【完全ガイド】AviUtlのLuaスクリプト導入から応用までを徹底解説

はい、承知いたしました。
AviUtlのLuaスクリプトに関する包括的なガイド記事を、約5000字で作成します。以下、記事本文です。


【完全ガイド】AviUtlのLuaスクリプト導入から応用までを徹底解説

1. はじめに:AviUtlとLuaスクリプトの世界へようこそ

AviUtlは、KENくん氏によって開発された、無料で高機能な動画編集ソフトウェアです。初版リリースから20年以上が経過した現在でも、その軽快な動作と、プラグインによる無限の拡張性から、多くの動画クリエイターに愛され続けています。特にニコニコ動画やYouTubeといった動画投稿サイトの文化と共に発展し、数々の名作動画を生み出してきました。

しかし、AviUtlの真価は、標準機能だけでは語り尽くせません。そのポテンシャルを最大限に引き出す鍵こそが、本記事のテーマである「Luaスクリプト」です。

Luaスクリプトとは、AviUtlの拡張編集プラグイン上で動作する簡易的なプログラムのことです。これを導入することで、標準機能だけでは実現が難しい、あるいは非常に手間がかかる複雑なエフェクトやアニメーションを、驚くほど簡単に実現できるようになります。

  • 表現力の飛躍的な向上: 炎や水、光の粒子といったパーティクル表現、スタイリッシュなモーショングラフィックス、複雑な図形描画など、プロ向けのソフトウェアに匹敵するような視覚効果をあなたの動画に加えられます。
  • 作業効率の大幅な向上: テキストに自動で縁取りを付けたり、オブジェクトを特定の軌道で追従させたりといった定型作業を自動化できます。これにより、あなたはよりクリエイティブな作業に集中できるようになります。

この記事では、あなたがLuaスクリプトの力を完全にマスターするための、包括的なガイドを提供します。AviUtl初心者の方でも安心して進められるよう、導入の準備段階から、基本的な使い方、応用テクニック、さらには簡単なスクリプトを自作する第一歩まで、徹底的に解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたはLuaスクリプトを自在に操り、これまで思い描くだけだった映像表現を、自らの手で生み出せるようになっているはずです。さあ、AviUtlの新たな扉を開き、無限の創造性の世界へ旅立ちましょう。

2. Luaスクリプト導入の準備

Luaスクリプトを利用するには、まずその実行環境を整える必要があります。ここでは、必要なソフトウェアやプラグインの導入手順を、一つずつ丁寧に解説します。

2-1. AviUtl本体と拡張編集プラグインの導入

Luaスクリプトは、AviUtlの「拡張編集プラグイン」上で動作します。そのため、これらが導入済みであることが大前提となります。

  • AviUtl本体: 公式サイト「AviUtlのお部屋」からダウンロードします。
  • 拡張編集プラグイン: 同じく「AviUtlのお部屋」からダウンロードします。

導入がまだの方は、まずこれらのインストールを完了させてください。最近では、必要なプラグインが一通りパッケージ化された「AviUtl anago ankh anago」や「かんたんMP4出力 (L-SMASH Works/x264guiEx/MP4Box) 同梱版」などを利用すると、初心者の方でもスムーズに環境構築ができます。

【導入手順の確認】
1. AviUtl本体をダウンロードし、任意のフォルダ(例: C:\AviUtl)に解凍します。
2. 拡張編集プラグインをダウンロードし、解凍して出てきたファイル(exedit.aufなど)を、すべてAviUtl本体のフォルダ直下、またはpluginsフォルダにコピーします。
3. AviUtlを起動し、メニューバーに「設定」→「拡張編集の設定」が表示されていれば導入成功です。

2-2. スクリプト制御プラグインの導入

LuaスクリプトをAviUtl上で実行するための「頭脳」となるのが、スクリプト制御プラグインです。これを導入しなければ、スクリプトはただのテキストファイルのままです。

現在、最も広く使われているのが、rikky氏が開発したモジュール群に含まれる「script.auf」です。

  • 配布元: rikky_module( BowlRollなどで「rikky_module」と検索)
  • 役割: AviUtlの拡張編集プラグインにLua言語の実行環境を追加し、.anm.objといったスクリプトファイルを解釈・実行できるようにします。

【導入手順】
1. rikky_moduleをダウンロードし、解凍します。
2. 中にある「script.auf」というファイルを、AviUtl本体のフォルダ直下、またはpluginsフォルダにコピーします。

