RPCとは?初心者向けにわかりやすく解説【仕組み・メリット・デメリット】
近年、マイクロサービスアーキテクチャや分散システムが普及するにつれて、「RPC (Remote Procedure Call)」という技術を目にする機会が増えました。しかし、「RPCって一体何?」「どんな仕組みで動いているの?」「使うとどんなメリットがあるの?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、RPCの基本から応用まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。RPCの仕組み、メリット・デメリット、具体的な使い方、関連技術、さらにはgRPCなどの代表的な実装まで、網羅的に説明します。この記事を読めば、RPCの全体像を理解し、自分のプロジェクトに活用できるかどうか判断できるようになるでしょう。
目次
- RPCとは何か?
- 1.1 RPCの定義と概要
- 1.2 なぜRPCが必要なのか?
- 1.3 ローカルプロシージャコールとの違い
- RPCの仕組み
- 2.1 クライアント側の処理
- 2.2 サーバー側の処理
- 2.3 シリアライゼーションとデシリアライゼーション
- 2.4 プロトコル
- 2.5 スタブとスケルトン
- RPCのメリット
- 3.1 開発効率の向上
- 3.2 モジュール化と再利用性
- 3.3 異なる言語・プラットフォーム間の連携
- 3.4 柔軟なスケーラビリティ
- RPCのデメリット
- 4.1 ネットワークの複雑性
- 4.2 レイテンシ
- 4.3 エラー処理の複雑化
- 4.4 セキュリティリスク
- RPCの具体的な使い方
- 5.1 RPCフレームワークの選択
- 5.2 インターフェース定義
- 5.3 クライアントとサーバーの実装
- 5.4 エラーハンドリング
- 5.5 テスト
- 代表的なRPC実装
- 6.1 gRPC
- 6.2 REST
- 6.3 Apache Thrift
- 6.4 XML-RPC
- RPCと関連する技術
- 7.1 マイクロサービス
- 7.2 API Gateway
- 7.3 サービスディスカバリー
- 7.4 分散トレーシング
- まとめ:RPCを理解し、効果的に活用するために
1. RPCとは何か?
1.1 RPCの定義と概要
RPC (Remote Procedure Call) は、日本語で「遠隔手続き呼び出し」と訳されます。これは、あるコンピュータ(クライアント)上のプログラムが、別のコンピュータ(サーバー)上のプログラム(プロシージャ)を、あたかもローカルにある関数を呼び出すかのように実行できる技術です。
もう少し具体的に言うと、RPCは以下の要素を含みます。
- クライアント: プロシージャを呼び出す側のプログラム。
- サーバー: プロシージャを提供する側のプログラム。
- プロシージャ: サーバー上で実行される特定の処理を行う関数やメソッド。
- パラメータ: プロシージャに渡される入力データ。
- 戻り値: プロシージャの実行結果としてクライアントに返されるデータ。
クライアントは、サーバー上のプロシージャ名とパラメータを指定して呼び出しを行います。RPCの仕組みが、ネットワークを通じてサーバーにリクエストを送信し、サーバーがプロシージャを実行して結果をクライアントに返します。クライアントは、あたかもローカルの関数を呼び出すかのように、結果を受け取ることができます。
イメージ:
友達に電話をかけて何かを頼むとしましょう。あなたはクライアント、友達はサーバー、あなたが頼むことはプロシージャ、頼む内容がパラメータ、友達がやってくれた結果が戻り値です。RPCは、コンピュータ同士でこれと同じようなことを行う技術です。
1.2 なぜRPCが必要なのか?
