-
CloudflareのDDoS対策の仕組み:
Cloudflareは世界中に分散したデータセンターを持ち、大量のトラフィックを分散・吸収できます。攻撃トラフィックと正規トラフィックを識別し、攻撃トラフィックをフィルタリングしてオリジンサーバーに到達させません。- Layer 3/4 DDoS Protection: ネットワーク層(IP, TCP, UDP)への大量トラフィック攻撃(SYN Flood, UDP Floodなど)を緩和します。これはCloudflareを介するだけで自動的に機能します。
- Layer 7 DDoS Protection: アプリケーション層(HTTP/HTTPS)への攻撃(HTTP Flood, Slowlorisなど)を緩和します。これはWAF、Rate Limiting、Security Level (特に “Under Attack” モード)、Firewall Rulesなど、前述の各種セキュリティ機能によって実現されます。
-
Under Attack Mode:
最も強力なL7 DDoS対策モードです。このモードを有効にすると、サイトへのすべての訪問者に対してJavaScriptチャレンジを表示し、ブラウザがJavaScriptを実行できる正規ユーザーであることを確認します。これにより、大量のボットからのリクエストを効果的に遮断できます。ただし、有効にすると正規ユーザーにもチャレンジが表示されるため、サイトによってはユーザーエクスペリエンスに影響が出る可能性があります。攻撃を受けている緊急時にのみ有効化し、攻撃が収まったら無効に戻すのが一般的です。 -
Custom Rules for DDoS:
Firewall Rulesと同様に、特定の条件に基づいてDDoS緩和策を適用するカスタムルールを作成できます。例えば、特定の国からの異常なアクセス増加を検知した場合に、その国からのアクセスにチャレンジを課すといった設定が可能です。 -
Recommended DDoS Settings:
- 通常時はSecurity LevelをMediumまたはHighに設定します。
- 重要なエンドポイント(ログインページ、APIなど)にはRate Limitingを設定します。
- Cloudflare Managed Rulesの「Cloudflare Specials」グループなど、DDoS関連のルールを有効にします(Simulateモードでテスト推奨)。
- 攻撃を受けた場合は、迅速にSecurity Levelを「Under Attack」に切り替えます。
- Firewall Rulesを活用して、特定の攻撃パターンに対応するルールを作成します。例えば、特定のUser Agentや参照元からの異常なトラフィックをBlock/Challengeするといったルールです。
CloudflareのDDoS対策は非常に強力ですが、攻撃の種類や規模によっては設定の調整が必要になります。DDoS攻撃に関するアナリティクスを定期的に確認し、対策の効果をモニタリングすることが重要です。
3.6. Other Security Settings
Cloudflareの「Security」セクションには、上記以外にもいくつかのセキュリティ関連設定があります。
- Hotlink Protection: あなたのサイトの画像が、許可なく他のサイトで直接リンクされて表示される(ホットリンク)のを防ぎます。有効にすると、許可されていないサイトからの画像へのリクエストに対して403 Forbiddenエラーを返します。コンテンツ盗用や帯域幅の無駄遣いを防ぐのに役立ちます。
- Authenticated Origin Pulls (SSL/TLSセクションにも関連): (Business/Enterpriseプラン向け) Cloudflareがオリジンサーバーに接続する際に、クライアント証明書を使用してオリジンサーバーが正規のリクエスト元であることを確認します。オリジンサーバーのセキュリティを強化できます。
- TLS Client Auth (Enterprise): 特定のURLパスへのアクセスにクライアント証明書認証を要求する機能です。アクセス元を限定したい場合に高度な認証手段として利用できます。
4. セキュリティログとモニタリング
Cloudflareがどのようなセキュリティアクションを取ったかを確認することは、設定の効果を検証し、誤検知を特定するために不可欠です。
-
Firewall Events: Cloudflareダッシュボードの「Security」->「Overview」または「Security」->「Events」セクションで、ブロックされたリクエスト、チャレンジが表示されたリクエスト、WAFルールに一致したリクエストなどのセキュリティイベントを確認できます。
- 確認すべき項目:
- どのIPアドレス/国/User Agentからのリクエストがブロックされたか。
- どのWAFルールがトリガーされたか。
- 誤検知(正規のユーザーがブロック/チャレンジされた)がないか。
- 特定の攻撃パターンが見られないか。
- これらのログを定期的に確認し、必要に応じてFirewall RulesやWAF設定を調整します。
- 確認すべき項目:
-
Analytics: 「Analytics」セクションでは、トラフィック全体の統計情報に加えて、SecurityやBotsに関する詳細なアナリティクスを確認できます。脅威の種類別のトラフィック分布、ボットトラフィックの割合、DDoS攻撃の状況などを把握できます。
5. セキュリティ設定のベストプラクティスと考慮事項
