10分でわかるPHPの基礎|サンプルコードで学ぶ基本構文
WebサイトやWebアプリケーション開発の世界に足を踏み入れたいと考えているあなたへ。数あるプログラミング言語の中で、特に初心者におすすめしたいのが「PHP」です。
この記事では、「プログラミングは初めて」という方や、「他の言語は少し触ったことがあるけど、PHPは初めて」という方に向けて、PHPの基礎を約10分で掴めるように、豊富なサンプルコードと共に徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、PHPの基本的な考え方と書き方をマスターし、簡単なプログラムを自分で書けるようになっているはずです。
1. はじめに:PHPとは何か?
PHPは、Web開発に特化したサーバーサイドのスクリプト言語です。サーバーサイドとは、Webサーバー側でプログラムが実行されることを意味します。
あなたがブラウザでWebサイトを見るとき、裏側では次のようなことが起こっています。
- あなたのブラウザが、Webサーバーに「このページを見せて!」とリクエストを送る。
- サーバー側でPHPプログラムが実行される。例えば、「データベースから最新のブログ記事を取得する」「ユーザーのログイン状態をチェックする」といった処理が行われる。
- PHPは処理結果を基に、動的にHTML(Webページの骨格となる言語)を生成する。
- 生成されたHTMLがあなたのブラウザに送られ、ページとして表示される。
このように、PHPはユーザーのリクエストに応じて内容が変わる「動的なWebページ」を作成するための強力なツールです。
なぜ今、PHPを学ぶのか?
- 圧倒的なシェア:全世界のWebサイトの約8割近くでPHPが使われていると言われています。特に、ブログや企業のWebサイト制作で絶大な人気を誇るCMS(コンテンツ管理システム)であるWordPressは、PHPで構築されています。WordPressのカスタマイズにはPHPの知識が不可欠です。
- 学びやすさ:PHPは、プログラミング初心者でも比較的理解しやすい、シンプルで直感的な文法を持っています。
- 豊富な情報:歴史が長く、利用者が多いため、学習資料やドキュメント、コミュニティでの情報交換が非常に活発です。エラーで困っても、検索すれば大抵の解決策が見つかります。
- 求人数の多さ:Web開発の現場で広く使われているため、PHPスキルを持つエンジニアの需要は常に高い水準にあります。
この記事を足がかりに、あなたもWeb開発の世界への第一歩を踏み出しましょう。
2. PHPを動かすための準備
プログラミングを学ぶ最良の方法は、実際にコードを書いて動かしてみることです。PHPを動かすには「実行環境」が必要ですが、難しい設定は後回しにして、まずは手軽に試せる方法を使いましょう。
おすすめ:オンライン実行環境
Webブラウザ上でPHPコードを書いて、その場で実行結果を確認できるサービスです。PCに何もインストールする必要がなく、すぐに始められます。
この記事のサンプルコードは、上記のどのサービスでもコピー&ペーストして実行できます。ぜひ、ご自身の手でコードを動かしながら読み進めてください。
(将来的には、XAMPPやMAMPといったツールを使って、ご自身のPC内に本格的な開発環境を構築することを目指しましょう。)
3. PHPの基本構文
ここから、PHPプログラミングの具体的なルールを学んでいきます。
3.1. PHPコードの書き方:お約束のルール
PHPコードを書くには、いくつかの基本的な「お約束」があります。
-
開始タグと終了タグ
PHPのコードは、必ず<?php
で始まり、?>
で終わるブロックの中に記述します。コンピュータに「ここからここまでがPHPのコードだよ」と教えるための目印です。php
<?php
// この中にPHPのコードを書きます
?>
※ファイルの最後がPHPコードで終わる場合、終了タグ?>
は省略するのが一般的です。これは、予期せぬ空白が出力されるのを防ぐためです。 -
ファイル拡張子
PHPのコードが含まれるファイルは、ファイル名の末尾に.php
という拡張子をつけます(例:index.php
)。 -
文の終わりはセミコロン
PHPでは、一つの命令文(ステートメント)の終わりには、必ずセミコロン;
をつけます。これは、文章の句点「。」のようなものです。これを忘れるとエラーになるので注意しましょう。php
<?php
echo "こんにちは"; // ← セミコロンが必要
echo "PHPの世界へようこそ"; // ← セミコロンが必要
?> -
コメントの書き方
プログラムの中に、処理内容を説明するメモ書き(コメント)を残すことができます。コメントはプログラムの実行には影響しません。“`php
<?php