RPCは、主に以下の理由から必要とされます。
- 分散システムの構築: 複数のコンピュータに処理を分散させることで、システム全体の処理能力や可用性を向上させることができます。RPCは、異なるコンピュータ上のプログラム同士が連携するための重要な手段となります。
- マイクロサービスアーキテクチャの実現: マイクロサービスとは、独立してデプロイ可能な小さなサービスを組み合わせてシステムを構築するアーキテクチャです。RPCは、マイクロサービス間の通信を効率的に行うための重要な技術となります。
- モジュール化と再利用性の向上: 特定の処理をRPCサーバーとして独立させることで、その処理を他のクライアントからも利用できるようになります。これにより、コードの再利用性が向上し、開発効率が向上します。
- 異なる言語・プラットフォーム間の連携: RPCは、異なるプログラミング言語やオペレーティングシステムで動作するプログラム同士が連携するための手段を提供します。これにより、既存のシステムとの統合が容易になります。
現代のソフトウェア開発では、大規模なシステムを構築するために、複数のコンピュータを連携させたり、異なる言語やプラットフォームで開発されたプログラムを組み合わせたりする必要性が高まっています。RPCは、このようなニーズに対応するための重要な技術となっています。
1.3 ローカルプロシージャコールとの違い
RPCは、ローカルプロシージャコール (Local Procedure Call) と比較することで、より理解しやすくなります。
- ローカルプロシージャコール: 同じコンピュータ内のプログラム間で関数を呼び出すこと。メモリ空間を共有しているため、直接関数を呼び出すことができます。
- RPC: 異なるコンピュータ間のプログラム間で関数を呼び出すこと。ネットワークを通じて通信する必要があるため、データのシリアライゼーション/デシリアライゼーションや、ネットワークプロトコルの利用が必要になります。
比較項目 | ローカルプロシージャコール | RPC |
---|---|---|
実行場所 | 同じコンピュータ内 | 異なるコンピュータ間 |
通信方法 | メモリ空間の共有 | ネットワーク通信 |
データ形式 | メモリ上のデータ形式 | シリアライズされたデータ形式 |
エラー処理 | 例外処理 | ネットワークエラーの考慮 |
2. RPCの仕組み
RPCの仕組みを理解するためには、クライアント側とサーバー側の処理の流れ、データのシリアライゼーション/デシリアライゼーション、プロトコル、スタブとスケルトンの役割を理解する必要があります。
2.1 クライアント側の処理
クライアント側の処理は、以下のようになります。
- クライアントプログラムが、リモートプロシージャを呼び出す: クライアントプログラムは、あたかもローカルの関数を呼び出すかのように、リモートプロシージャの名前とパラメータを指定して呼び出しを行います。
- クライアントスタブが、呼び出しをインターセプトする: クライアントスタブは、クライアントプログラムとRPCミドルウェアの間に入り、リモートプロシージャの呼び出しをインターセプトします。
- クライアントスタブが、パラメータをシリアライズする: クライアントスタブは、パラメータをネットワークを通じて送信できる形式に変換します(シリアライゼーション)。
- クライアントスタブが、リクエストをサーバーに送信する: クライアントスタブは、シリアライズされたパラメータとプロシージャ名を、ネットワークを通じてサーバーに送信します。
- クライアントスタブが、サーバーからのレスポンスを受信する: クライアントスタブは、サーバーから戻り値を受信します。
- クライアントスタブが、戻り値をデシリアライズする: クライアントスタブは、受信したデータをクライアントプログラムが理解できる形式に変換します(デシリアライゼーション)。
- クライアントプログラムに、戻り値を返す: クライアントスタブは、デシリアライズされた戻り値をクライアントプログラムに返します。
2.2 サーバー側の処理
サーバー側の処理は、以下のようになります。
- RPCミドルウェアが、クライアントからのリクエストを受信する: サーバー側のRPCミドルウェアは、クライアントからのリクエストを受信します。
- サーバー側のスケルトンが、リクエストをインターセプトする: サーバー側のスケルトンは、RPCミドルウェアとサーバープログラムの間に入り、リクエストをインターセプトします。
