はい、承知いたしました。【初心者向け】Redisのダウンロード・インストール手順 の詳細な説明を含む記事を作成します。約5000語のボリュームになるよう、各手順や関連情報の解説を非常に詳細に記述します。
【初心者向け】Redisのダウンロードとインストール手順:徹底解説ガイド
皆さん、こんにちは! プログラミングやシステム開発の世界に足を踏み入れたばかりの皆さん、あるいは少しだけ経験はあるけれど、データベースやキャッシュについてもっと学びたいと考えている皆さんに向けて、今回は「Redis(レディス)」という素晴らしいツールについてご紹介し、その最初のステップである「ダウンロードとインストール」を、どこよりも詳しく、初心者の方でも確実にできるよう解説していきます。
この記事では、Redisが何なのかという基本的なことから始め、主要なOS(Linux、macOS、Windows)それぞれでの具体的なインストール方法を、まるで隣で一緒に作業しているかのように、一つ一つのコマンドや設定の意味を丁寧に説明しながら進めていきます。約5000語というボリュームで、この記事さえ読めば、Redisのインストールで困ることはほとんどなくなるはずです。
さあ、一緒にRedisの世界への扉を開けてみましょう!
第1章:Redisってそもそも何? なぜ使うの?
インストール手順に進む前に、まずは「Redisとは何か?」そして「なぜRedisを使うと便利なのか?」という基本的な部分を理解しておきましょう。ここを理解しておくと、インストール後の学習もスムーズに進みます。
1.1 Redisの正体:超高速なインメモリデータストア
Redisは「Remote Dictionary Server」の略で、その名の通り「リモートから利用できる辞書サーバー」のようなものです。より技術的に言うと、「インメモリデータ構造ストア(In-Memory Data Structure Store)」に分類されます。
「インメモリ(In-Memory)」 というのがポイントです。これは、データをハードディスクやSSDのようなストレージではなく、メインメモリ(RAM)上に保持する という意味です。メモリはストレージに比べて読み書きが圧倒的に速いため、Redisは非常に高速なデータアクセスを提供できます。
1.2 Redisは何に使えるの? 主なユースケース
Redisは単なるキーと値のペアを保存するだけでなく、様々なデータ構造を扱うことができます。これが、他の単純なキャッシュシステムとは異なる大きな特徴です。Redisがサポートする主なデータ構造には、以下のようなものがあります。
- Strings (文字列): 最も基本的な型。単一の文字列を保存します。Webサイトのセッション情報などを保存するのに便利です。
- Lists (リスト): 要素を順序付けて並べたリスト。キューやスタックとして使えます。最新の投稿リストなどを保持するのに使われることがあります。
- Sets (セット): 順序付けられていないユニークな要素の集合。タグの管理や、共通の要素を見つけるのに便利です。
- Sorted Sets (ソート済みセット): 各要素にスコアを割り当てて、スコア順に並べ替えることができるセット。ランキング機能などで活躍します。
- Hashes (ハッシュ): フィールドと値のペアの集まり。オブジェクト(ユーザー情報など)を一つのキーに関連付けて保存するのに適しています。
- Bitmaps (ビットマップ): ビット単位の操作が可能なデータ構造。特定のユーザーのログイン履歴(ログインしたら1、していなければ0)などを効率的に表現できます。
- HyperLogLog (ハイパーログログ): セット内のユニークな要素数をおおよそカウントするデータ構造。非常に大量のユニークユーザー数をメモリをほとんど消費せずにカウントできます。
これらの豊富なデータ構造とインメモリによる高速アクセスのおかげで、Redisは様々な用途で利用されています。代表的なものをいくつか見てみましょう。
- キャッシュ (Cache): 最も一般的な使い方です。データベースから取得したデータをRedisに一時的に保存しておき、次に同じデータが必要になった時にRedisから直接読み込むことで、データベースへの負荷を減らし、レスポンス速度を向上させます。ウェブサイトやAPIのパフォーマンス改善に非常に効果的です。
- セッションストア (Session Store): ログイン中のユーザー情報(セッション情報)を保存するために使われます。Webアプリケーションを複数のサーバーで運用している場合でも、Redisのような共有可能なセッションストアがあれば、どのサーバーにリクエストがきても同じセッション情報にアクセスできます。
- メッセージキュー (Message Queue): ある処理の結果を別の処理に渡す際の中継役として使われます。Publisher/Subscriber (Pub/Sub) 機能やリストを使って簡単に実装できます。非同期処理を実現するのに便利です。
- ランキングシステム (Leaderboard): Sorted Setsを使って、ゲームのハイスコアランキングなどをリアルタイムに更新・表示できます。
- リアルタイム分析 (Real-time Analytics): アクセスログやイベントデータを一時的に蓄積し、リアルタイムに集計や分析を行う基盤として利用されます。
1.3 なぜ初心者にもRedisがおすすめなの?