これだけで、Luaスクリプトを実行する基本的な準備は完了です。

また、スクリプトの適用をより直感的に行うための便利なプラグインとして「GCMZDrops」も存在します。これは、スクリプトファイルをタイムラインにドラッグ&ドロップするだけで適用できるようにするもので、作業効率が格段に向上します。導入は任意ですが、強く推奨します。

  • 配布元: ごちゃまぜドロップス(BowlRollなどで検索)
  • 導入手順: ダウンロード・解凍後、中にある「GCMZDrops.auf」をpluginsフォルダにコピーします。

2-3. Luaライブラリの導入

ライブラリとは、スクリプトの機能を拡張するための「部品」のようなものです。多くの高機能なスクリプトは、特定のライブラリが導入されていることを前提に作られています。特に以下のライブラリは、事実上の標準となっており、必須と言っても過言ではありません。

  • exedit.anm (rikky_module内): 拡張編集のオブジェクト情報を取得・操作するための最も基本的なライブラリです。これがなければほとんどのスクリプトは正常に動作しません。
  • gcmz.lua (GCMZDrops内): GCMZDropsプラグインを機能させるために必要なライブラリです。
  • easing.lua , figure.luaなど: これらもrikky_moduleに含まれており、滑らかな動き(イージング)や複雑な図形描画を簡単に行うためのライブラリです。

【導入手順】
1. rikky_moduleを解凍したフォルダを開きます。
2. 中にある「exedit.anm」「easing.lua」「figure.lua」などの.anm.luaファイルを、すべてAviUtlフォルダ内に新しく作成した「script」フォルダにコピーします。
* 重要: Luaスクリプトファイル(.anm, .obj, .scn, .cam, .luaなど)は、原則としてAviUtl本体フォルダ直下の「script」フォルダにまとめて配置します。このフォルダがない場合は、自分で作成してください。
3. GCMZDropsを導入した場合は、解凍したフォルダ内にある「gcmz.lua」も同様に「script」フォルダにコピーします。

【フォルダ構成の最終確認】
C:\AviUtl\
├─ aviutl.exe
├─ exedit.auf
├─ plugins\
│ ├─ script.auf
│ └─ GCMZDrops.auf (任意)
└─ script\
├─ exedit.anm
├─ easing.lua
├─ figure.lua
├─ gcmz.lua (任意)
└─ (今後ダウンロードする各種スクリプトファイル)

この構成になっていれば、Luaスクリプトを迎える準備は万端です。

3. Luaスクリプトの基本的な使い方

環境構築が完了したら、いよいよスクリプトを使ってみましょう。ここでは、スクリプトの種類から入手方法、そして具体的な適用方法までを詳しく解説します。

3-1. スクリプトの種類を理解する

Luaスクリプトは、その役割に応じていくつかの種類(拡張子)に分かれています。それぞれの特徴を理解することが、スクリプトを使いこなす第一歩です。

種類 (拡張子) 名称 役割
.anm アニメーション効果 オブジェクトに動きや変形、色変化などの「効果」を追加する。最も使用頻度が高い。
.obj カスタムオブジェクト テキストや図形、パーティクルなど、新しい種類の「オブジェクト」そのものを追加する。
.scn シーンチェンジ クリップとクリップの間で、特殊な画面切り替え効果を実現する。
.cam カメラ効果 「カメラ制御」オブジェクトに適用し、視点を動かしたりズームしたりする効果を追加する。
(フィルタ効果) フィルタオブジェクト効果 フィルタオブジェクトに適用し、画面全体に特殊効果(ノイズ、色調補正など)をかける。

これ以外にも、特定のスクリプトから呼び出して使う補助的なスクリプト(.lua)などもありますが、まずはこの5種類を覚えておけば十分です。

3-2. スクリプトの入手方法

優れたスクリプトは、多くのクリエイターによってインターネット上で公開されています。

  • 有名な配布場所:

    • ニコニ・コモンズ: 「AviUtlスクリプト」などのタグで検索すると、多数のスクリプトが見つかります。
    • BowlRoll: MMD関連のモデルやアクセサリが多いですが、高機能なAviUtlスクリプトも多数配布されています。
    • 個人のブログやサイト、GitHub: スクリプト開発者自身が運営するサイト。特定の機能に特化したユニークなスクリプトが見つかることも。
  • 探す際のキーワード例:

    • 「AviUtl スクリプト 縁取り」
    • 「AviUtl anm 振動」
    • 「AviUtl obj パーティクル」
    • 「AviUtl シーンチェンジ おしゃれ」

【注意点】
スクリプトをダウンロードする際は、必ず利用規約(ReadMe)を確認しましょう。商用利用の可否、クレジット表記の要不要など、作者が定めたルールを守って使用することがマナーです。

3-3. スクリプトの適用方法【種類別徹底解説】

ダウンロードしたスクリプトファイル(.anmなど)は、先に作成した「script」フォルダに入れます。AviUtlを再起動すると、スクリプトが認識され、使えるようになります。

アニメーション効果 (.anm) の適用方法

オブジェクトに動きやエフェクトを加える、最も基本的な使い方です。

  1. タイムラインにテキストや図形などのオブジェクトを配置します。
  2. オブジェクトの設定ダイアログ(オブジェクトをダブルクリックするか、右上のウィンドウ)を開きます。
  3. 右上にある「」ボタンをクリックし、メニューから「アニメーション効果」を選択します。
  4. すると、オブジェクトの下に「アニメーション効果」という青いバーが追加されます。
  5. この「アニメーション効果」の設定ダイアログを開き、左下のプルダウンメニューをクリックします。
  6. script」フォルダに入れた.anmスクリプトの一覧が表示されるので、適用したいスクリプト(例:振動、ラスター、縁取りなど)を選択します。

画像:アニメーション効果の適用手順のイメージ

カスタムオブジェクト (.obj) の適用方法

新しい図形やエフェクトをタイムラインに直接配置します。

  1. タイムラインの何もないところを右クリックします。
  2. メニューから「メディアオブジェクトの追加」→「カスタムオブジェクト」を選択します。
  3. タイムラインに「カスタムオブジェクト」という赤いバーが追加されます。
  4. この「カスタムオブジェクト」の設定ダイアログを開き、左下のプルダウンメニューをクリックします。
  5. script」フォルダに入れた.objスクリプトの一覧が表示されるので、使いたいオブジェクト(例:多角形、集中線、パーティクルなど)を選択します。

シーンチェンジ (.scn) の適用方法

クリップ間のトランジションとして使用します。

  1. タイムラインの何もないところを右クリックします。
  2. メニューから「フィルタオブジェクトの追加」→「シーンチェンジ」を選択します。
  3. タイムラインに「シーンチェンジ」という緑色のバーが追加されます。
  4. この「シーンチェンジ」オブジェクトを、切り替えたい2つのクリップが重なる部分に配置します。
  5. 「シーンチェンジ」の設定ダイアログを開き、プルダウンメニューから使いたい.scnスクリプトを選択します。

カメラ効果 (.cam) の適用方法

カメラワークを制御するために使用します。

  1. タイムラインの何もないところを右クリックします。
  2. メニューから「カメラ効果の追加」→「カメラ制御」を選択します。
  3. タイムラインに「カメラ制御」というオブジェクトが追加されます。
  4. この「カメラ制御」オブジェクトは、それ自体が効果を持つわけではありません。これにアニメーション効果を適用することで、カメラを制御します。
  5. 「カメラ制御」オブジェクトの設定ダイアログで「+」ボタン→「アニメーション効果」を選択します。
  6. 追加されたアニメーション効果のプルダウンメニューから、使いたい.camスクリプト(例:手ぶれ、ズームイン/アウトなど)を選択します。

3-4. スクリプトのパラメータを理解する

スクリプトを適用すると、設定ダイアログに様々な調整項目(パラメータ)が表示されます。これらを操作することで、効果を自分好みにカスタマイズできます。

  • トラックバー (--track):

    • 時間経過と共に値が変化するパラメータです。例えば「X座標」を0から500に設定すると、オブジェクトが時間と共に右へ移動します。
    • バーの途中をクリックして「中間点」を追加することで、複雑な動き(加速・減速、往復など)も作れます。
  • スライダー (--slider):

    • 時間に関わらず一定の値を設定するパラメータです。「サイズ」や「不透明度」など、効果の強さを固定したい場合に使います。
  • チェックボックス (--check):

    • 機能のON/OFFを切り替えるパラメータです。「影を付ける」「反転する」といったオプションに使われます。
  • カラーピッカー (--color):

    • 色を設定するパラメータです。クリックするとカラーパレットが表示され、直感的に色を選べます。
  • ファイル選択 (--file):