- サーバー側のスケルトンが、パラメータをデシリアライズする: サーバー側のスケルトンは、受信したデータをサーバープログラムが理解できる形式に変換します(デシリアライゼーション)。
- サーバー側のスケルトンが、該当するプロシージャを呼び出す: サーバー側のスケルトンは、デシリアライズされたパラメータを引数として、該当するプロシージャを呼び出します。
- プロシージャが実行される: サーバー上のプロシージャが実行され、結果が生成されます。
- サーバー側のスケルトンが、戻り値をシリアライズする: サーバー側のスケルトンは、プロシージャの戻り値をネットワークを通じて送信できる形式に変換します(シリアライゼーション)。
- サーバー側のスケルトンが、レスポンスをクライアントに送信する: サーバー側のスケルトンは、シリアライズされた戻り値を、ネットワークを通じてクライアントに送信します。
2.3 シリアライゼーションとデシリアライゼーション
シリアライゼーション(Serialization)とは、データをネットワークを通じて送信できる形式に変換することです。デシリアライゼーション(Deserialization)とは、シリアライズされたデータを元の形式に戻すことです。
RPCでは、クライアントとサーバーの間でデータをやり取りするために、シリアライゼーションとデシリアライゼーションが不可欠です。なぜなら、クライアントとサーバーは異なる言語やプラットフォームで動作している可能性があり、データの表現形式が異なる可能性があるからです。
代表的なシリアライゼーション形式:
- JSON (JavaScript Object Notation): 人間が読みやすく、広く利用されているデータ形式。
- XML (Extensible Markup Language): 構造化されたデータを表現するためのマークアップ言語。
- Protocol Buffers (protobuf): Googleが開発した、効率的なシリアライゼーション形式。
- MessagePack: バイナリ形式で、効率的なシリアライゼーションとデシリアライゼーションが可能。
2.4 プロトコル
プロトコルとは、クライアントとサーバーの間でデータをどのようにやり取りするかを定義したルールです。RPCでは、ネットワークプロトコルを使用して、クライアントからサーバーにリクエストを送信し、サーバーからクライアントにレスポンスを返します。
代表的なプロトコル:
- HTTP (Hypertext Transfer Protocol): WebブラウザとWebサーバー間の通信で一般的に使用されるプロトコル。
- TCP (Transmission Control Protocol): 信頼性の高い接続指向のプロトコル。
- UDP (User Datagram Protocol): 高速だが信頼性の低い非接続指向のプロトコル。
RPCの実装によっては、独自のプロトコルを使用する場合もあります。
2.5 スタブとスケルトン
スタブ (Stub) とスケルトン (Skeleton) は、RPCの仕組みにおいて重要な役割を果たします。
- スタブ: クライアント側に存在するプロキシオブジェクト。クライアントプログラムからの呼び出しを受け取り、パラメータをシリアライズしてサーバーに送信し、サーバーからのレスポンスを受信してデシリアライズし、クライアントプログラムに結果を返します。
- スケルトン: サーバー側に存在するプロキシオブジェクト。クライアントからのリクエストを受信し、パラメータをデシリアライズしてサーバープログラムのプロシージャを呼び出し、プロシージャの実行結果をシリアライズしてクライアントに送信します。
スタブとスケルトンは、クライアントとサーバーの間の通信を隠蔽し、開発者がネットワークの詳細を意識せずにRPCを利用できるようにします。
3. RPCのメリット
RPCには、以下のようなメリットがあります。
3.1 開発効率の向上
- 抽象化: RPCは、ネットワーク通信の詳細を抽象化し、開発者がリモートプロシージャをあたかもローカルの関数を呼び出すかのように扱えるようにします。これにより、ネットワークに関する知識がなくても、分散システムを構築できるようになり、開発効率が向上します。