// これは一行コメントです。この行は無視されます。これも一行コメントです。
/
これは複数行コメントです。
コードの説明などを
複数行にわたって書くことができます。
/echo “コメントは実行されません”; // もちろん、行の途中からでもOKです。
?>
“`
最初は面倒に感じるかもしれませんが、後で自分や他の人がコードを見返したときに非常に役立つので、コメントを書く習慣をつけましょう。
3.2. 画面への出力:echo
PHPで最も基本となる操作が、画面に文字や数値を表示することです。そのためには echo
という命令を使います。
“`php
見出しです
“;
echo “
これはパラグラフです。
“;
// 数字も出力できる
echo 123;
?>
“`
echo
は、後ろに続く文字列や数値をそのまま出力します。文字列の場合は、シングルクォート ' '
またはダブルクォート " "
で囲むのがルールです。
3.3. 変数:データを入れる箱
プログラミングでは、数値や文字列などのデータを一時的に保存しておくために変数を使います。変数は、データに名前をつけて管理するための「箱」のようなものだと考えてください。
-
変数の宣言と代入
PHPでは、変数はドルマーク$
の後に変数名を続けて書くことで宣言します。変数にデータを入れる(代入する)には、イコール=
を使います。“`php
<?php
// $name という名前の変数を作成し、”山田太郎” という文字列を代入する
$name = “山田太郎”;// $age という名前の変数を作成し、30 という数値を代入する
$age = 30;// 変数の中身を echo で出力する
echo $name; // “山田太郎” が出力される
echo “
“; // HTMLの改行タグを出力
echo $age; // 30 が出力される
?>
“` -
変数の命名規則
- 必ず
$
で始める。 - 使える文字は、英数字とアンダースコア
_
のみ。 - 最初の文字に数字は使えない(
$1name
はNG)。 - 大文字と小文字は区別される(
$name
と$Name
は別の変数)。
- 必ず
-
変数の利用
変数の便利な点は、一度データを入れておけば、後から何度でも再利用できることです。また、中身を書き換えることもできます。“`php
<?php
// 自己紹介文を作成する
$name = “鈴木一郎”;
$age = 25;
$job = “プログラマー”;// 変数と文字列を連結して出力する
// PHPでは、ドット . を使って文字列や変数を連結できる
echo “私の名前は” . $name . “です。”;
echo “年齢は” . $age . “歳で、”;
echo “職業は” . $job . “です。”;echo “
“; // 水平線
// 変数の中身を更新する
$age = 26; // 1年経った
echo “来年には” . $age . “歳になります。”;
?>
実行結果:
私の名前は鈴木一郎です。年齢は25歳で、職業はプログラマーです。
来年には26歳になります。
“`
3.4. データ型:データの種類
変数には、文字列や数値など、さまざまな種類のデータを入れることができます。このデータの種類のことをデータ型と呼びます。PHPは、変数に代入された値から自動的にデータ型を判断してくれる「動的型付け言語」ですが、主なデータ型を理解しておくことは非常に重要です。
スカラー型(基本的なデータ型)
-
文字列 (String)
文字の集まりです。シングルクォート' '
またはダブルクォート" "
で囲みます。
重要:シングルクォートとダブルクォートの違い- ダブルクォート
"
は、中に書かれた変数をその中身に展開(置き換え)します。 - シングルクォート
'
は、中に書かれたものをそのまま文字列として扱います。
“`php
<?php
$name = “佐藤”;// ダブルクォートの場合:$name が “佐藤” に置き換えられる
echo “こんにちは、$name さん!”; // “こんにちは、佐藤さん!” と出力されるecho “
“;// シングルクォートの場合:$name はただの文字列として扱われる
echo ‘こんにちは、$name さん!’; // “こんにちは、$name さん!” とそのまま出力される
?>
“`
変数展開ができるため、基本的にはダブルクォートを使う方が便利な場面が多いです。 - ダブルクォート
-
整数 (Integer)
小数点のない数値です(例:10
,-5
,0
)。php
<?php
$price = 1000;
$quantity = 3;
$total = $price * $quantity; // 計算もできる