    • 画像ファイルなどを指定するためのパラメータです。テクスチャを貼り付けるスクリプトなどで使用します。
  • テキスト入力 (--text):

    • 任意の文字列を入力するパラメータです。表示する文字の内容を変更する際に使います。

これらのパラメータの意味は、スクリプト名や付属のReadMeから推測できますが、一番の近道は実際に値をいじって、どのように変化するかを試してみることです。試行錯誤を繰り返すうちに、各パラメータの役割が自然と身についていきます。

4. Luaスクリプト応用テクニック

基本をマスターしたら、次はスクリプトを組み合わせて、より高度で独創的な表現に挑戦してみましょう。

4-1. スクリプトの組み合わせで表現を広げる

Luaスクリプトの真骨頂は、その組み合わせの自由度の高さにあります。一つのオブジェクトに対して、複数のアニメーション効果を「重ねがけ」することが可能です。

【具体例1:リッチなテキスト表現】
1. テキストオブジェクトを配置します。
2. アニメーション効果を追加し、「縁取り」スクリプトを適用します。→ テキストに縁が付きます。
3. さらに「+」ボタンからアニメーション効果を追加し、「グラデーション」スクリプトを適用します。→ テキスト本体がグラデーションになります。
4. さらにアニメーション効果を追加し、「簡易ブラー」スクリプトを適用します。→ テキスト全体が少しぼやけて、柔らかい印象になります。
5. さらにアニメーション効果を追加し、「登場(フェードイン)」スクリプトを適用します。→ テキストがフワッと表示されるようになります。

このように、効果をレイヤーのように積み重ねていくことで、単体のスクリプトでは不可能な、複雑でリッチなビジュアルを作り出すことができます。

【ポイント】
アニメーション効果は、リストの上にあるものから順番に処理されます。この処理順序が重要になる場合があります。例えば、「縁取り」の後に「ブラー」をかけるのと、「ブラー」の後に「縁取り」をかけるのでは、結果が大きく異なります(後者は縁取りだけクッキリします)。期待した効果にならない場合は、効果の順番を入れ替えてみましょう。

4-2. スクリプト制御を使いこなす

スクリプト制御」は、オブジェクトに適用する特殊なアニメーション効果の一つで、主にオブジェクト同士を連携させるために使われます。

  • 適用方法: アニメーション効果のプルダウンメニューから「スクリプト制御」を選択します。

「スクリプト制御」自体にはパラメータがありません。その代わり、テキストボックスに直接Luaのコードを書き込むことで、オブジェクトを制御します。

【具体例:オブジェクトAにオブジェクトBを追従させる】
動画編集で非常によくある「動く人やモノにテロップや図形を追従させる」という処理を、スクリプト制御で実現してみましょう。

  1. オブジェクトA(追従される側): 動画ファイルや、移動アニメーションを設定した図形などを配置します。
  2. オブジェクトB(追従する側): テキストや画像などを、オブジェクトAの上のレイヤーに配置します。
  3. オブジェクトBに「アニメーション効果」→「スクリプト制御」を追加します。
  4. スクリプト制御のテキストボックスに、以下のコードを入力します。

“`lua
— obj.getpoint(“layer”, “x”, obj.time)
— layer: 参照したいオブジェクトがあるレイヤー番号を指定
— “x”: 取得したい座標 (“x”, “y”, “z”)
— obj.time: 現在のフレームにおける時間を指定

— レイヤー1にあるオブジェクトのX座標とY座標を取得して、自分の座標に代入する
obj.x = obj.getpoint(“layer1”, “x”, obj.time)
obj.y = obj.getpoint(“layer1”, “y”, obj.time)
“`

【コード解説】
obj.getpoint("layer1", "x", obj.time) という関数がキモです。これは「レイヤー1にあるオブジェクトの、現在の時間におけるX座標を取得せよ」という命令です。この命令で取得した座標を、自分自身(オブジェクトB)のX座標とY座標(obj.x, obj.y)に代入することで、追従が実現します。

もちろん、有志が作成した「座標追従」スクリプトを使えば、コードを書かずに同じことが実現できます。しかし、このobj.getpointの仕組みを理解しておくと、「AのX座標とBのY座標を組み合わせる」「Aの動きから少し遅れて追従する」といった、より複雑な連携も自力で組めるようになります。