- コード生成ツール: 多くのRPCフレームワークは、インターフェース定義からクライアントスタブとサーバー側のスケルトンを自動生成するツールを提供しています。これにより、ボイラープレートコードを記述する手間が省け、開発者はビジネスロジックに集中できます。
3.2 モジュール化と再利用性
- サービスの独立性: RPCを使用すると、特定の処理を独立したサービスとして実装できます。これにより、サービスをモジュール化し、再利用性を高めることができます。
- 疎結合: RPCは、クライアントとサーバーの間の依存関係を減らすことができます。クライアントは、サーバーの実装の詳細を知らなくても、インターフェース定義に基づいてリモートプロシージャを呼び出すことができます。
3.3 異なる言語・プラットフォーム間の連携
- 相互運用性: RPCは、異なるプログラミング言語やオペレーティングシステムで動作するプログラム同士が連携するための手段を提供します。これにより、既存のシステムとの統合が容易になります。
- 言語中立性: 多くのRPCフレームワークは、複数のプログラミング言語をサポートしています。これにより、クライアントとサーバーで異なる言語を使用したり、既存のシステムと新しいシステムを異なる言語で統合したりすることが容易になります。
3.4 柔軟なスケーラビリティ
- 水平スケーリング: RPCを使用すると、複数のサーバーに処理を分散させることができます。これにより、システム全体の処理能力を向上させ、負荷分散を行うことができます。
- 独立したスケーリング: 各RPCサービスは、独立してスケーリングできます。これにより、特定のサービスに負荷が集中した場合でも、そのサービスのみをスケールアウトすることで、システム全体のパフォーマンスを維持できます。
4. RPCのデメリット
RPCには、以下のようなデメリットがあります。
4.1 ネットワークの複雑性
- ネットワーク障害: RPCは、ネットワークを通じて通信するため、ネットワーク障害の影響を受けやすいです。ネットワークがダウンしたり、遅延が発生したりすると、RPCの呼び出しが失敗したり、パフォーマンスが低下したりする可能性があります。
- ネットワーク設定: RPCを使用するためには、ネットワークの設定が必要になります。ファイアウォールの設定や、ポートの開放など、ネットワークに関する知識が必要になる場合があります。
4.2 レイテンシ
- 通信オーバーヘッド: RPCは、ネットワークを通じてデータをやり取りするため、ローカルプロシージャコールと比較してレイテンシが大きくなる傾向があります。データのシリアライゼーション/デシリアライゼーションや、ネットワークの遅延などが、レイテンシの増加につながる可能性があります。
- パフォーマンスチューニング: レイテンシを最小限に抑えるためには、適切なプロトコルの選択、データの圧縮、キャッシュの利用など、パフォーマンスチューニングが必要になる場合があります。
4.3 エラー処理の複雑化
- ネットワークエラー: RPCは、ネットワークを通じて通信するため、ネットワークエラーが発生する可能性があります。クライアントは、サーバーに接続できなかったり、タイムアウトが発生したりした場合に、適切にエラー処理を行う必要があります。
- 冪等性: RPCの呼び出しが失敗した場合、クライアントはリトライする必要があります。しかし、リトライによって同じ処理が複数回実行されると、予期しない結果を引き起こす可能性があります。冪等性を保証するためには、サーバー側の処理を注意深く設計する必要があります。
4.4 セキュリティリスク
- 中間者攻撃: RPCの通信が暗号化されていない場合、中間者が通信を傍受し、データを盗聴したり、改竄したりする可能性があります。通信を暗号化するために、TLS/SSLなどのプロトコルを使用する必要があります。
- 認証と認可: RPCサービスへのアクセスを制御するために、適切な認証と認可の仕組みを実装する必要があります。
5. RPCの具体的な使い方
RPCを実際に使用する手順を説明します。
5.1 RPCフレームワークの選択
RPCフレームワークは、RPCの仕組みを実装し、開発を容易にするためのツールキットです。数多くのRPCフレームワークが存在しますが、プロジェクトの要件に合わせて適切なフレームワークを選択する必要があります。
RPCフレームワーク選択のポイント:
- サポートされている言語: クライアントとサーバーで使用するプログラミング言語がサポートされているか確認します。