たくさんの機能があるように聞こえるかもしれませんが、基本的な使い方は非常にシンプルです。
- サーバーを起動する: Redisサーバーを起動します。
- クライアントから接続する: プログラムやコマンドラインツールからRedisサーバーに接続します。
- コマンドを送る:
SET
,GET
,LPUSH
,RPUSH
,ZADD
といったシンプルなコマンドを使ってデータを操作します。
このシンプルさにも関わらず、Webアプリケーション開発などで非常に頻繁に利用されるため、Redisの基本的な知識はエンジニアとして非常に役立ちます。また、自分でサーバーを立ててデータを操作する経験は、他のデータベースやサーバーソフトウェアを学ぶ上でも基礎となります。
この記事では、まず「サーバーを起動する」という部分に焦点を当て、Redisサーバーを自分のPCにインストールする方法をマスターすることを目指します。
第2章:インストール前の準備
Redisのインストールは、使用しているオペレーティングシステム(OS)によっていくつかの方法があります。この記事では、主要なOSであるLinux、macOS、Windowsそれぞれについて解説しますが、どのOSでインストールする場合でも、いくつかの共通の準備事項があります。
2.1 使用するOSの確認
まず、自分がどのOSを使っているのかを確認してください。
* Windows: スタートボタンを右クリックし、「システム」を選択すると確認できます。Windows 10やWindows 11が一般的です。
* macOS: 画面左上のAppleメニューをクリックし、「このMacについて」を選択すると確認できます。macOS Sonoma, Ventura, Montereyなどが一般的です。
* Linux: 多くの種類(ディストリビューション)がありますが、特にUbuntuやCentOS/Fedoraなどがよく使われます。ターミナルを開いて lsb_release -a
や cat /etc/os-release
といったコマンドを実行すると確認できます。(これらのコマンドが使えない場合もありますが、大抵のLinuxではどちらかが使えます。)
この記事では、特に以下の環境を想定して詳細を解説します。
- Linux: Ubuntu (aptパッケージマネージャー) および CentOS/Fedora (yum/dnfパッケージマネージャー) を中心に解説します。ソースコードからコンパイルする方法も解説します。
- macOS: Homebrewというパッケージマネージャーを使う方法を解説します。
- Windows: Windows Subsystem for Linux (WSL2) を使う方法を強く推奨し、詳細に解説します。古い方法である非公式なポートについても触れますが、推奨しません。
2.2 コマンドラインインターフェース(CLI)の準備
サーバーソフトウェアであるRedisをインストールしたり操作したりするには、基本的に「コマンドラインインターフェース(CLI)」、つまり黒い画面のターミナルやコマンドプロンプトを使います。マウスでクリックする操作とは異なり、キーボードでコマンドを入力してコンピューターに指示を出します。
- Windows: 「コマンドプロンプト」や「PowerShell」、「Windows Terminal」といった名前のアプリを使います。Windows Subsystem for Linux (WSL) を使う場合は、WSLを起動した際のターミナルを使います。
- macOS: 「ターミナル」という名前のアプリを使います。「アプリケーション」フォルダの中の「ユーティリティ」フォルダに入っています。
- Linux: デスクトップ環境を使っている場合は、「ターミナル」や「端末」といった名前のアプリを使います。サーバー用途のLinuxの場合は、SSHなどで接続したシェル環境がそのままCLIになります。
これらのCLIを開いて、基本的な文字入力ができる状態にしておいてください。コピー&ペーストもよく使います。
2.3 インターネット接続
Redisのソフトウェアをダウンロードするために、インターネット接続が必要です。
2.4 管理者権限(sudoなど)
システムにソフトウェアをインストールしたり、システムの設定を変更したりするためには、「管理者権限」が必要になる場合があります。LinuxやmacOSでは sudo
というコマンドを、Windowsでは管理者権限でコマンドプロンプトなどを起動する必要があります。
sudo
は「Superuser Do」の略で、「スーパーユーザー(管理者)としてこのコマンドを実行する」という意味です。sudo
を使うと、パスワードを求められることがあります。これは、本当に管理者権限で実行して良いかの確認です。自分のユーザーアカウントのパスワードを入力してください。
この記事で出てくる $ sudo ...
という行は、「このコマンドは管理者権限で実行してください」という意味だと思ってください。
これらの準備ができたら、いよいよOSごとのインストール手順に進みましょう。
第3章:Redisのインストール手順 (Linux)
LinuxでのRedisのインストール方法は主に2つあります。
- パッケージマネージャーを使う方法: 最も簡単で推奨される方法です。Linuxディストリビューションが提供するソフトウェアパッケージをインストールします。
- ソースコードからコンパイルする方法: 最新版を使いたい場合や、特定のビルドオプションを指定したい場合に利用します。やや難易度が高いですが、Redisの公式な推奨インストール方法でもあります。
ここでは、まず簡単なパッケージマネージャーを使う方法を、Ubuntuを例に詳しく解説し、次にCentOS/Fedoraでの方法を簡単に触れます。最後に、ソースコードからのコンパイル方法を解説します。
3.1 方法1:パッケージマネージャーを使う (推奨)
多くのLinuxディストリビューションは、Redisを公式リポジトリまたは協力なコミュニティリポジトリで提供しています。これを利用するのが、最も手軽でシステムとの連携もスムーズなため、初心者の方にはこの方法がおすすめです。
3.1.1 Ubuntu/Debianの場合 (apt)
UbuntuやDebian系のLinuxディストリビューションでは、apt
というパッケージマネージャーを使います。
-
パッケージリストの更新:
まず、利用可能なソフトウェアパッケージのリストを最新の状態にします。bash
$ sudo apt updateこのコマンドを実行すると、システムがソフトウェアリポジトリ(ソフトウェアが置かれている場所)にアクセスし、どのソフトウェアのどのバージョンが利用可能か、またセキュリティアップデートがあるかなどの情報を取得します。
sudo
を使っているので、パスワードを求められる場合があります。 -
Redisサーバーのインストール:
次に、Redisサーバーのパッケージをインストールします。bash
$ sudo apt install redis-serverこのコマンドは、
redis-server
という名前のパッケージをシステムにダウンロードしてインストールします。依存関係にある他の必要なパッケージも一緒にインストールされます。「続行しますか? [Y/n]」のような確認が表示されたら、Y
と入力してEnterキーを押してください。これでRedisサーバー本体がインストールされました。通常、
apt
でインストールした場合、Redisサーバーは自動的にサービスのとして登録され、インストール完了後すぐに起動します。 -
Redisサービスの確認:
Redisサーバーが正しく起動しているか確認しましょう。bash
$ systemctl status redis-serverこのコマンドは、
systemd
というシステムサービス管理ツールを使って、redis-server
という名前のサービスの現在の状態を表示します。出力の中に
Active: active (running)
と表示されていれば、Redisサーバーは正常に起動しています。- その他の便利な
systemctl
コマンド:- Redisを停止する:
$ sudo systemctl stop redis-server
- Redisを起動する:
$ sudo systemctl start redis-server
