#N/Aエラーはなぜ出る?原因と非表示にする5つの方法【Excel初心者向け】


#N/Aエラーはなぜ出る?原因と非表示にする5つの方法【Excel初心者向け】

はじめに:Excelの「#N/A」、もう怖くない!

Excelを使ってデータを集計したり、リストを管理したりしていると、突然セルに表示される「#N/A」という謎の文字列。VLOOKUP関数を使い始めた初心者の方にとっては、計算式が間違っているのかと焦ってしまう、厄介なエラーに見えるかもしれません。

「このエラーが出ると、SUM関数などの合計値までエラーになってしまう…」
「レポートの見栄えが悪くなるから、どうにかして消したい…」
「そもそも、なぜこのエラーが出るのかが分からない…」

もしあなたがこのように感じているなら、この記事はまさにあなたのためのものです。

実は、「#N/A」エラーは、Excelが「あなたが探しているデータは、指定された範囲の中に見つかりませんでしたよ」と親切に教えてくれているサインなのです。つまり、数式の文法的な間違い(例えば #VALUE!#NAME?)とは異なり、計算処理そのものは正しく行われた結果として表示される、ある意味「正常な」エラーと言えます。

この記事では、Excel初心者の方でも「#N/A」エラーの本質を理解し、自信を持って対処できるよう、以下の内容を徹底的に、そして丁寧に解説していきます。

  1. #N/Aエラーの正体:そもそも「#N/A」とは何なのか?
  2. 5つの主な原因:なぜ#N/Aエラーが発生するのか、具体的な原因を深掘りします。
  3. 非表示にする5つの方法:エラーをスマートに非表示にしたり、別の文字に置き換えたりする実践的なテクニックを紹介します。
  4. 応用テクニック:#N/Aエラーをただ消すだけでなく、データ分析に活用する方法も解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたは#N/Aエラーを恐れるどころか、むしろデータの問題点を発見するための「便利なツール」として使いこなせるようになっているはずです。さあ、一緒に#N/Aエラーをマスターし、Excelスキルを一段階レベルアップさせましょう!


第1章:#N/Aエラーとは何か? – エラーメッセージの正体

まず、敵を知ることから始めましょう。「#N/A」エラーが何者なのかを正確に理解することが、解決への第一歩です。

「#N/A」が意味するもの

「#N/A」は、“Not Available” または “No Value Available” の略語です。日本語に訳すと、「利用不可」や「該当する値が見つかりません」といった意味になります。

このエラーは主に、以下のような「検索・参照系」の関数を使ったときに発生します。

  • VLOOKUP関数:指定した値を範囲の左端列から探し、同じ行の別の列の値を返す関数。
  • HLOOKUP関数:VLOOKUPの横(行)バージョン。
  • LOOKUP関数:一行または一列の範囲から値を検索する関数。
  • MATCH関数:範囲内で指定した値が何番目にあるかを返す関数。
  • XLOOKUP関数:VLOOKUPやHLOOKUPの進化版で、より柔軟な検索が可能な関数(Microsoft 365などで利用可能)。

これらの関数は、いずれも「何かを探す」という共通の目的を持っています。そして、一生懸命探した結果、「お探しのものは、残念ながらこのリストにはありませんでした」という結論に至ったとき、Excelは「#N/A」を返すのです。

#N/Aは「悪いエラー」ではない

Excelには様々な種類のエラーメッセージが存在します。

エラー値 主な原因
#VALUE! 数値が入るべきところに文字列が入るなど、引数の種類が間違っている。
#REF! 参照していたセルが削除されるなどして、セル参照が無効になった。
#DIV/0! ゼロ(0)で割り算をしようとした。
#NAME? 関数名や名前を付けた範囲のスペルが間違っている。
#NUM! 大きすぎる、または小さすぎる数値など、関数で無効な数値が使われた。

これらのエラーは、数式の書き方や構造そのものに問題があることを示しています。いわば、「計算のルール違反」を指摘されている状態です。

一方で、#N/Aエラーは「ルール違反」ではありません。関数は正しく動作し、指定された範囲をくまなく探しました。その「探した結果、見つからなかった」という事実を報告しているに過ぎないのです。

例えば、社員名簿から「鈴木一郎」さんの社員番号をVLOOKUP関数で検索したとします。もし名簿に「鈴木一郎」さんがいなければ、#N/Aエラーが返るのは当然の結果であり、むしろ正確な挙動と言えます。このエラーのおかげで、私たちは「鈴木一郎さんは名簿に登録されていない」あるいは「入力した名前に誤字があるかもしれない」と気づくことができるのです。