echo "合計金額は" . $total . "円です。"; // "合計金額は3000円です。"
?> -
浮動小数点数 (Float / Double)
小数点のある数値です(例:3.14
,-0.5
)。php
<?php
$pi = 3.14;
$tax_rate = 1.1;
echo "消費税込みの価格:" . (1000 * $tax_rate); // "消費税込みの価格:1100"
?> -
論理値 (Boolean)
真(正しい)か偽(間違い)かの2つの状態だけを表すデータ型です。true
(真)とfalse
(偽)のどちらかの値を持ちます。主に、後述する条件分岐で使われます。php
<?php
$is_logged_in = true; // ログインしている状態
$is_admin = false; // 管理者ではない状態
?>
複合型
-
配列 (Array)
複数の値を一つの変数にまとめて格納するためのデータ型です。非常によく使われる、PHPで最も重要なデータ型の一つです。配列には、大きく分けて2種類あります。-
インデックス配列(添字配列)
各データに0
から始まる通し番号(インデックス/添字)が自動的に割り振られます。“`php
<?php
// 週末の予定を配列に入れる
$weekend_plans = [“映画鑑賞”, “ショッピング”, “プログラミングの勉強”];// 配列の要素にアクセスする
// []の中にインデックス番号を指定する
echo $weekend_plans[0]; // “映画鑑賞”
echo “
“;
echo $weekend_plans[1]; // “ショッピング”
echo “
“;// 配列の中身をまとめて確認したいときは print_r() や var_dump() を使う
// print_r() は人間が読みやすい形式で表示
echo “"; //
タグで囲むと整形されて見やすくなる print_r($weekend_plans); echo "
";
?>
`print_r` の実行結果:
Array
(
[0] => 映画鑑賞
[1] => ショッピング
[2] => プログラミングの勉強
)
``` -
連想配列
通し番号の代わりに、自分で決めた文字列のキー(名前)を各データに対応させます。キー => 値
の形式で定義します。```php
<?php
// ユーザー情報を連想配列で管理する
$user_profile = [
"name" => "高橋健太",
"age" => 28,
"city" => "東京",
"job" => "デザイナー"
];// キーを指定して値にアクセスする
echo "名前: " . $user_profile["name"]; // "名前: 高橋健太"
echo "
";
echo "年齢: " . $user_profile["age"]; // "年齢: 28"
echo "
";// 連想配列の中身を確認
echo ""; print_r($user_profile); echo "
";
?>
`print_r` の実行結果:
Array
(
[name] => 高橋健太
[age] => 28
[city] => 東京
[job] => デザイナー
)
```
-
特殊な型
-
NULL
「何もない」状態を表す特別な値です。変数がまだ値を代入されていない場合や、意図的に空にしたい場合に使われます。php
<?php
$empty_variable = NULL;
// var_dump() は print_r() より詳細な情報(データ型や文字数など)を表示する
var_dump($empty_variable); // "NULL" と表示される
?>
3.5. 定数:変わらない値
変数とは対照的に、一度定義したら後から変更できない値のことを定数と呼びます。消費税率やサイトのタイトルなど、プログラム全体で共通して使う、変わることのない値を設定するのに便利です。
-
定数の定義
define()
関数を使って定義します。慣習として、定数名はすべて大文字で書くのが一般的です。```php
<?php
// 消費税率を定数として定義する
define("TAX_RATE", 0.1);// サイト名を定数として定義する
define("SITE_TITLE", "PHP入門講座");// 定数を使う($は不要)
$price = 1500;
$price_with_tax = $price * (1 + TAX_RATE);echo SITE_TITLE;
echo "
";
echo "税込み価格は " . $price_with_tax . " 円です。";// 定数の値を変更しようとするとエラーになる
// TAX_RATE = 0.12; // これはエラー!