- Redisを再起動する:
$ sudo systemctl restart redis-server
- システムの起動時にRedisを自動起動するように設定する:
$ sudo systemctl enable redis-server
(aptでインストールした場合、多くはデフォルトで有効になっています) - システムの起動時の自動起動を無効にする:
$ sudo systemctl disable redis-server
- Redisを停止する:
- その他の便利な
-
インストールされたファイルの場所 (参考):
apt
でインストールした場合、関連ファイルは通常以下の場所に配置されます。- 実行ファイル (
redis-server
,redis-cli
など):/usr/bin/
ディレクトリなどにインストールされます。 - 設定ファイル (
redis.conf
):/etc/redis/
ディレクトリに配置されます。このファイルを編集することで、Redisの設定を変更できます。後述する「設定の変更」セクションで詳しく触れます。 - データファイル (RDB, AOF): デフォルトでは
/var/lib/redis/
ディレクトリなどに保存されることが多いですが、設定ファイル (redis.conf
) で変更可能です。
- 実行ファイル (
これで、Ubuntu/DebianへのRedisインストールは完了です! 次の「インストールできたか確認しよう」のセクションに進んで、実際にRedisを使ってみましょう。
3.1.2 CentOS/RHEL/Fedoraの場合 (yum/dnf)
CentOSやRHEL、FedoraなどのRed Hat系のLinuxディストリビューションでは、yum
または dnf
というパッケージマネージャーを使います。(Fedoraや新しいCentOS/RHELでは dnf
が主流ですが、yum
も多くの場合エイリアスとして使えます。)
-
パッケージリストの更新 (DNFの場合):
利用可能なパッケージリストを更新します。bash
$ sudo dnf check-update
(yumの場合は$ sudo yum check-update
) -
Redisサーバーのインストール:
Redisサーバーをインストールします。bash
$ sudo dnf install redis
(yumの場合は$ sudo yum install redis
)確認メッセージが表示されたら、
y
を入力してEnterキーを押します。 -
Redisサービスの起動と有効化:
aptの場合と異なり、yum/dnfでインストールした場合は、サービスが自動的に起動しないことがあります。手動で起動し、システムの起動時に自動起動するように設定します。“`bash
サービスの起動
$ sudo systemctl start redis
システム起動時の自動起動を有効化
$ sudo systemctl enable redis
“` -
Redisサービスの確認:
Redisサーバーが起動しているか確認します。bash
$ systemctl status redis出力の中に
Active: active (running)
と表示されていれば成功です。systemctl
コマンドの使い方はUbuntuの場合と同じです (stop
,restart
など)。
-
インストールされたファイルの場所 (参考):
- 実行ファイル:
/usr/bin/
または/usr/sbin/
など。 - 設定ファイル (
redis.conf
):/etc/redis.conf
に配置されることが多いです。(Ubuntuと場所が異なります) - データファイル:
/var/lib/redis/
など。
- 実行ファイル:
これで、CentOS/FedoraへのRedisインストールは完了です! 次の「インストールできたか確認しよう」のセクションに進んで、実際にRedisを使ってみましょう。
3.1.3 パッケージマネージャー利用のPros & Cons
- メリット (Pros):
- 簡単: コマンド一つでインストールできる。
- 依存関係の自動解決: 必要な他のソフトウェアも同時にインストールしてくれる。
- システム連携: サービス管理ツール (
systemd
) と連携して、自動起動や状態管理が容易。 - アップデートが容易: パッケージマネージャー経由で簡単にアップデートできる。
- デメリット (Cons):
- 最新版ではない場合がある: ディストリビューションのリポジトリで提供されているバージョンが、必ずしもRedisの最新リリース版ではないことがあります。安定版が提供されることが多いです。
- 設定ファイルが異なる場合がある: ディストリビューションによっては、デフォルトの設定ファイルの内容や場所が公式版と少し異なる場合があります。
ほとんどの初心者の方にとっては、パッケージマネージャーを使う方法が断然おすすめです。
3.2 方法2:ソースコードからコンパイルする
Redisの最新版を使いたい場合や、パッケージが利用できない環境、あるいはRedisのビルドプロセスを学びたい場合は、ソースコードから自分でコンパイルしてインストールする方法を選びます。この方法は、パッケージマネージャーを使うより手間がかかります。
3.2.1 準備:ビルドツールのインストール
ソースコードをコンパイルするためには、C言語のコンパイラや make
などのビルドツールが必要です。また、Redisのテストを実行するためにはTclというスクリプト言語が必要です。
-
Ubuntu/Debianの場合:
bash
$ sudo apt update
$ sudo apt install build-essential tcl
build-essential
パッケージには、gcc
(Cコンパイラ),g++
(C++コンパイラ),make
など、ソフトウェアをコンパイルするのに必要な基本的なツールが含まれています。 -
CentOS/RHEL/Fedoraの場合:
bash
$ sudo dnf groupinstall "Development Tools"
$ sudo dnf install tcl
(yumの場合は$ sudo yum groupinstall "Development Tools"
と$ sudo yum install tcl
)
Development Tools
グループには、コンパイラやmake
などが含まれています。
3.2.2 ソースコードのダウンロード
Redisの公式サイト (https://redis.io/download) から最新版のソースコードをダウンロードします。ターミナルから wget
コマンドを使うと便利です。
まず、公式サイトで最新の安定版のバージョン番号とダウンロードURLを確認します。例えば、2023年後半の時点では、安定版はRedis 7.2系でした。
“`bash
まずはダウンロード先となるディレクトリに移動(例としてホームディレクトリ)
$ cd ~
最新版のソースコードをダウンロード(URLは公式サイトで確認してください)
$ wget https://download.redis.io/releases/redis-7.2.4.tar.gz
``
7.2.4` の部分は、ダウンロードしたいバージョンに合わせて適宜変更してください。)
(
wget
コマンドは指定したURLからファイルをダウンロードします。.tar.gz
というのは、複数のファイルを一つにまとめて圧縮したアーカイブ形式です。
3.2.3 ソースコードの展開
ダウンロードしたアーカイブファイルを展開(解凍)します。
bash
$ tar xzf redis-7.2.4.tar.gz
(ファイル名はダウンロードしたものに合わせてください)
tar
コマンドはアーカイブファイルを操作するためのツールです。
* x
: 展開 (extract) する
* z
: gzip形式で圧縮されているファイルを扱う
* f
: ファイルを指定する
このコマンドを実行すると、現在のディレクトリに redis-7.2.4
のような名前の新しいディレクトリが作成され、その中にソースコードが展開されます。
3.2.4 ディレクトリの移動とコンパイル
展開されたソースコードのディレクトリに移動し、コンパイル(ビルド)を実行します。
“`bash