Cloudflareのセキュリティ機能を最大限に活用し、効果的にサイトを保護するためのベストプラクティスをまとめます。
- 「Full (strict)」SSLモードを使用する: 最も推奨されるモードです。オリジンサーバーにも必ず認証局発行の有効な証明書をインストールしてください。
- Firewall Rulesを効果的に活用する: IPアクセスルールやWAFだけでは対応できない複雑な条件でのアクセス制御には、Firewall Rulesが不可欠です。管理画面へのアクセス制限、特定の攻撃パターンへの対応など、積極的に活用しましょう。
- Logモードでテストを行う: 新しいFirewall RulesやWAFルール、Rate Limitingルールを追加・変更する際は、いきなりBlockやChallengeを設定せず、まずはLogモードで有効にします。数日間ログを確認し、誤検知がないことを確認してから目的のアクションに変更してください。
- 誤検知に注意する: セキュリティ設定を強化しすぎると、正規のユーザーがサイトにアクセスできなくなる「誤検知」が発生する可能性があります。特にWAFやBot Management、Rate Limitingでは注意が必要です。Firewall Eventsログを定期的に確認し、誤検知があれば設定を調整してください。特定のIP、User Agent、パスに対して例外ルール(AllowやBypass)を設定することも可能です。
- 「Under Attack」モードは慎重に: DDoS攻撃を受けている場合に非常に有効ですが、正規ユーザーにも影響を与えます。攻撃が収まったら速やかに解除してください。
- オリジンサーバー自体のセキュリティもおろそかにしない: Cloudflareは強力な盾ですが、攻撃者がオリジンサーバーのIPアドレスを突き止める可能性はゼロではありません(例えば、サーバーから直接メールを送信している場合や、DNS履歴など)。また、サーバー内のアプリケーションの脆弱性やOS/ミドルウェアの脆弱性はCloudflareだけでは完全に防げません。定期的なOS/ミドルウェア/アプリケーションのアップデート、強力なパスワードの使用、サーバー側のファイアウォール設定など、オリジンサーバー自体のセキュリティ対策も同時に行うことが不可欠です。
- 定期的な設定の見直し: サイバー攻撃の手法は常に進化しています。あなたのサイトの利用状況や、Cloudflareから提供される新機能、セキュリティに関するニュースなどを参考に、定期的にCloudflareのセキュリティ設定を見直し、最適化してください。
- Cloudflare AnalyticsとLogsを活用する: 攻撃の状況、ブロックされたトラフィック、ボットの種類などを把握することで、より効果的な対策を講じることができます。
- 主要なエンドポイントにRate Limitingを設定する: ログイン、登録、パスワードリセット、APIエンドポイントなど、ブルートフォース攻撃やリソース枯渇の標的になりやすい箇所にRate Limitingを設定することは、基本的ながら非常に効果的な対策です。
- デフォルト設定から始める: 最初はCloudflareのデフォルト設定(Security Level Mediumなど)から始め、サイトのトラフィックや発生するセキュリティイベントを見ながら、徐々に設定を強化していくのが現実的なアプローチです。
6. その他のCloudflare関連セキュリティ機能
Cloudflareはセキュリティに関して非常に幅広い機能を提供しています。ここでは、無料プランでは利用できないものも含め、いくつかの関連機能に触れておきます。
- Cloudflare Access: (Zero Trust製品の一部) VPNなしで、特定のユーザーのみがウェブサイトやアプリケーション、SSH、RDPなどに安全にアクセスできるようにする機能です。社内ツールや管理画面へのアクセス制御に非常に強力です。
- API Shield: (Enterprise向け) APIに特化したセキュリティ機能です。スキーマ検証、レート制限、認証などをAPIゲートウェイとして提供し、APIへの攻撃を防ぎます。
- Spectrum: (Enterprise向け) HTTP/HTTPS以外のプロトコル(SSH, RDP, ゲームサーバーなど)に対するDDoS対策やProxy機能を提供します。
- Argo Tunnel (Cloudflare Tunnel): 安全なトンネルを通じてオリジンサーバーをCloudflareに接続し、オリジンIPアドレスを完全に非公開に保つことができる機能です。オリジンIPが漏洩するリスクを大幅に減らせます。セキュリティを極限まで高めたい場合に有効です。
- Cloudflare Workers: エッジでJavaScriptコードを実行できるサービスです。これを利用して、より複雑でカスタマイズされたセキュリティロジック(例えば、特定の条件でCAPTCHAをスキップさせる、独自の認証ヘッダーをチェックするなど)を実装することも可能です。
これらの機能はプランによって利用できるかどうかが異なりますが、Cloudflareがウェブサイトだけでなく、ネットワーク全体、アプリケーションレイヤーに至るまで、包括的なセキュリティソリューションを提供していることがわかります。
7. よくある質問とトラブルシューティング
Cloudflareのセキュリティ設定に関してよくある質問や、設定時に発生しやすい問題について解説します。
- Q: Cloudflareを導入したらサイトが遅くなった/表示がおかしくなった。