4-3. よくあるトラブルシューティング

Luaスクリプトは非常に便利ですが、時々予期せぬトラブルに見舞われることもあります。ここでは、代表的な問題とその解決策を紹介します。

  • 問題:スクリプトが一覧に表示されない

    • 原因1:ファイルの配置場所の間違い
      • 解決策: スクリプトファイル(.anmなど)が、AviUtl本体フォルダ直下の「script」フォルダに正しく配置されているか確認してください。サブフォルダを作って整理することも可能ですが、まずは基本の場所に置いてみましょう。
    • 原因2:必要なライブラリの不足
      • 解決策: スクリプトによっては、特定のライブラリ(easing.luaなど)を必要とします。ReadMeをよく読み、指定されたライブラリが「script」フォルダにあるか確認してください。特にexedit.anmは必須です。
    • 原因3:AviUtlの再起動をしていない
      • 解決策: スクリプトを追加・削除した後は、必ずAviUtlを再起動してください。
  • 問題:エラーメッセージが表示される

    • 原因1:依存関係の問題
      • 解決策: 上記のライブラリ不足と同様です。エラーメッセージに「easing is a nil value」のようにライブラリ名らしき単語が含まれていたら、そのライブラリが不足している可能性が高いです。
    • 原因2:文字コードの問題
      • 解決策: Luaスクリプトは、基本的に文字コードがShift_JISである必要があります。自分でスクリプトを編集した際にUTF-8などで保存してしまうと、エラーの原因になります。メモ帳以外のテキストエディタで、文字コードを指定して保存し直してください。
    • 原因3:プラグインのバージョン互換性
      • 解決策: 古いスクリプトが、最新の拡張編集プラグインやscript.aufに対応していない場合があります。逆に、最新のスクリプトが古い環境で動かないこともあります。プラグインとスクリプトを、できるだけ最新の状態に保つようにしましょう。
  • 問題:動作が重い、プレビューがカクつく

    • 原因:高負荷なスクリプトの使用
      • パーティクルを大量に発生させる、複雑な計算を毎フレーム行うなど、一部のスクリプトはPCに高い負荷をかけます。
    • 解決策1:キャッシュフレーム機能の活用
      • AviUtlの「ファイル」→「環境設定」→「システムの設定」から、「キャッシュフレーム数」を増やしてみましょう。一度再生した部分がメモリにキャッシュされ、2回目以降の再生がスムーズになります。
    • 解決策2:パラメータの調整
      • スクリプトのパラメータで「パーティクル数」「計算回数」「解像度」などを下げられないか確認してみましょう。
    • 解決策3:編集時と出力時で設定を変える
      • 編集中は負荷の軽い設定にしておき、最終的な動画出力(エンコード)の時だけ高設定に戻す、というのも有効な手段です。

5. Luaスクリプト自作への第一歩

既存のスクリプトを使いこなすだけでも表現の幅は大きく広がりますが、「あと少しだけ動きを変えたい」「毎回やるこの作業を自動化したい」といった欲求が出てくるかもしれません。そんな時が、スクリプト自作への扉を開くチャンスです。ここでは、プログラミング未経験者でも挑戦できるよう、自作の初歩を解説します。

5-1. 開発環境の準備

大掛かりなツールは必要ありません。必要なのはテキストエディタだけです。

  • テキストエディタ: Windows標準の「メモ帳」でも作成可能ですが、プログラミング向けの無料エディタ(Visual Studio Code, Sublime Text, サクラエディタなど)を強く推奨します。これらのエディタは、コードの色分け(シンタックスハイライト)や、文字コードの指定が簡単に行えます。
  • 文字コードの重要性: 作成したスクリプトは、必ずShift_JIS形式で保存してください。これがLuaスクリプトのお約束です。

5-2. スクリプトの基本構造【超入門】

Luaスクリプトは、大きく分けて「ヘッダ部分」と「処理部分」で構成されます。

ヘッダ部分

スクリプトの先頭に書き、このファイルがどのようなスクリプトなのかをAviUtlに教える部分です。--で始まる行はコメントですが、--@で始まる行は特別な意味を持ちます。

lua
--@アニメーション効果
--@name テスト移動
--@author あなたの名前
--@track0:移動X,-1920,1920,0,1
--@track1:移動Y,-1080,1080,0,1
--@check0:左右反転