展開されたディレクトリに移動
$ cd redis-7.2.4
コンパイル実行
$ make
“`
make
コマンドは、ソースコードディレクトリ内の Makefile
というファイルに書かれた手順に従って、プログラムをコンパイルしたり、必要なファイルを作成したりします。この処理には数分かかることがあります。画面にたくさんのメッセージが表示されますが、途中でエラーが出て止まらなければ成功です。
3.2.5 テストの実行 (任意だが推奨)
コンパイルが成功したら、ビルドされたRedisが正しく動作するかテストを実行することを強く推奨します。
bash
$ make test
このコマンドは、ビルドツールのインストール時に含めたTclを使って、Redisの様々な機能をテストします。テストの実行にはしばらく時間がかかります。テストが全てパスすれば、ビルドは成功しており、Redisが正しく動作する可能性が高いです。もしテストが失敗する場合は、ビルド環境に問題があるか、何らかの互換性の問題があるかもしれません。初心者の方でテストに失敗した場合は、パッケージマネージャーでのインストールを検討するか、エラーメッセージをよく調べてみる必要があります。
3.2.6 インストール
コンパイルとテストが成功したら、システムにRedisをインストールします。通常、実行ファイルなどをシステムの標準的な場所にコピーします。管理者権限が必要です。
bash
$ sudo make install
このコマンドは、デフォルトでは $HOME/bin
, /usr/local/bin
, /usr/bin
のいずれかのディレクトリに、コンパイルされた redis-server
, redis-cli
, redis-sentinel
, redis-check-rdb
, redis-check-aof
といった実行可能ファイルをコピーします。/usr/local/bin
にインストールされることが多いです。このパスは、システムの $PATH
環境変数に含まれていることが多いため、ターミナルからコマンド名を入力するだけで実行できるようになります。
3.2.7 サーバーのセットアップと起動
make install
は実行ファイルをコピーするだけで、サービスの登録や設定ファイルの配置は自動では行われません。ソースコードからインストールした場合、Redisサーバーをサービスとして起動するには、手動での設定が必要です。
Redisのソースコードには、utils/install_server.sh
というヘルパースクリプトが付属しています。これを使うと、設定ファイルのコピー、起動スクリプトの作成、ログディレクトリ・データディレクトリの作成、initスクリプトやsystemdサービスファイルの登録などを自動で行ってくれます。初心者の方には、このスクリプトを使うのがおすすめです。
注意: このスクリプトは /etc/init.d/
や /etc/systemd/system/
にファイルを配置し、サービスユーザー (redis) を作成するなど、システム全体の設定を変更します。実行する前にスクリプトの内容を確認するか、どのような変更が行われるか理解しておくことが望ましいです。
スクリプトの実行(ソースコードのトップディレクトリから実行します):
“`bash
Redisソースコードのトップディレクトリにいることを確認 (例: ~/redis-7.2.4)
$ pwd
出力例: /home/your_user/redis-7.2.4
インストールスクリプトを実行
$ sudo ./utils/install_server.sh
“`
スクリプトを実行すると、ポート番号や設定ファイルのパス、ログファイルのパスなどを対話形式で聞かれます。特にこだわりがなければ、表示されるデフォルト値([6379]
など)のままEnterキーを押していくのが簡単です。
質問例:
* Please select the redis port for this instance: [6379]
-> Enter
* Please select the redis config file name [/etc/redis/6379.conf]
-> Enter
* Please select the redis log file name [/var/log/redis_6379.log]
-> Enter
* Please select the data directory for this instance [/var/lib/redis/6379]
-> Enter
* Please select the redis executable path [/usr/local/bin/redis-server]
-> Enter
(make installでインストールしたパスと一致しているか確認)
スクリプトが完了すると、Redisサーバーがサービスとして起動し、システムの起動時にも自動的に起動するよう設定されます。(systemd環境の場合は redis_6379
のようなサービス名で登録されます)
サービスの状態確認(スクリプトで登録されたサービス名を確認してください。デフォルトはポート番号付きです):
bash
$ systemctl status redis_6379
(もしスクリプトを使わずに手動でサービス登録した場合や、スクリプトのデフォルト設定が異なる場合は、サービス名が異なることがあります。)
出力に Active: active (running)
と表示されていれば成功です。
3.2.8 ソースコードコンパイルのPros & Cons
- メリット (Pros):
- 最新版を利用できる: リリースされたばかりの最新バージョンをすぐにインストールできます。
- カスタマイズ: 特定のビルドオプションを有効/無効にできます(初心者向けではありませんが)。
- ビルドプロセスの学習: ソフトウェアがどのようにコンパイル・インストールされるかの理解が深まります。
- デメリット (Cons):
- 手間がかかる: ビルドツールのインストール、ダウンロード、展開、コンパイル、テスト、手動セットアップと多くのステップが必要です。
- 依存関係の手動解決: ビルドに必要なツールを自分でインストールする必要があります。
- サービス管理の手動設定: サービスとして起動・管理するための設定を自分で(またはスクリプトで)行う必要があります。
- アップデートの手間: アップデートの際も、同様の手順を繰り返す必要があります。
初心者の方は、特別な理由がない限り、パッケージマネージャーを使ったインストール方法をおすすめします。
第4章:Redisのインストール手順 (macOS)
macOSでソフトウェアをインストールする際には、「Homebrew(ホームブルー)」というパッケージマネージャーを使うのが最も一般的で簡単です。RedisもHomebrewを使って簡単にインストールできます。
4.1 Homebrewのインストール (まだHomebrewを使っていない場合)
もし既にHomebrewをインストール済みであれば、このステップはスキップして「Redisのインストール」に進んでください。
Homebrewは、macOS上で様々なソフトウェアを簡単にインストール・管理できるツールです。まだインストールしていない場合は、公式サイト (https://brew.sh/index_ja) にアクセスし、表示されているコマンドをコピーして「ターミナル」アプリで実行します。
- ターミナルを開く: Spotlight検索 (Command + Space) で「ターミナル」と入力して開くか、「アプリケーション」->「ユーティリティ」フォルダから「ターミナル」を開きます。
-
Homebrewのインストールコマンドを実行:
公式サイトに表示されている以下の様なコマンドをコピーして、ターミナルに貼り付けてEnterキーを押します。bash
$ /bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"- このコマンドは、Homebrewのインストールスクリプトをダウンロードして実行しています。
curl -fsSL ...
の部分は、指定されたURLからファイルをダウンロードするコマンドです。$(...)
は、コマンドの実行結果を別のコマンドに渡しています。/bin/bash -c "..."