?>
```
4. 演算子:計算や比較を行う記号
PHPでは、計算や値の比較、論理的な判断などを行うために様々な演算子が用意されています。
4.1. 算術演算子
四則演算など、数学的な計算に使います。
演算子 | 名称 | 例 | 結果 |
---|---|---|---|
+ |
加算 | $a + $b |
$a と$b の和 |
- |
減算 | $a - $b |
$a と$b の差 |
* |
乗算 | $a * $b |
$a と$b の積 |
/ |
除算 | $a / $b |
$a を$b で割った商 |
% |
剰余 | $a % $b |
$a を$b で割った余り |
```php
";
echo $a - $b; // 7
echo "
";
echo $a * $b; // 30
echo "
";
echo $a / $b; // 3.333...
echo "
";
echo $a % $b; // 1 (10割る3は商が3で余り1)
?>
```
4.2. 代入演算子
右辺の値を左辺の変数に代入します。=
が基本ですが、計算と代入を同時に行う複合代入演算子も便利です。
演算子 | 例 | 意味 |
---|---|---|
= |
$a = $b |
$a に$b を代入する |
+= |
$a += $b |
$a = $a + $b と同じ |
-= |
$a -= $b |
$a = $a - $b と同じ |
*= |
$a *= $b |
$a = $a * $b と同じ |
/= |
$a /= $b |
$a = $a / $b と同じ |
.= |
$str .= "追加" |
$str = $str . "追加" と同じ(文字列連結) |
```php
";
$greeting = "こんにちは、";
$greeting .= "世界!"; // $greetingは"こんにちは、世界!"になる
echo $greeting;
?>
```
4.3. 比較演算子
2つの値を比較し、その結果を true
(真) または false
(偽) で返します。後述する if
文などの条件分岐で必須の知識です。
演算子 | 名称 | 例 | 意味 |
---|---|---|---|
== |
等しい | $a == $b |
$a と$b の値が等しい場合に true |
=== |
型も等しい | $a === $b |
$a と$b の値とデータ型の両方が等しい場合に true |
!= |
等しくない | $a != $b |
$a と$b の値が等しくない場合に true |
<> |
等しくない | $a <> $b |
!= と同じ |
!== |
型も等しくない | $a !== $b |
$a と$b の値またはデータ型が等しくない場合に true |
> |
より大きい | $a > $b |
$a が$b より大きい場合に true |
< |
より小さい | $a < $b |
$a が$b より小さい場合に true |
>= |
以上 | $a >= $b |
$a が$b 以上の場合に true |
<= |
以下 | $a <= $b |
$a が$b 以下の場合に true |
重要: ==
と ===
の違い
これは初心者がつまずきやすいポイントです。
* ==
は、型が違っても値が同じなら true
を返します(自動で型変換して比較)。
* ===
は、型まで厳密に比較します。
バグを防ぐため、可能な限り ===
を使うことが推奨されます。
```php
= 20); // bool(true) - 20歳以上は true
?>
```
4.4. 論理演算子
複数の条件を組み合わせて、より複雑な判断をするときに使います。
演算子 | 名称 | 例 | 意味 |
---|---|---|---|
&& (and) |
AND | 条件A && 条件B |
条件Aと条件Bが両方ともtrue の場合に true |
|| (or) |
OR | 条件A || 条件B |
条件Aと条件Bのどちらか一方でもtrue の場合に true |
! |
NOT | !条件A |
条件Aが false なら true 、true なら false を返す(結果を反転) |
```php