このように、#N/Aエラーは問題解決の手がかりを与えてくれる、ポジティブな側面も持っていることを覚えておきましょう。


第2章:なぜ#N/Aエラーが出るのか? – 5つの主な原因を徹底解剖

N/Aエラーの意味が分かったところで、次になぜ具体的にこのエラーが発生するのか、その原因を探っていきましょう。初心者が陥りがちな5つの代表的な原因を、具体的な例とともに詳しく解説します。

原因1:検索値が検索範囲に本当に存在しない

これは最もシンプルで、最も一般的な原因です。
VLOOKUP関数などで検索しようとしている値(検索値)が、検索対象のデータリスト(検索範囲)の中に、純粋に存在しないケースです。

例:商品リストにない商品を検索してしまった

以下のような「商品マスタ」と「売上リスト」があったとします。売上リストのC列に、商品マスタから単価を引っ張ってくるためにVLOOKUP関数を入力します。

商品マスタ
| 商品コード | 商品名 | 単価 |
| :— | :— | :— |
| A-001 | りんご | 120 |
| A-002 | みかん | 80 |
| A-003 | バナナ | 100 |

売上リスト
| 商品コード | 数量 | 単価(ここにVLOOKUP) |
| :— | :— | :— |
| A-002 | 10 | 80 |
| A-001 | 5 | 120 |
| B-001 | 3 | #N/A |

セルC4に入力した数式は =VLOOKUP(A4, 商品マスタの範囲, 3, FALSE) です。
しかし、検索値である「B-001」は、商品マスタのどこにも存在しません。そのため、VLOOKUP関数は「見つかりませんでした」という意味で#N/Aエラーを返します。これは関数の正しい動作です。

対処法:
* 検索値(この場合は「B-001」)が正しいか確認する。タイピングミスはないか?
* 検索範囲(商品マスタ)に、そのデータが本当に登録されているか確認する。登録漏れではないか?

原因2:余分なスペースや見えない文字が含まれている

これは初心者が見落としがちで、非常によくある原因です。
人の目には同じに見えても、Excelにとっては全くの別物として扱われるケースです。セルの値の前後に、知らず知らずのうちにスペース(空白)が入っていることがよくあります。

例:「商品A」と「商品A 」は違う!

以下のように、見た目は同じ「りんご」でも、片方に余分なスペースが入っていると#N/Aエラーが発生します。

  • 検索したい値:"りんご"
  • データリストの値:"りんご "(末尾に半角スペース)

この2つは、人間には同じに見えますが、Excelは文字コードレベルで判断するため、「違うデータ」と認識してしまいます。スペースはセルの先頭、末尾、あるいは単語の間に複数入っている可能性もあります。

また、Webページからコピー&ペーストしたデータなどには、スペース以外にも改行コード印刷されない特殊文字(非表示文字)が含まれていることもあります。

対処法:
* TRIM関数を使う:セルの値の前後にある余分なスペースと、単語間の重複したスペースを削除してくれます。
=TRIM(セル)
* CLEAN関数を使う:改行などの印刷できない文字を削除してくれます。
=CLEAN(セル)
* 両方を組み合わせる:=TRIM(CLEAN(セル)) とすることで、よりクリーンなデータにできます。

データがおかしいと思われる場合は、別の列にこれらの関数を使ってデータを整形し、その整形後のデータを検索値や検索範囲として利用すると、エラーが解消されることがあります。

原因3:数値と文字列など、データの形式が異なっている

これも非常に厄介で、気づきにくい原因の一つです。
見た目は同じ「123」という数字でも、Excelの内部では「数値」としての123と、「文字列」としての123は区別されます。

例:社員番号「1001」(文字列)と「1001」(数値)

  • 検索値:手入力した 1001 (数値として扱われる)
  • 検索範囲のデータ:別のシステムからエクスポートした 1001 (文字列として扱われることが多い)

この場合、VLOOKUP関数は両者を「違うもの」と判断し、#N/Aエラーを返します。

見分け方:
* セルの表示位置:デフォルト設定では、数値は右揃え文字列は左揃えで表示されます。
* 緑の三角マーク:文字列として保存されている数値のセルには、左上に緑色の小さな三角マークが表示されることがあります。このセルを選択すると「!」マークが現れ、「数値に変換する」というオプションが表示されます。