- パフォーマンス: パフォーマンス要件を満たすことができるか確認します。
- 使いやすさ: 学習コストや開発効率を考慮して、使いやすいフレームワークを選択します。
- コミュニティ: 活発なコミュニティがあり、ドキュメントやサポートが充実しているか確認します。
- 機能: セキュリティ、監視、トレーシングなどの必要な機能が提供されているか確認します。
5.2 インターフェース定義
インターフェース定義は、クライアントとサーバーの間で共有される契約であり、リモートプロシージャの名前、パラメータ、戻り値の型などを定義します。インターフェース定義は、IDL (Interface Definition Language) と呼ばれる専用の言語で記述されることが多いです。
例 (gRPC):
“`protobuf
syntax = “proto3”;
service Greeter {
rpc SayHello (HelloRequest) returns (HelloReply);
}
message HelloRequest {
string name = 1;
}
message HelloReply {
string message = 1;
}
“`
この例では、Greeter
というサービスと、SayHello
というリモートプロシージャを定義しています。SayHello
は、HelloRequest
というメッセージを引数として受け取り、HelloReply
というメッセージを返します。
5.3 クライアントとサーバーの実装
インターフェース定義に基づいて、クライアントとサーバーを実装します。多くのRPCフレームワークは、インターフェース定義からクライアントスタブとサーバー側のスケルトンを自動生成するツールを提供しています。
クライアント側の実装:
クライアントスタブを使用して、リモートプロシージャを呼び出します。
サーバー側の実装:
サーバー側のスケルトンを使用して、リモートプロシージャの実装を提供します。
5.4 エラーハンドリング
RPCの呼び出しが失敗した場合に、適切にエラー処理を行う必要があります。ネットワークエラー、タイムアウト、サーバー側のエラーなど、様々なエラーが発生する可能性があるため、エラーの種類に応じて適切な処理を行う必要があります。
エラーハンドリングのポイント:
- エラーログ: エラーが発生した場合、エラーログを出力して、問題を追跡できるようにします。
- リトライ: 一時的なエラーが発生した場合、リトライを試みます。ただし、リトライ回数に制限を設けることで、無限ループに陥ることを防ぎます。
- フォールバック: エラーが発生した場合、フォールバック処理を実行します。例えば、キャッシュからデータを取得したり、デフォルト値を返したりすることができます。
5.5 テスト
RPCサービスをテストすることは、システムの信頼性を確保するために重要です。ユニットテスト、統合テスト、エンドツーエンドテストなど、様々なテスト手法を組み合わせて、RPCサービスをテストする必要があります。
テストのポイント:
- ユニットテスト: 各リモートプロシージャの機能を個別にテストします。
- 統合テスト: クライアントとサーバー間の連携をテストします。
- エンドツーエンドテスト: システム全体をテストします。
- パフォーマンステスト: RPCサービスのパフォーマンスをテストします。
- セキュリティテスト: RPCサービスのセキュリティ脆弱性をテストします。
6. 代表的なRPC実装
数多くのRPC実装が存在しますが、ここでは代表的なものを紹介します。
6.1 gRPC
gRPCは、Googleが開発した高性能なオープンソースのRPCフレームワークです。Protocol Buffersをインターフェース定義言語として使用し、HTTP/2をトランスポートプロトコルとして使用します。
特徴:
- 高性能: Protocol BuffersとHTTP/2の組み合わせにより、高速なデータ転送と効率的なリソース利用を実現します。
- 多言語サポート: C++, Java, Go, Python, Ruby, C#, Node.jsなど、様々なプログラミング言語をサポートしています。
- ストリーミング: クライアントとサーバー間でストリーミングによるデータ転送が可能です。
- 認証: TLS/SSLによる暗号化や、OAuth 2.0などの認証メカニズムをサポートしています。
6.2 REST