= 20) && ($gender === "男性");
var_dump($is_target); // bool(true)
$point = 80;
$is_student = false;
// 90点以上 または 学生の場合は true
$is_discount = ($point >= 90) || ($is_student === true);
var_dump($is_discount); // bool(false)
// ログインしていない状態
$is_logged_in = false;
var_dump(!$is_logged_in); // bool(true) - !false は true
?>
```
5. 制御構造:プログラムの流れを操る
プログラムは通常、上から下へ順番に実行されますが、制御構造を使うことで、特定の条件によって処理を分けたり(条件分岐)、同じ処理を何度も繰り返したり(繰り返し)することができます。これにより、プログラムは一気に柔軟でパワフルになります。
5.1. 条件分岐 (if文)
「もし○○ならば、Aの処理をする。そうでなければ、Bの処理をする」といった、条件に応じた処理の振り分けを行います。
- if:もし条件が
true
なら、{}
の中の処理を実行する。 - if ... else:もし条件が
true
ならAの処理、false
ならBの処理を実行する。 - if ... elseif ... else:複数の条件で分岐する。
```php
= 20) {
$price = 1800; // 20歳以上は大人料金
echo "あなたは大人です。";
} elseif ($age >= 13) {
$price = 1200; // 13歳以上20歳未満は中高生料金
echo "あなたは中高生です。";
} else {
$price = 800; // それ以外は子供料金
echo "あなたはお子様です。";
}
echo "入場料は " . $price . " 円です。";
// 実行結果: あなたは中高生です。入場料は 1200 円です。
?>
```
5.2. 条件分岐 (switch文)
一つの変数の値によって、処理を多岐に分岐させたい場合に if ... elseif
よりもシンプルに書けることがあります。
switch (変数)
で比較したい変数を指定します。case 値:
で、変数の値がこの値と一致した場合の処理を書きます。break;
でswitch
文の処理を終了します。break;
を忘れると、次のcase
の処理も実行されてしまうので注意が必要です。default:
どのcase
にも一致しなかった場合の処理を書きます。
```php
```
5.3. 繰り返し (for文)
「○回繰り返す」というように、繰り返す回数が決まっている場合に最もよく使われるループ処理です。
構文:for (初期化式; 条件式; 変化式) { ... }
1. 初期化式:ループ開始前に一度だけ実行される(例:カウンタ変数を 0
にする)。
2. 条件式:ループの各回の開始前に評価される。true
の間はループを続ける。
3. 変化式:ループの各回の処理が終わった後に実行される(例:カウンタ変数を 1
増やす)。
```php
";
// 配列の要素を順番に出力する
$fruits = ["りんご", "バナナ", "みかん"];
// count($fruits) は配列の要素数を返す(この場合は3)
for ($i = 0; $i < count($fruits); $i++) {
echo $fruits[$i] . "は美味しい!
";
}
?>
```
5.4. 繰り返し (while文)
「○○である間、ずっと繰り返す」というように、特定の条件が満たされている間、処理を繰り返します。ループの回数が事前に決まっていない場合に便利です。
構文:while (条件式) { ... }
条件式が true
の間、{}
の中の処理を繰り返します。
注意! ループ内で条件式が false
になるような処理を書かないと、無限ループに陥り、プログラムが停止しなくなってしまうので注意が必要です。
```php
";
$money += 50; // この行がないと無限ループになる!