対処法:
* データ形式を統一する
* 文字列を数値に変換する
1. 対象のセル範囲を選択します。
2. 緑の三角と「!」マークが表示されたら、それをクリックし「数値に変換する」を選択します。
3. または、空いているセルに「1」と入力してコピーし、対象範囲に「形式を選択して貼り付け」→「乗算」で貼り付けるというテクニックもあります。
* 数値を文字列に変換する
1. 別の列に =TEXT(セル, "0") のようにTEXT関数を使って変換します。
2. セルの書式設定を「文字列」にしてから、F2キーを押して再度入力し直す(ダブルクリックしてEnterでも可)。
* 関数内で形式を合わせる
* 検索値を文字列にしたい場合:=VLOOKUP(A1&"", 範囲, ...) のように、&"" を付けて強制的に文字列に変換する。
* 検索範囲の文字列を数値として扱いたい場合(上級者向け):配列数式などを使う必要がありますが、まずはデータソースを修正するのが基本です。

原因4:VLOOKUP関数の「検索の型」の指定ミス

VLOOKUP関数を使い慣れていない人が、特によくやってしまうミスです。
VLOOKUP関数には4つの引数(カッコの中に入れる情報)がありますが、その4番目の引数である [範囲検索] が非常に重要です。

=VLOOKUP(検索値, 範囲, 列番号, [範囲検索])

この [範囲検索] には、TRUE(近似一致)またはFALSE(完全一致)を指定します。

  • FALSE (完全一致):検索値と完全に一致する値だけを探します。見つからなければ#N/Aエラーを返します。商品コードや社員番号など、ユニークなIDを検索する場合は必ずFALSEを指定してください。
  • TRUE (近似一致):検索値と完全に一致する値がない場合、検索値以下の最大値を探します。このオプションを使うには、検索範囲の左端の列が必ず昇順(小さい順)に並べ替えられている必要があります。並べ替えられていないと、誤った結果を返したり、#N/Aエラーになったりします。

初心者が陥る罠:
この第4引数 [範囲検索] は省略可能です。そして、省略した場合はTRUE(近似一致)が指定されたとみなされます
多くの初心者はこの引数を省略してしまい、意図せず近似一致検索を行ってしまいます。データが昇順に並んでいない場合、予期せぬ#N/Aエラーや、もっと怖い「間違ったデータが表示される」という事態を引き起こします。

教訓:
VLOOKUP関数を使うときは、検索の意図が明確な場合を除き、常に第4引数に FALSE を指定する癖をつけましょう!

原因5:検索範囲の指定が間違っている

これも基本的なミスですが、意外とやってしまいがちです。

ケースA:検索範囲の最初の列に検索値が含まれていない

VLOOKUP関数は、指定した検索範囲の「一番左の列」しか検索しません。
例えば、以下のような表で「商品名」をキーにして単価を検索しようとしたとします。

商品コード 商品名 単価
A-001 りんご 120
A-002 みかん 80

この表全体(商品コードの列から)を検索範囲に指定して、=VLOOKUP("りんご", 範囲全体, 3, FALSE) と入力しても、VLOOKUPは一番左の「商品コード」の列しか見に行かないため、「りんご」という値を見つけることができず、#N/Aエラーになります。
正しくは、「商品名」の列から始まる範囲を検索範囲として指定する必要があります。

ケースB:数式をコピーしたときに範囲がずれてしまう(絶対参照のつけ忘れ)

あるセルで正しく動作するVLOOKUP関数を作成し、それをオートフィルで下のセルにコピーしたときに#N/Aエラーが発生することがあります。

C2セルに入力した数式: =VLOOKUP(A2, E2:G10, 2, FALSE)

この数式をC3セルにコピーすると、Excelは気を利かせて参照セルを自動的にずらし、以下の数式に書き換えます。

C3セルの数式: =VLOOKUP(A3, E3:G11, 2, FALSE)

検索値の A2A3 になるのは正しいですが、検索範囲の E2:G10 まで E3:G11 にずれてしまっています。これにより、検索範囲の先頭行(E2セル)が検索対象から外れてしまい、本来見つかるはずのデータが見つからず#N/Aエラーになることがあります。

対処法:
検索範囲はコピーしても動かないように、「絶対参照」で固定します。セルの番地を $ マークで囲むことで設定できます。

正しい数式: =VLOOKUP(A2, $E$2:$G$10, 2, FALSE)