  • --@アニメーション効果: このスクリプトの種類を宣言します。「カスタムオブジェクト」なら--@カスタムオブジェクトと書きます。
  • --@name: スクリプトの名前を指定します。省略可能です。
  • --@author: 作者名を指定します。省略可能です。
  • --@track0:名前,最小値,最大値,初期値,精度: トラックバーを定義します。
  • --@check0:名前,初期状態(1=ON): チェックボックスを定義します。

処理部分

ヘッダ部分の下に書く、実際の処理内容です。この部分に書かれたコードが、動画の各フレームで実行されます。

5-3. 簡単なスクリプトを作ってみよう【実践】

習うより慣れよ。実際に2つの簡単なスクリプトを作ってみましょう。

目標1:指定した色で画面を塗りつぶすカスタムオブジェクト

  1. テキストエディタを開き、以下のコードをコピー&ペーストします。
  2. ファイル名を「ベタ塗り.obj」とし、文字コードをShift_JISに指定して保存します。
  3. 保存したファイルをAviUtlの「script」フォルダに置きます。

“`lua
–@カスタムオブジェクト
–@name ベタ塗り
–@color:塗りの色,ff0000

— obj.getcolor(“color”) で、上で定義したカラーピッカーで選択された色を取得
local r, g, b = obj.getcolor(“color”)

— obj.setcolor(r, g, b) で、描画色を指定
obj.setcolor(r, g, b)

— obj.box(x, y, 幅, 高さ) で、四角形を描画
— obj.w と obj.h は、オブジェクトの描画範囲の幅と高さを表す
obj.box(0, 0, obj.w, obj.h)
“`

AviUtlを再起動し、「メディアオブジェクトの追加」→「カスタムオブジェクト」で「ベタ塗り」が追加されていれば成功です! カラーピッカーで色を変えると、オブジェクトの色が変わるはずです。

目標2:直線的に移動するアニメーション効果

  1. テキストエディタで新規ファイルを開き、以下のコードをコピペします。
  2. ファイル名を「直線移動.anm」とし、文字コードをShift_JISで保存します。
  3. ファイルを「script」フォルダに置きます。

“`lua
–@アニメーション効果
–@name 直線移動
–@track0:移動X,-2000,2000,100,1
–@track1:移動Y,-2000,2000,0,1

— obj.track0 は、上で定義したトラックバー0の現在の値
— obj.x は、オブジェクトの元のX座標
— 元の座標に、トラックバーの値を足すことで、移動を実現する
obj.x = obj.x + obj.track0
obj.y = obj.y + obj.track1
“`

AviUtlを再起動し、任意のオブジェクトに「アニメーション効果」→「直線移動」を適用してみましょう。トラックバー「移動X」を0から100に設定すると、オブジェクトが右に100ピクセル移動するアニメーションが作れます。

5-4. さらなる学習のために

自作の世界は奥深く、そして非常に楽しいものです。もし興味が湧いたら、次のステップに進んでみましょう。

  • 他の人のスクリプトを読む: 最大の教科書は、先人たちが作った優れたスクリプトです。「script」フォルダにあるファイルをテキストエディタで開いて、どのようなコードで実現されているのか読んでみましょう。
  • 公式リファレンスを読む: rikky_moduleには、obj.getpointobj.boxのような、使える関数(命令)の一覧が書かれたドキュメントが付属しています。これを読めば、どんなことができるのかが分かります。
  • 小さな改造から始める: 既存のスクリプトをコピーして、「少しだけ色を変える」「移動量の上限を増やす」といった簡単な改造から始めてみましょう。

6. おわりに

本記事では、AviUtlにおけるLuaスクリプトの導入から、基本的な使い方、応用テクニック、そして自作の第一歩までを、網羅的に解説しました。

Luaスクリプトは、あなたのAviUtlでの動画制作体験を、根底から変える力を持っています。これまで「これは高度なソフトじゃないと無理だ」と諦めていた表現が、手の届くところにあることに気づくでしょう。作業はより効率的になり、創造性はより自由に羽ばたきます。

もちろん、最初からすべてを完璧に使いこなす必要はありません。まずは興味を持ったスクリプトを一つ導入し、その動きを確かめ、パラメータをいじってみることから始めてください。小さな「できた!」の積み重ねが、やがて大きな自信とスキルに繋がります。

この記事が、あなたのAviUtlライフをより豊かでクリエイティブなものにするための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。さあ、無限の可能性が広がるLuaスクリプトの世界で、あなただけの映像作品を創造してください。応援しています!

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