REST (Representational State Transfer) は、Webアプリケーションを設計するためのアーキテクチャスタイルの一つです。HTTPプロトコルを使用して、リソースを表現し、操作を行います。
特徴:
- ステートレス: サーバーは、クライアントからの各リクエストを独立して処理します。クライアントの状態をサーバーに保持する必要はありません。
- キャッシュ可能: レスポンスをキャッシュすることで、パフォーマンスを向上させることができます。
- 統一インターフェース: HTTPメソッド (GET, POST, PUT, DELETEなど) を使用して、リソースに対する操作を統一的に表現します。
- 階層化システム: クライアントは、中間サーバーを経由してサーバーにアクセスできます。
RESTは、RPCとは異なるアーキテクチャスタイルですが、Web APIを構築するための一般的な選択肢です。
6.3 Apache Thrift
Apache Thriftは、Facebookが開発したクロスプラットフォームなRPCフレームワークです。独自のIDLを使用してインターフェースを定義し、様々なプログラミング言語に対応したコードを生成します。
特徴:
- 多言語サポート: C++, Java, Python, PHP, Ruby, Erlang, Go, JavaScript, C#, Perl, Objective-C, Delphiなど、様々なプログラミング言語をサポートしています。
- トランスポートプロトコルの選択: TCP, HTTP, メモリ内トランスポートなど、様々なトランスポートプロトコルを選択できます。
- シリアライゼーション形式の選択: Binary, Compact, JSONなど、様々なシリアライゼーション形式を選択できます。
6.4 XML-RPC
XML-RPCは、XMLをデータ形式として使用し、HTTPをトランスポートプロトコルとして使用するシンプルなRPCプロトコルです。
特徴:
- シンプル: 比較的シンプルなプロトコルであり、実装が容易です。
- クロスプラットフォーム: 異なるプログラミング言語やオペレーティングシステムで動作するプログラム同士が連携できます。
7. RPCと関連する技術
RPCは、マイクロサービスアーキテクチャや分散システムと密接に関連しています。
7.1 マイクロサービス
マイクロサービスとは、独立してデプロイ可能な小さなサービスを組み合わせてシステムを構築するアーキテクチャです。RPCは、マイクロサービス間の通信を効率的に行うための重要な技術となります。
7.2 API Gateway
API Gatewayは、クライアントからのリクエストを受け付け、適切なマイクロサービスにルーティングする役割を果たします。API Gatewayは、認証、認可、レート制限、ロギングなどの機能を提供することで、マイクロサービスアーキテクチャのセキュリティと管理性を向上させます。
7.3 サービスディスカバリー
サービスディスカバリーは、マイクロサービスが互いを見つけ、接続するための仕組みです。サービスディスカバリーを使用することで、マイクロサービスのIPアドレスやポート番号が変更された場合でも、クライアントは自動的にサービスを見つけて接続できます。
7.4 分散トレーシング
分散トレーシングは、分散システムにおけるリクエストの処理経路を追跡するための技術です。分散トレーシングを使用することで、パフォーマンスボトルネックやエラーの原因を特定し、システムの信頼性を向上させることができます。
8. まとめ:RPCを理解し、効果的に活用するために
この記事では、RPCの基本から応用まで、幅広く解説しました。RPCは、分散システムの構築やマイクロサービスアーキテクチャの実現において重要な役割を果たす技術です。RPCを理解し、効果的に活用することで、開発効率の向上、モジュール化と再利用性の向上、異なる言語・プラットフォーム間の連携、柔軟なスケーラビリティを実現できます。
ただし、RPCにはネットワークの複雑性、レイテンシ、エラー処理の複雑化、セキュリティリスクなどのデメリットも存在します。これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、RPCをより安全かつ効率的に利用することができます。
この記事が、RPCの理解を深め、今後のソフトウェア開発に役立つことを願っています。