E2:G10 を入力した後に F4キー を押すと、$E$2:$G$10 のように簡単に絶対参照に切り替えることができます。


第3章:#N/Aエラーをスマートに非表示にする5つの方法

さて、#N/Aエラーの原因が特定できたら、次はいよいよその対処法です。エラーをそのまま表示させておくと見栄えが悪いですし、その列を SUM 関数で合計しようとしても、合計値までエラーになってしまいます。
ここでは、#N/Aエラーを空白や指定した文字列に置き換える、代表的で便利な5つの方法を紹介します。あなたのExcelのバージョンや目的に合わせて最適なものを選んでください。

方法1:IFERROR関数を使う(最もおすすめで万能な方法)

対応バージョン:Excel 2007以降

IFERROR関数は、#N/Aエラーを含むすべての種類のエラーをまとめて処理できる、非常に強力で使いやすい関数です。初心者の方には、まずこの方法を覚えることを強くお勧めします。

構文:
=IFERROR(値, エラーの場合の値)

  • :通常通り計算させたい数式(VLOOKUP関数など)をここに入れます。
  • エラーの場合の値:もし「値」の計算結果がエラーになった場合に、代わりに表示させたい値を指定します。

使い方:
元のVLOOKUP関数を、まるごとIFERROR関数の中に入れてあげるだけです。

元の数式: =VLOOKUP(A2, $E$2:$G$10, 2, FALSE)

これをIFERROR関数で包み込みます。

例1:エラーを空白(ブランク)にしたい場合
=IFERROR(VLOOKUP(A2, $E$2:$G$10, 2, FALSE), "")
「エラーの場合の値」に ""(ダブルクォーテーション2つ)を指定すると、セルには何も表示されなくなります。

例2:エラーを「該当なし」という文字にしたい場合
=IFERROR(VLOOKUP(A2, $E$2:$G$10, 2, FALSE), "該当なし")
エラーの代わりに「該当なし」という親切なメッセージを表示できます。

例3:エラーを「0」にしたい場合
=IFERROR(VLOOKUP(A2, $E$2:$G$10, 2, FALSE), 0)
後で合計値を計算したい場合などに便利です。

メリット:
* 数式がシンプルで直感的。
* #N/Aだけでなく、#VALUE!など他の種類のエラーも一括で処理できる。
* 汎用性が非常に高い。

デメリット:
* すべてのエラーを同じように処理してしまうため、#N/A以外の予期せぬエラー(数式の記述ミスなど)に気づきにくくなる可能性がある。

方法2:IFNA関数を使う(#N/Aエラーだけを狙い撃ち)

対応バージョン:Excel 2013以降

IFNA関数は、その名の通り #N/Aエラー専用のIFERROR関数です。

構文:
=IFNA(値, NAエラーの場合の値)

  • :通常通り計算させたい数式を入れます。
  • NAエラーの場合の値:もし「値」の計算結果が#N/Aエラーだった場合に、代わりに表示させたい値を指定します。

使い方:
IFERROR関数と全く同じです。

=IFNA(VLOOKUP(A2, $E$2:$G$10, 2, FALSE), "該当なし")

IFERROR関数との違い:
IFNA関数は、#N/Aエラーのみを対象とします。もしVLOOKUP関数の記述ミスなどで#NAME?や#REF!といった別のエラーが発生した場合、IFNA関数はそれを無視し、エラーをそのまま表示します。

メリット:
* #N/Aエラー(データが見つからない)と、その他のエラー(数式のミスなど)を区別して対処できる。
* 数式の意図がより明確になる。

デメリット:
* Excel 2010以前のバージョンでは使えない。互換性を考慮する必要がある場合は注意。

どちらを使うべき?
* とりあえずエラーを非表示にしたいなら → IFERROR
* 「データがない」という#N/Aエラーと「数式がおかしい」という他のエラーを分けて考えたいなら → IFNA

方法3:IF関数とISNA関数を組み合わせる(古いExcelでも使える伝統的な方法)

対応バージョン:すべてのExcelバージョン

IFERROR関数やIFNA関数が登場する前(Excel 2003以前)は、この方法が主流でした。古いバージョンのExcelファイルとの互換性を保つ必要がある場合に役立ちます。

構成要素:
* ISNA関数=ISNA(値) のように使い、カッコの中の値が#N/AエラーであればTRUE(真)、そうでなければFALSE(偽)を返します。
* IF関数=IF(論理式, 真の場合, 偽の場合) のように使い、論理式の結果に応じて表示する値を変えます。

これらを組み合わせると、以下のようになります。

構文:
=IF(ISNA(VLOOKUP(...)), "エラー時の表示", VLOOKUP(...))