は、指定された文字列をBashシェルで実行しています。
-
インストールの進行:
実行すると、インストールされる内容が表示され、続行するか確認されます(Enterを押します)。また、管理者権限が必要な処理を行うため、macOSのログインパスワードの入力を求められます。パスワードを入力しても画面には何も表示されませんが、そのまま入力してEnterキーを押してください。Homebrewがファイルをダウンロード・展開し、システムにセットアップを行います。これには数分かかる場合があります。
Apple Silicon Macの場合: M1, M2などのApple Siliconチップを搭載したMacでは、Homebrewが
Rosetta 2
のインストールを提案する場合があります。これはIntel Mac用のソフトウェアをApple Siliconで動作させるための互換機能です。多くの場合、そのままインストールを許可して問題ありません。また、Homebrewのインストールパスが/usr/local
ではなく/opt/homebrew
となる場合があります。これは正常です。 -
環境変数の設定 (指示が出た場合):
インストールの最後に、「Next steps:」として、Homebrewを使うための環境変数設定コマンドが表示されることがあります。例えば、Apple Silicon Macの場合は以下のような指示が出ます。==> Next steps:
- Run these two commands in your terminal to add Homebrew to your PATH:
echo 'eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"' >> /Users/your_user/.zprofile
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"これらの指示に従って、表示されたコマンドをターミナルで実行してください。(パスやファイル名
~/.zprofile
は使用しているシェルによって異なる場合がありますが、表示されたものをそのまま実行すればOKです。)これにより、次回以降ターミナルを開いた際にbrew
コマンドが使えるようになります。 -
Homebrewの確認:
インストールが完了したら、以下のコマンドを実行してHomebrewが正しくインストールされ、コマンドが使えるか確認します。bash
$ brew doctor「Your system is ready to brew.」と表示されれば成功です。(Warningが表示されることもありますが、重要なものでなければ問題ありません。)
4.2 Redisのインストール
Homebrewが使えるようになったら、Redisのインストールは非常に簡単です。
bash
$ brew install redis
このコマンド一つで、HomebrewがRedisの最新安定版をダウンロードし、コンパイル(必要であれば)してインストールしてくれます。依存関係にある他のソフトウェアも自動的にインストールされます。
4.3 Redisサーバーの起動と停止
Homebrewでインストールしたアプリケーションは、多くの場合 brew services
コマンドを使ってサービスのとして管理できます。
-
Redisサーバーの起動:
bash
$ brew services start redisこのコマンドを実行すると、バックグラウンドでRedisサーバーが起動します。macOSにログインしたときに自動的に起動するようにも設定されます。
-
Redisサーバーの状態確認:
bash
$ brew services listインストールされているサービスの一覧が表示され、
redis
の行にstarted
と表示されていれば、サーバーは正常に起動しています。 -
Redisサーバーの停止:
bash
$ brew services stop redis -
Redisサーバーの再起動:
bash
$ brew services restart redis -
システムの自動起動を無効にする:
bash
$ brew services disable redis(再度有効にするには
enable
を使います。)
4.4 インストールされたファイルの場所 (参考):
Homebrewは、インストールされた各アプリケーションのバージョンごとのファイルを /usr/local/Cellar/redis/バージョン番号
または /opt/homebrew/Cellar/redis/バージョン番号
(Apple Siliconの場合) ディレクトリに配置し、実行ファイルへのシンボリックリンクを /usr/local/bin
または /opt/homebrew/bin
に作成します。
- 実行ファイル:
$ brew --prefix redis
/bin/redis-server など。多くの場合、redis-server
やredis-cli
コマンドは$PATH
が通っているため、ターミナルから直接実行できます。 - 設定ファイル (
redis.conf
):$ brew --prefix redis
/etc/redis.conf に配置されます。brew --prefix redis
はHomebrewがRedisをインストールしたルートディレクトリのパスを表示するコマンドです。
これで、macOSへのRedisインストールは完了です! 次の「インストールできたか確認しよう」のセクションに進んで、実際にRedisを使ってみましょう。
第5章:Redisのインストール手順 (Windows)
Windows向けのRedisは、公式には提供されていません(公式開発チームはWindowsを主要な開発・テスト環境としていません)。しかし、WindowsでRedisを利用したいというニーズは多く、いくつかの方法が存在します。
最も推奨される、現代的なWindowsでのRedis利用方法として、Windows Subsystem for Linux (WSL) を使う方法があります。 WSLを使えば、Windows上でほぼネイティブなLinux環境を実行でき、その中でLinux版のRedisをインストール・利用できます。これは最も安定しており、最新版を利用しやすい方法です。
それ以外の方法として、Microsoftが提供していた非公式なビルドや、Chocolateyなどのパッケージマネージャーを使う方法がありますが、これらは推奨されません。
この記事では、WSL2を使った方法を詳細に解説し、これがWindowsユーザーにとっての最善の方法であることを強調します。
5.1 方法1:Windows Subsystem for Linux 2 (WSL2) を使う (強く推奨)
WSL2は、Windows上でLinuxバイナリ実行ファイルを実行できる互換レイヤーです。Windows 10 バージョン 2004以降 (ビルド 19041以降) または Windows 11 で利用できます。
WSL2をセットアップすれば、あとはそのWSL2上のLinux環境内で、先ほど解説したLinux版Redisのインストール手順(特にパッケージマネージャーを使う方法)をそのまま実行するだけです。
5.1.1 WSL2のインストールとセットアップ
WSLを初めて使う場合は、まずWSL自体のインストールと設定が必要です。Windows 10 バージョン 2004以降または Windows 11 では、非常に簡単なコマンドでインストールできます。
-
Windows Terminal を開く (推奨): Microsoft Storeから「Windows Terminal」をインストールして使うのがおすすめです。管理者権限で開きます。検索バーに「Windows Terminal」と入力し、右クリックして「管理者として実行」を選択します。
(管理者権限でのコマンドプロンプトやPowerShellでも可能ですが、Windows Terminalが便利です。) -
WSLのインストール:
管理者権限のターミナルで、以下のコマンドを実行します。powershell
wsl --installこのコマンドは、WSLを有効化し、WSL2をデフォルトに設定し、推奨のLinuxディストリビューション(通常はUbuntu)をインストールする処理を自動で行います。
- 必要なWindows機能(仮想マシン プラットフォーム、Linux 用 Windows サブシステム)が有効化されます。
- WSLカーネルがダウンロードされます。
- UbuntuなどのLinuxディストリビューションのイメージがダウンロード・インストールされます。
処理が完了したら、PCを再起動する必要があります。
-
Linuxディストリビューションの初期設定:
PCを再起動すると、インストールされたLinuxディストリビューション(例:Ubuntu)が自動的に起動し、ターミナルが開きます。そこで、新しいLinuxユーザーアカウントのユーザー名とパスワードを設定するよう求められます。これはWindowsのユーザー名・パスワードとは別のものです。好きなユーザー名とパスワードを設定してください。パスワードは入力時に画面に表示されません。
これで、WSL2のセットアップは完了です。Windowsの中に、RedisをインストールできるLinux環境が用意されました。
-
WSL2 Linux環境を開く:
今後WSL2環境を使うには、Windows Terminalを開いて新しいタブを作成する際に、インストールしたLinuxディストリビューション(例:Ubuntu)を選択するか、Windowsの検索バーに「Ubuntu」などと入力して起動します。あるいは、コマンドプロンプトやPowerShellでwsl
と入力してもデフォルトのWSL環境に入れます。開いたターミナルは、見た目はWindowsのものと似ていますが、実際にはLinuxのコマンド(
ls
,cd
,apt
,systemctl
など)が実行できるLinux環境です。
5.1.2 WSL2上でRedisをインストール
WSL2のLinux環境が開けたら、あとは「第3章:Redisのインストール手順 (Linux)」のパッケージマネージャーを使う方法(3.1節)と全く同じ手順でRedisをインストールします。
例として、Ubuntuをインストールした場合の手順を再掲します。
-
パッケージリストの更新:
WSL2のターミナルで実行します。bash
$ sudo apt update -
Redisサーバーのインストール:
bash
$ sudo apt install redis-server
確認が表示されたらY
で進みます。 -
Redisサービスの確認:
bash
$ systemctl status redis-server
Active: active (running)
と表示されれば成功です。
これで、WSL2を介してWindows上でRedisサーバーが起動しました!