- A: まず、SSL/TLSモードが適切か確認してください。「Flexible」モードは非推奨です。「Full (strict)」を目指しましょう。また、Browser Integrity CheckやSecurity Levelの設定を最初は緩めに設定してみてください。WAFのSimulateモードで誤検知が発生していないかログを確認します。特定のページで問題が発生する場合は、Firewall RulesのBypassアクションを使って、そのパスに対してWAFやBot Managementを無効化するなどの対応が必要かもしれません。
- Q: 特定の国からの正規ユーザーがブロックされている。
- A: IP Access Rulesでその国をBlockリストに入れていないか確認してください。あるいは、Firewall Rulesで国を指定したBlockルールが有効になっている可能性があります。必要であれば、その国のアクセスを許可するAllowルールを追加するか、既存のルールを編集してください。誤検知の場合は、脅威スコアやその他の条件が高すぎてブロックされている可能性もあるため、Security Levelを下げるか、特定の条件に一致するリクエストに対してチャレンジに変更するなどの調整が必要です。
- Q: 特定のIPアドレスからの正規のアクセスがブロックされる/チャレンジされる。
- A: IP Access RulesでそのIPアドレスをAllowリストに追加します。または、Firewall RulesでそのIPアドレスからのアクセスに対してAllowアクションを設定したルールを作成し、優先順位を高く設定します。
- Q: 管理画面へのアクセスがブロックされる。
- A: 管理画面のパス(例:
/admin
,/wp-admin
)に対して、特定の信頼できるIPアドレスやネットワークからのアクセスのみをAllowするFirewall Ruleを設定するのが最も安全です。それ以外のアクセスをChallengeやBlockに設定します。WAFが管理画面へのアクセスを誤検知している可能性もあるため、信頼できるIPからのアクセスに対しては管理画面パスへのWAF適用をBypassする設定も検討します。
- A: 管理画面のパス(例:
- Q: オリジンサーバーのIPアドレスが知られてしまったらどうなる?
- A: Cloudflareを介さずに直接オリジンサーバーに攻撃が行われるリスクがあります。これを防ぐためには、オリジンサーバーのファイアウォールで、Cloudflareの公式IPアドレスリストからのアクセスのみを許可するように設定します。これにより、Cloudflareを経由しない直接アクセスを拒否できます。CloudflareのIPアドレスリストは常に更新される可能性があるため、定期的に確認・更新が必要です。より安全な方法としては、Argo Tunnel(Cloudflare Tunnel)を使用してオリジンIPを完全に非公開にする方法があります。
- Q: WAFで誤検知が多い。
- A: まず、WAFルールセット全体をSimulateモードに切り替えて、どのルールが誤検知を引き起こしているか特定します。Firewall Eventsログの詳細を確認し、誤検知を引き起こしている特定のルールIDやパターンを特定したら、そのルールのみを無効にするか、アクションをChallengeに変更します。あるいは、特定のパスや特定の条件(例: 信頼できるIPからのアクセス)に対してはWAFをBypassするFirewall Ruleを設定します。WAFの感度設定(Sensitivity)を下げるという方法もありますが、これは全体の保護レベルも下がるため、慎重に検討してください。
- Q: Rate Limitingで正規ユーザーが制限されてしまう。
- A: Rate Limitingの設定(時間枠内のリクエスト数)が厳しすぎる可能性があります。正規ユーザーの一般的な利用パターンを分析し、制限値を緩和してください。または、アクションをBlockではなくManaged Challengeに変更することで、正規ユーザーはある程度の追加認証でアクセスできるようになります。
8. まとめ:Cloudflareであなたのサイトを安全に
Cloudflareは、その強力で多機能なプラットフォームを通じて、ウェブサイトのセキュリティを大幅に向上させることができます。本記事で解説したSSL/TLS設定、WAF、Firewall Rules、Rate Limiting、Bot Management、DDoS Protectionなどの機能を適切に設定・運用することで、今日の多様なサイバー攻撃からあなたのサイトを効果的に保護することが可能です。
重要なのは、一度設定して終わりではなく、定期的にセキュリティ設定を見直し、Cloudflareのログやアナリティクスを確認し、サイトのトラフィックや変化する脅威の状況に応じて設定を調整していくことです。また、Cloudflareはあくまで外側からの保護を提供するものであり、オリジンサーバー自体のセキュリティ対策も同時に行うことで、より堅牢なセキュリティ体制を構築できます。
Cloudflareの無料プランでも多くの基本的なセキュリティ機能が利用可能ですが、より高度な保護や柔軟な設定が必要な場合は、Pro, Business, Enterpriseプランへのアップグレードも検討してください。
本記事が、Cloudflareを活用してあなたのウェブサイトのセキュリティを強化するための一助となれば幸いです。安全なウェブサイト運営のために、Cloudflareの機能を積極的に学び、活用していきましょう。