日本語にすると、「もし、VLOOKUPの結果が#N/Aエラーならば、”エラー時の表示”を返しなさい。そうでなければ、通常のVLOOKUPの結果を返しなさい」という意味になります。

例:
=IF(ISNA(VLOOKUP(A2, $E$2:$G$10, 2, FALSE)), "", VLOOKUP(A2, $E$2:$G$10, 2, FALSE))

メリット:
* Excelのどのバージョンでも動作する高い互換性。

デメリット:
* 数式が長くなり、複雑に見える。
* 同じVLOOKUP関数を2回記述する必要がある。(現代のPCではパフォーマンスへの影響はほぼ無視できますが、構造的に冗長です)

基本的にはIFERRORやIFNAが使える環境であればそちらを優先し、この方法は互換性が必要な場合の「奥の手」として覚えておくとよいでしょう。

方法4:条件付き書式を使う(数式はそのまま、見た目だけ変える)

ここまでの方法は数式を書き換えるものでしたが、この方法は数式やセルの値は一切変更せず、見た目だけを非表示にするテクニックです。

「エラー値は計算上必要ないが、後でどのデータがエラーだったかを確認したい」といった場合に非常に有効です。

手順:

  1. N/Aエラーを非表示にしたいセル範囲(例:C2:C100)を選択します。

  2. リボンの「ホーム」タブ → 「スタイル」グループの中にある「条件付き書式」をクリックします。
  3. ドロップダウンメニューから「新しいルール」を選択します。
  4. 「新しい書式ルール」ダイアログボックスで、「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選びます。
  5. 下の「次の数式を満たす場合に値を書式設定」のボックスに、以下の数式を入力します。
    =ISNA(C2)
    C2 の部分は、選択範囲の左上隅のセルを指定します。絶対参照($C$2)ではなく、相対参照(C2)にしてください。
  6. 書式」ボタンをクリックします。
  7. 「セルの書式設定」ダイアログボックスが開くので、「フォント」タブを選択し、「」を「」に設定します。
  8. 「OK」を2回クリックしてダイアログボックスを閉じます。

これで、セルに#N/Aエラーが表示されている場合のみ、文字色が背景と同じ白になり、見えなくなります。セルをアクティブにすれば数式バーには#N/Aが残っているのが確認できますし、COUNTIF関数でエラーの数を数えることも可能です。

メリット:
* 元のエラー情報を保持したまま、視覚的に非表示にできる。
* 後からエラーの原因分析がしやすい。

デメリット:
* SUM関数などで合計すると、結果はやはりエラーになる。
* 他の人がファイルを見たときに、なぜ空白になっているのか分かりにくい可能性がある。

方法5:ジャンプ機能と削除(エラーセルを一括で空白にする)

これは、エラーが出ているセルを一括で選択して、その内容を削除するという、最も直接的な方法です。数式ごと削除してしまうため、一度きりのレポート作成など、データが今後更新されない場合に有効です。

手順:

  1. 処理対象のセル範囲を選択します。
  2. リボンの「ホーム」タブ → 「編集」グループの中にある「検索と選択」をクリックし、「ジャンプ」を選択します。(ショートカットキー: Ctrl + G または F5
  3. 「ジャンプ」ダイアログボックスの左下にある「セル選択」ボタンをクリックします。
  4. 「選択オプション」ダイアログボックスで、「数式」のラジオボタンを選択します。
  5. その下にあるチェックボックスのうち、「エラー値のみにチェックを入れ、他のチェック(数値、文字、論理値)は外します。
  6. 「OK」をクリックします。
  7. すると、選択した範囲内の#N/Aエラー(および他のエラー)が発生しているセルだけがすべて選択された状態になります。
  8. この状態でキーボードの Delete キーを押します。

これで、選択されていたエラーセルの内容(数式)がすべて削除され、空白セルになります。

メリット:
* 大量のエラーセルを一度に、素早く処理できる。

デメリット:
* 数式そのものが消えてしまうため、元に戻せなくなる(Ctrl+ZでのUndoは可能)。
* 元のデータが更新されても、削除したセルは再計算されない。


第4章:応用編 – #N/Aエラーをさらに活用するテクニック

N/Aエラーをただ消すだけでなく、積極的にデータ分析に活用することで、あなたのExcelスキルはさらに向上します。ここでは、一歩進んだ#N/Aエラーの活用術を3つ紹介します。