5.1.3 Windowsアプリケーションからの接続
WSL2上で起動したRedisサーバーは、通常、Windows側のアプリケーションから localhost
または 127.0.0.1
というアドレスと、デフォルトポート 6379
でアクセスできます。Windows側のWebブラウザや開発ツールから、WSL2上のRedisにシームレスに接続できるはずです。
5.1.4 WSL2を使うPros & Cons
- メリット (Pros):
- 安定性・互換性: 公式なLinux版Redisをほぼそのまま実行できるため、最も安定しており、最新機能やパフォーマンスも期待できます。
- 開発環境との整合性: 多くのサーバーサイド開発がLinux環境で行われるため、WSL2を使うことで開発環境と本番環境の差異を減らせます。
- 簡単なインストール: WSL2自体のインストールも簡単になり、その後のRedisインストールはLinuxの標準的な方法を使えます。
- 他のLinuxツールも利用可能: Redisだけでなく、他の様々なLinuxツールや開発環境をWindows上で利用できるようになります。
- デメリット (Cons):
- WSLのセットアップが必要: Redis以前にWSL自体のインストールと設定が必要です。
- メモリ消費: Linuxカーネルが動作するため、ある程度のメモリを消費します。
- ファイルシステムの扱い: Windows側のファイルシステムとLinux側のファイルシステムの扱いには多少の注意が必要です(WSLは両方にアクセスできます)。
Windowsユーザーで開発や学習のためにRedisを使いたい場合、WSL2は間違いなく最も推奨される方法です。
5.2 方法2:非公式なWindowsポート (推奨しない)
かつてMicrosoft Open Technologiesによって提供されていたRedisのWindows向け非公式ポートが存在します。これはGitHubで公開されており、古いバージョンですがバイナリファイルを入手することも可能です。
- リポジトリ: https://github.com/microsoftarchive/redis/releases
この方法は、WSLが使えないような古いWindows環境や、非常に限定的な目的で手軽に試したい場合などに使われることがありますが、以下の理由から推奨しません。
- 公式サポートがない: Redis公式の開発チームはWindows版をサポートしていません。
- バージョンが古い: 提供されているバイナリは最新版に比べてかなり古いバージョンです。
- 安定性・機能: 最新版に比べて安定性や機能が劣る可能性があります。
- セキュリティ: 最新のセキュリティアップデートが適用されていない可能性があります。
- サービス管理が面倒: Windowsサービスとして登録するのに別途ツールや手順が必要になる場合があります。単にコマンドプロンプトから実行ファイル (
redis-server.exe
) を起動することもできますが、ターミナルを閉じるとサーバーも停止します。
初心者の方は、この方法ではなく、WSL2を使うか、必要であればLinuxやmacOS環境を用意することを強くお勧めします。
どうしてもこの方法を試したい場合は、GitHubのリリースページから最新の.zip
ファイルをダウンロードし、任意のフォルダに展開してください。展開したフォルダ内の redis-server.exe
を実行すればサーバーが起動し、redis-cli.exe
を実行すればクライアントとして接続できます。
5.3 方法3:Chocolateyを使う (非推奨だが手軽)
Windows向けのパッケージマネージャーであるChocolatey (https://chocolatey.org/) を使う方法もあります。
- Chocolateyのインストール: 公式サイトの手順に従ってPowerShellでChocolateyをインストールします。
- Redisのインストール: 管理者権限のPowerShellまたはCMDで以下のコマンドを実行します。
powershell
choco install redis
この方法でインストールされるRedisは、多くの場合前述のMicrosoftによる非公式ポートです。したがって、これも最新版ではなく、公式サポートがないという欠点があります。手軽にインストールできるというメリットはありますが、WSL2の方が長期的に見て推奨されます。
第6章:インストールできたか確認しよう
Redisサーバーのインストールが完了したら、それが正しく動作しているかを確認することが重要です。Redisには redis-cli
というコマンドラインクライアントが付属しており、これを使って簡単に確認できます。
redis-cli
は、「Redis Command Line Interface」の略で、Redisサーバーに接続してコマンドを実行するためのツールです。
インストール方法に応じて、以下のいずれかの方法でターミナルを開きます。
- Linux (パッケージマネージャー or ソースコード): 通常のターミナルを開きます。
- macOS (Homebrew): ターミナルを開きます。
- Windows (WSL2): WSL2のLinux環境のターミナルを開きます。(Windows側のCMDやPowerShellではないので注意!)
ターミナルで、以下のコマンドを実行してください。
bash
$ redis-cli
このコマンドは、デフォルトのポート (6379
) で起動している localhost
上のRedisサーバーに接続しようとします。
接続に成功すると、プロンプトが 127.0.0.1:6379>
のように変わります。これは、Redisサーバーに接続されている状態を示しています。
次に、Redisサーバーが応答するか確認する最も簡単なコマンド PING
を実行します。
redis-cli
127.0.0.1:6379> PING
そしてEnterキーを押します。
サーバーが正常に動作していれば、以下のような応答が表示されます。
PONG
PING
コマンドに対して PONG
と応答があれば、Redisサーバーはクライアントからの接続を受け付け、正常に動作していると判断できます! おめでとうございます、Redisのインストールは成功です!