}
echo "最終的な所持金: " . $money . "円。やった!";
?>
```
5.5. 繰り返し (foreach文)
配列や連想配列のすべての要素に対して、順番に処理を行いたい場合に特化した、非常に便利なループです。for
文よりもシンプルに書けます。
- 値だけを取り出す場合:
foreach (配列 as $value)
- キーと値の両方を取り出す場合:
foreach (配列 as $key => $value)
```php
好きな色リスト
";
echo "
- ";
- " . $color . "
foreach ($colors as $color) {
echo "
";
}
echo "
";
echo "
";
// 連想配列の場合
$user = [
"名前" => "田中",
"年齢" => 32,
"職業" => "エンジニア"
];
echo "
ユーザー情報
";
echo "
- ";
- " . $key . ": " . $value . "
foreach ($user as $key => $value) {
echo "
";
}
echo "
";
?>
``
foreach` を使うのが最も一般的で安全な方法です。
配列を扱う際は、
5.6. ループの制御 (break / continue)
ループ処理の途中で、流れをコントロールしたい場合があります。
break
: 現在実行中のループを完全に中断して、ループの外に抜けます。continue
: 現在の回の処理だけをスキップして、次の回のループ処理に進みます。
```php
";
// 1から10までのうち、偶数だけを出力する
for ($i = 1; $i <= 10; $i++) {
if ($i % 2 !== 0) { // 奇数の場合
continue; // 以降の処理をスキップして次のループへ
}
echo $i . " "; // 偶数だけがここに来る
}
// 実行結果: 2 4 6 8 10
?>
```
6. 関数:処理をまとめる魔法の箱
関数とは、特定の目的を持った一連の処理を一つの塊としてまとめ、名前をつけたものです。
- 再利用性: 同じ処理を何度も書く必要がなくなり、コードが短く、スッキリします。
- 可読性: 関数名から「何をしている処理なのか」が分かりやすくなり、コードが読みやすくなります。
- 保守性: 処理の修正が必要になった場合、その関数の中だけを修正すればよくなります。
6.1. 関数の定義と呼び出し
function
キーワードを使って関数を定義します。
構文:function 関数名(引数1, 引数2, ...) { ...処理... }
```php
";
}
// 足し算をする関数を定義する
function add_numbers() {
$a = 5;
$b = 10;
$sum = $a + $b;
echo $a . " + " . $b . " = " . $sum . "
";
}
// 関数を呼び出す(実行する)
say_hello();
say_hello();
add_numbers();
?>
```
6.2. 引数と戻り値
より汎用性の高い関数を作るために、引数(ひきすう)と戻り値(もどりち)を使います。
- 引数: 関数を呼び出す際に、関数に渡す値のこと。関数は受け取った引数を使って処理を行います。
- 戻り値: 関数が処理を終えた後、呼び出し元に返す値のこと。
return
キーワードを使います。
```php
";
}
// 引数で受け取った2つの数値を足し算し、結果を返す関数
function add($num1, $num2) {
$result = $num1 + $num2;
return $result; // 計算結果を返す
}
// 引数のある関数を呼び出す
say_hello_to("鈴木"); // こんにちは、鈴木さん!
say_hello_to("佐藤"); // こんにちは、佐藤さん!
// 戻り値のある関数を呼び出し、結果を変数に代入する
$total = add(10, 20);
echo "10 + 20 の答えは " . $total . " です。
"; // 10 + 20 の答えは 30 です。
// 税込み価格を計算する関数
function calculate_price_with_tax($price) {
$tax_rate = 0.1;
$result = $price * (1 + $tax_rate);
return $result;
}
$apple_price = 120;
$orange_price = 80;
$apple_price_with_tax = calculate_price_with_tax($apple_price);
$orange_price_with_tax = calculate_price_with_tax($orange_price);
echo "りんごの税込み価格は " . $apple_price_with_tax . " 円です。
";
echo "みかんの税込み価格は " . $orange_price_with_tax . " 円です。
";
?>
```
7. Webアプリケーションの基礎
これまでに学んだ知識を組み合わせることで、いよいよWebアプリケーションらしいものを作ることができます。
7.1. HTML内にPHPを埋め込む
PHPの真骨頂は、HTMLの中に埋め込んで動的なページを生成できる点です。
```html
ようこそ!