テクニック1:COUNTIF関数で#N/Aエラーの数を数える

2つのリストを突合させた際に、どれくらいのデータがマッチしなかったのか(= #N/Aエラーが出たのか)を把握したいことがあります。これはデータの品質を確認する上で重要な指標になります。

COUNTIF関数を使うと、#N/Aエラーの数を簡単に数えることができます。

構文:
=COUNTIF(範囲, "#N/A")

例えば、C2:C100の範囲にVLOOKUP関数の結果が表示されているとして、どこか空いているセルに以下の数式を入力します。

=COUNTIF(C2:C100, "#N/A")

これにより、範囲内に存在する#N/Aエラーの個数が返されます。
「全100件のデータのうち、15件がマスター未登録」といった状況を即座に把握でき、データクレンジングの必要性を判断するのに役立ちます。

テクニック2:フィルター機能で#N/Aエラーの行だけを抽出する

エラーが出ている行だけを絞り込んで、原因をまとめて調査したい場合に便利なのがフィルター機能です。

手順:

  1. データリストのヘッダー(見出し)行を選択します。
  2. データ」タブ → 「並べ替えとフィルター」グループの「フィルター」をクリックします。(ショートカットキー: Ctrl + Shift + L
  3. N/Aエラーが出ている列の見出しに表示された▼ボタンをクリックします。

  4. フィルターのドロップダウンリストが表示されます。リストの中ほどにある値の一覧から、「(すべて選択)」のチェックを一度外し、「#N/A」のチェックボックスのみにチェックを入れます。
  5. 「OK」をクリックします。

これで、#N/Aエラーが発生している行だけが表示されます。これにより、エラーの原因となっているデータ(例えば、商品マスタに存在しない商品コードなど)を一覧で確認し、効率的に修正作業を進めることができます。

テクニック3:マクロ(VBA)で#N/Aエラーを処理する(上級者向け)

毎日のように大量のデータを処理する場合など、手作業でのエラー処理が面倒な場合は、マクロ(VBA)を使って自動化することも可能です。ここでは簡単な例だけ紹介します。

例えば、選択した範囲内のすべての#N/Aエラーを空白にするマクロは以下のようになります。

“`vba
Sub ConvertNaToBlank()
‘ On Error Resume Next はエラーを無視して次のコードに進む命令
‘ これにより、セルがエラーでない場合に発生するエラーを回避する
On Error Resume Next

' 選択範囲内の数式が入ったセルのうち、エラー値のセルだけを対象に、値を "" (空白) にする
Selection.SpecialCells(xlCellTypeFormulas, xlErrors).Value = ""

' On Error の設定を元に戻す
On Error GoTo 0

End Sub
“`

このコードは、第3章の方法5「ジャンプ機能と削除」の操作を自動化したものに近いですが、こちらは数式を残したまま値だけを書き換えるような応用も可能です。VBAに興味がある方は、このようなアプローチもあることを知っておくと良いでしょう。


まとめ:#N/Aエラーを味方につけて、Excelマスターへの道を歩もう

今回は、Excel初心者がつまずきやすい「#N/A」エラーについて、その正体から原因、そして具体的な対処法までを詳しく解説しました。

最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。

  • #N/Aは「敵」ではなく「サイン」:「探したけど見つからなかったよ」というExcelからの親切なメッセージです。計算式のミスとは区別して考えましょう。
  • 原因は5つを疑え:①データが存在しない、②余分なスペース、③データ形式の違い(数値vs文字列)、④VLOOKUPの型指定ミス、⑤検索範囲の間違い。エラーが出たら、まずはこれらを確認する癖をつけましょう。
  • 対処法はIFERRORが基本:エラーを非表示にしたい場合、まずはIFERROR関数を使うのが最も簡単で確実です。目的に応じてIFNAや条件付き書式なども使い分けることで、より洗練されたシートを作成できます。
  • エラーは活用できるCOUNTIFやフィルター機能を使えば、#N/Aエラーはデータ品質をチェックするための強力なツールに変わります。

N/Aエラーは、正しく理解すれば決して怖いものではありません。むしろ、あなたのデータがどのような状態にあるかを教えてくれる、頼もしい相棒にさえなり得ます。

次に#N/Aエラーに遭遇したときは、焦らずにこの記事で学んだことを思い出してください。原因を冷静に突き止め、最適な方法でスマートに対処する。その一つ一つの積み重ねが、あなたをExcelマスターへと導いてくれるはずです。

これで、あなたのExcel作業がよりスムーズで、快適なものになることを心から願っています。

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