接続を終了するには、QUIT
コマンドを実行するか、Ctrl+C を押します。
redis-cli
127.0.0.1:6379> QUIT
プロンプトが通常のターミナルに戻ります。
6.1 トラブルシューティング:接続できない場合
もし redis-cli
コマンドが見つからない場合や、サーバーに接続できない場合は、いくつかの原因が考えられます。
-
redis-cli: command not found
と表示される:- Redisが正しくインストールされていない可能性があります。インストール手順を再度確認してください。
- 特にソースコードからインストールした場合、
make install
が正しく行われなかったか、Redisの実行ファイルがあるディレクトリ (/usr/local/bin
など) がシステム$PATH
環境変数に含まれていない可能性があります。sudo make install
が成功したか確認し、必要であれば環境変数PATHを設定するか、Redisの実行ファイルがあるフルパスを指定して実行してみてください(例:/usr/local/bin/redis-cli
). - WindowsでWSL2を使っている場合、WSLのターミナルではなく、Windows側のCMDやPowerShellで実行しているかもしれません。WSLのターミナルで実行してください。
-
Could not connect to Redis at 127.0.0.1:6379: Connection refused
と表示される:- Redisサーバーが起動していません。 Redisサーバーを起動する必要があります。
- Linux (
apt
/yum
/dnf
):$ sudo systemctl start redis-server
または$ sudo systemctl start redis
を実行してください。 - macOS (Homebrew):
$ brew services start redis
を実行してください。 - Windows (WSL2): WSL2のLinuxターミナルで
$ sudo systemctl start redis-server
を実行してください。 - Linux (ソースコード +
install_server.sh
):$ sudo systemctl start redis_6379
(または設定したサービス名) を実行してください。 - Linux (ソースコード + 手動): 自分で作成した起動スクリプトを実行するか、
redis-server
コマンドを適切な設定ファイルと共実行してサーバーを起動してください。
- Linux (
- Redisサーバーが別のポートで起動している: デフォルト以外のポートでRedisを起動している場合は、
redis-cli
接続時にポートを指定する必要があります。例:redis-cli -p 6380
- ファイアウォールが接続をブロックしている: システムのファイアウォールがポート6379への接続をブロックしている可能性があります。特にLinuxサーバーでよくある問題です。ローカルからの接続 (
127.0.0.1
) であればファイアウォールの影響を受けにくいですが、もし別のマシンから接続しようとしている場合や、ファイアウォール設定が厳しい場合は確認が必要です。- Linux (ufw – Ubuntuなど):
$ sudo ufw status
で状態を確認し、ポート6379/tcpを許可します ($ sudo ufw allow 6379/tcp
)。インターネット全体から公開するのは危険です。 信頼できるIPアドレスやネットワークからのアクセスのみを許可するように設定を検討してください。 - Linux (firewalld – CentOS/Fedoraなど):
$ sudo firewall-cmd --state
で状態を確認し、ポート6379/tcpを許可します ($ sudo firewall-cmd --add-port=6379/tcp --permanent
次に$ sudo firewall-cmd --reload
)。これも公開範囲には注意が必要です。 - Windows Defender Firewall: 基本的にはローカルからの接続は許可されますが、特定のルールでブロックされていないか確認が必要な場合があります。WSL2を使っている場合は、WSL2のネットワーク設定も関係することがあります。
- Linux (ufw – Ubuntuなど):
- Redisサーバーが起動していません。 Redisサーバーを起動する必要があります。
これらのトラブルシューティングを確認しても解決しない場合は、Redisサーバーのログファイルを確認すると、起動失敗の原因やエラーメッセージが見つかることがあります。ログファイルの場所は、インストール方法や設定によって異なります (/var/log/redis/
や /var/log/redis_6379.log
など)。
6.2 ちょっとだけ使ってみよう
せっかくRedisに接続できたので、基本的なコマンドを使ってデータを保存・取得してみましょう。
-
redis-cli
で接続:
bash
$ redis-cli
プロンプトが127.0.0.1:6379>
に変わるはずです。 -
文字列を保存 (SET コマンド):
SET キー名 値
の形式で使います。redis-cli
127.0.0.1:6379> SET mykey "Hello, Redis!"成功すると
OK
と応答があります。 -
文字列を取得 (GET コマンド):
GET キー名
の形式で使います。redis-cli
127.0.0.1:6379> GET mykey保存した値が応答されます。
"Hello, Redis!"
-
キーが存在するか確認 (EXISTS コマンド):
EXISTS キー名
の形式で使います。存在すれば1
、存在しなければ0
が返ります。redis-cli
127.0.0.1:6379> EXISTS mykey(integer) 1
redis-cli
127.0.0.1:6379> EXISTS anotherkey(integer) 0
-
キーを削除 (DEL コマンド):
DEL キー名 [キー名...]
の形式で使います。削除したキーの数が返ります。redis-cli
127.0.0.1:6379> DEL mykey(integer) 1
-
再度取得を試みる:
削除したので、もう取得できません。redis-cli
127.0.0.1:6379> GET mykey何も値がない場合は
(nil)
と表示されます。(nil)
-
接続終了:
redis-cli
127.0.0.1:6379> QUIT
これで、基本的なRedisの操作(接続、データの保存・取得・削除)が体験できました。簡単でしょう?
第7章:インストール後の設定と次のステップ
Redisのインストールと基本的な動作確認が完了したら、次に進むべきステップがいくつかあります。特に重要なのは、セキュリティと基本的な設定の理解です。
7.1 設定ファイルの確認と変更 (redis.conf
)
Redisサーバーの動作は、設定ファイルによって細かく制御できます。設定ファイルの場所はインストール方法によって異なります。
- Linux (apt):
/etc/redis/redis.conf
- Linux (yum/dnf):
/etc/redis.conf
- macOS (Homebrew):
$ brew --prefix redis
/etc/redis.conf - Linux (ソースコード +
install_server.sh
):/etc/redis/6379.conf
(または設定したポート番号)
このファイルはテキストファイルなので、nano
や vim
といったテキストエディタを使って編集できます。例えばUbuntuで nano
を使うなら、管理者権限で以下のように開きます。
bash
$ sudo nano /etc/redis/redis.conf
(nano
の使い方が分からない場合は「nano エディタ 使い方」などで検索してみてください。基本的には矢印キーで移動し、Ctrl+Xで終了、保存するか尋ねられたらY、ファイル名を聞かれたらEnterです。)
設定ファイルには非常に多くの項目がありますが、初心者の方がまず知っておくべき重要な設定項目をいくつか紹介します。
bind 127.0.0.1
:
Redisサーバーがどのネットワークインターフェースからの接続を受け付けるかを指定します。デフォルトで127.0.0.1
(ローカルホスト) にバインドされています。これは非常に重要です。127.0.0.1
にバインドされているということは、そのRedisサーバーが動作しているマシンからしか接続できないという意味です。
セキュリティのため、初めてインストールした際は必ずbind 127.0.0.1
(またはbind 127.0.0.1 ::1
IPv6含む) となっていることを確認してください。 もしbind 0.0.0.0
となっていたり、この行がコメントアウト (# で始まる行はコメントです) されていたりすると、そのサーバーがインターネットに繋がっている場合、外部から誰でも接続できてしまう状態になり非常に危険です! 外部から接続する必要がある場合は、信頼できる特定のIPアドレスのみを許可する設定にするか、VPNなどを利用すべきです。protected-mode yes