" . $username . "さん!";
?>
現在の日時は
です。
今月のラッキーナンバー
-
" . $lucky_number . "
";
}
?>
``
.php` ファイルにアクセスするたびに、日時やラッキーナンバーが変化する、動的なページが表示されます。
この
7.2. フォームからのデータ受け取り
Webサイトの問い合わせフォームや検索窓のように、ユーザーが入力したデータを受け取って処理するのもPHPの重要な役割です。
HTMLの <form>
タグで入力欄を作り、PHPでそのデータを受け取ります。データ送信方法には主に GET
と POST
の2種類があります。
- GET: 送信データがURLの後ろにくっつく(例:
search.php?keyword=PHP
)。ブックマーク可能。 - POST: 送信データがURLに見えない形で送られる。パスワードなど、機密情報を含む場合に使う。
PHPでは、これらのデータはスーパーグローバル変数という特別な変数で受け取ります。
* GET
で送られたデータ: $_GET
(連想配列)
* POST
で送られたデータ: $_POST
(連想配列)
簡単な挨拶フォームの例
まず、form.html
というHTMLファイルを作成します。
```html
あなたの名前を教えてください
``
action="greeting.php"
*: フォームの送信先ファイルを指定。
method="post"
*: POSTメソッドで送信することを指定。
name="user_name"
*: 入力されたデータに
user_name` というキー(名前)をつける。
次に、データを受け取る greeting.php
を作成します。
```php
& " ' などの特殊文字を無害な文字列に変換する
// ユーザーからの入力を表示する際は、必ずこの処理を行う癖をつける
$name = isset($_POST['user_name']) ? htmlspecialchars($_POST['user_name'], ENT_QUOTES, 'UTF-8') : '名無し';
?>
ご挨拶
こんにちは、さん!
PHPの世界へようこそ!
名前が入力されていませんでした。
``
isset($_POST['user_name'])は、
user_nameというキーのデータが
$_POSTに存在するかをチェックしています。これにより、未入力の場合のエラーを防ぎます。
htmlspecialchars()` で入力を無害化してから表示することで、セキュリティを高めています。これは非常に重要な習慣です。
そして、
8. まとめと次のステップ
ここまで、本当にお疲れ様でした!この記事では、駆け足でしたがPHPの核心的な基礎をひと通り学びました。
- PHPの基本的な書き方 (
<?php ... ?>
,;
) - 画面出力 (
echo
) - データを入れる箱である変数と、その種類であるデータ型
- 計算や比較を行う演算子
- プログラムの流れを操る制御構造(
if
,switch
,for
,while
,foreach
) - 処理をまとめる関数
- HTMLとの連携やフォームデータの受け取り
もちろん、これがPHPのすべてではありません。しかし、この記事で解説した内容は、どんな複雑なWebアプリケーションを作る上でも土台となる、最も重要な部分です。
もしあなたが「もっと学びたい!」と感じたなら、それは素晴らしいことです。次のステップとして、以下のようなテーマに挑戦してみることをお勧めします。
- データベース連携: MySQLなどのデータベースと連携し、データの保存・読み込み・更新・削除を行う方法。Webアプリケーション開発の核となります。
- セッション管理とクッキー: ログイン機能など、ユーザーの状態を維持する技術。
- オブジェクト指向プログラミング(OOP): 大規模な開発を効率的に行うための設計思想。
class
の概念を学びます。 - フレームワークの学習: LaravelやSymfonyといったPHPフレームワークを使うと、より安全で効率的に高機能なアプリケーションを開発できます。
プログラミング学習の道は、時に難しく感じることもあるかもしれません。しかし、今日学んだ基礎を武器に、小さなプログラムをたくさん作り、エラーを乗り越え、動いた時の喜びを何度も味わってください。その積み重ねが、あなたを一流のPHPデベロッパーへと導いてくれるはずです。
あなたのこれからの学習を心から応援しています!