:
この設定がyes
になっていると、外部からの接続を許可する場合でも、パスワード認証が設定されていないなどの安全でない状態では接続を拒否します。デフォルトでyes
になっています。これはセキュリティ上非常に重要なので、yes
のままにしておくべきです。port 6379
:
Redisサーバーが待ち受けるポート番号です。デフォルトは6379です。必要に応じて変更できますが、クライアントから接続する際に正しいポート番号を指定する必要があります。requirepass foobared
:
Redisサーバーに接続する際にパスワード認証を要求するかを設定します。デフォルトではコメントアウトされており、パスワードなしで接続できます。本番環境や外部からの接続を受け付ける可能性がある環境では、必ずパスワードを設定すべきです。# requirepass foobared
の行頭の#
を削除し、foobared
の部分を安全なパスワードに変更してください。パスワードを設定した場合、redis-cli
から接続する際や、プログラムから接続する際にパスワードを渡す必要があります。redis-cli
からは接続後AUTH your_password
コマンドで認証するか、redis-cli -a your_password
とパスワードを引数に指定して起動します。daemonize yes
:
Redisサーバーをバックグラウンドプロセスとして実行するかどうかを指定します。パッケージマネージャーやbrew services
でインストールした場合、通常はサービスとして管理されるため、この設定は不要または無視されます。手動でredis-server
コマンドを実行する際にバックグラウンドで動かしたい場合にyes
に設定します。logfile "" /path/to/redis.log
:
ログファイルの出力先を指定します。空文字列 (""
) の場合は標準出力にログが出力されます。ファイルパスを指定すると、そこにログが記録されます。トラブルシューティングの際に重要な情報が含まれます。save <seconds> <changes>
:
データの永続化(メモリ上のデータをディスクに保存すること)に関する設定です。RDB (Redis Database) 形式で、指定された時間 (seconds
) の間に指定された回数 (changes
) 以上のキーへの変更があった場合に、自動的にデータをディスクに保存します。例えばsave 900 1
は「900秒間 (15分) の間に1回以上の変更があれば保存」という意味です。appendonly no
:
AOF (Append Only File) 形式での永続化を有効にするかどうかを指定します。AOFを有効にすると、Redisが受け付けた全ての書き込みコマンドがファイルに追記されていきます。RDBよりも細かい粒度でデータを保存できます。デフォルトはno
で無効になっています。有効にするにはappendonly yes
に変更します。dir ./
:
RDBファイルやAOFファイルなどの作業ディレクトリを指定します。デフォルトはRedisサーバーを起動したディレクトリですが、サービスとして起動する場合は設定ファイルに指定されたパスが使われます (/var/lib/redis/
など)。
設定ファイルを変更した場合は、Redisサーバーを再起動するのを忘れないでください。 sudo systemctl restart redis-server
(Linux) や brew services restart redis
(macOS) といったコマンドを使います。
7.2 セキュリティについて (改めて強調)
先ほど bind
や requirepass
の設定で触れましたが、Redisのセキュリティは非常に重要です。特に、外部ネットワークにRedisサーバーを公開する場合は、十分な対策が必須です。
- ファイアウォール: Redisが使用するポート (デフォルト6379) へのアクセスは、必要最小限のIPアドレスやネットワークからのみに制限してください。インターネット全体から誰でも接続できるようにするのは絶対に避けてください。
- パスワード認証 (
requirepass
): パスワードを設定し、接続時には必ず認証を行うようにします。ただし、パスワード認証だけでは十分ではありません。パスワードが漏洩した場合や、パスワードなしで接続できる脆弱性が発見された場合に無防衛になってしまいます。 - ネットワーク分離: 可能であれば、Redisサーバーは外部ネットワークから完全に隔離されたプライベートネットワーク内に配置するのが最も安全です。
- TLS/SSLによる暗号化: Redis自体は標準でTLSをサポートしていませんが、
stunnel
のような外部ツールを利用して、クライアント・サーバー間の通信を暗号化することを検討してください。
今回は個人PCへのインストールなので、多くの場合 bind 127.0.0.1
のままで十分安全です。しかし、もしサーバーにインストールして公開する可能性がある場合は、これらのセキュリティ対策を必ず実施してください。
7.3 これからRedisを学ぶには
インストールが完了し、基本的な使い方も少し試してみたら、いよいよ本格的にRedisを活用する方法を学んでいきましょう。
- 公式ドキュメント: Redisの公式ウェブサイト (https://redis.io/) には、全てのコマンドリファレンスやデータ構造、高度な機能についての詳細なドキュメントがあります。最初は難しく感じるかもしれませんが、困ったときや新しい機能を学びたいときに頼りになります。
- Redis University: Redisの開発元であるRedis Ltd.が提供する無料のオンライン学習プラットフォームです。動画講義形式でRedisの基礎から応用まで体系的に学べます。(多くは英語ですが、非常に質が高いです。)
- チュートリアル記事: オンライン上には、Redisの様々な使い方(キャッシュとしての利用、メッセージキューの実装など)に関するチュートリアル記事がたくさん公開されています。「Redis キャッシュ Python」「Redis Pub/Sub Node.js」のように、使いたいプログラミング言語や用途と組み合わせて検索してみましょう。
- クライアントライブラリ: 実際にアプリケーションからRedisを利用するには、プログラミング言語ごとの「Redisクライアントライブラリ」を使います。Python (
redis-py
), Node.js (ioredis
), Java (Jedis
,Lettuce
), Ruby (redis-rb
), PHP (phpredis
,predis
) など、主要な言語には高品質なライブラリが用意されています。それぞれの言語でのRedisクライアントの使い方を学びましょう。
インストールは、Redisの世界への最初の一歩です。ここから様々なデータ構造を使ってみたり、簡単なアプリケーションを作ってキャッシュとしてRedisを組み込んでみたりすることで、Redisの強力さや便利さを実感できるはずです。
第8章:まとめ
この記事では、初心者の方に向けて、Redisが何であるかという基本的な説明から始め、主要なオペレーティングシステム(Linux、macOS、Windows)それぞれでの具体的なダウンロード・インストール手順を、詳細な解説と共に進めてきました。
- Redisは超高速なインメモリデータストアであり、様々なデータ構造を扱えるため、キャッシュ、セッションストア、メッセージキューなど幅広い用途で使われています。
- Linuxでは、パッケージマネージャーを使う方法 (
apt
,yum
/dnf
) が最も簡単で推奨されます。ソースコードからのコンパイルも可能ですが、手間がかかります。 - macOSでは、Homebrewパッケージマネージャーを使う方法が最も手軽です。
- Windowsでは、WSL2を使ってLinux環境上でRedisをインストールする方法が最も推奨されます。非公式なポートは推奨しません。
- インストール後は
redis-cli
を使ってPING
コマンドを実行し、サーバーが正しく起動しているか確認しましょう。 - 設定ファイル (
redis.conf
) を確認し、特にbind
やrequirepass
の設定に注意して、セキュリティを確保することが非常に重要です。
Redisのインストールは、CLIを使った作業やサービス管理など、サーバーサイドの基本的なスキルを身につける良い機会にもなります。最初は難しく感じる部分もあったかもしれませんが、この記事で解説した手順を一つずつ試していけば、きっと乗り越えられるはずです。
インストールという最初のステップをクリアした皆さんは、もうRedisを使う準備ができています! これから、Redisの豊富な機能や高速なパフォーマンスを活かして、様々なことに挑戦してみてください。もし途中で分からないことが出てきても、公式ドキュメントやオンラインコミュニティを活用すれば、多くの情報が見つかります。
Redisマスターへの道は始まったばかりです。このガイドが、皆さんのRedis学習の助けとなれば幸いです。
頑張ってください! 応援しています!