【2024年版】MongoDB Atlasの使い方入門!5ステップでDBを構築
はじめに
現代のアプリケーション開発において、データベースは欠かせない中心的な役割を担っています。特に、柔軟なデータ構造と高いスケーラビリティを持つNoSQLデータベースは、多くのWebサービスやモバイルアプリで採用が進んでいます。その中でも、MongoDBはドキュメント指向データベースのデファクトスタンダードとして、世界中の開発者から絶大な支持を得ています。
しかし、データベースを自前でサーバーに構築し、運用・管理していくのは簡単なことではありません。セキュリティパッチの適用、パフォーマンスの監視、定期的なバックアップ、障害発生時の対応など、専門的な知識と多くの時間が必要となります。
この課題を解決するのが、MongoDB社自らが提供する公式クラウドデータベースサービス(DBaaS: Database as a Service)、MongoDB Atlasです。
MongoDB Atlasとは?
MongoDB Atlasは、フルマネージドのMongoDBサービスです。フルマネージドとは、データベースの構築から運用、監視、バックアップ、スケーリングといった面倒な作業をすべてプラットフォーム側が自動で行ってくれることを意味します。開発者はインフラの心配をすることなく、本来の目的であるアプリケーション開発に集中できるのです。
なぜMongoDB Atlasが選ばれるのか?
MongoDB Atlasが多くの開発者に選ばれる理由は多岐にわたります。
- 簡単なセットアップ: ウェブ上のGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を数回クリックするだけで、わずか数分で高可用性なデータベース環境を構築できます。
- フルマネージドの利便性: サーバーのプロビジョニング、OSのアップデート、MongoDBのパッチ適用、バックアップなどをすべて自動化。インフラ管理のコストと手間を大幅に削減します。
- 高いスケーラビリティ: アプリケーションの成長に合わせて、ボタン一つでデータベースのスペックを上げたり(スケールアップ)、サーバー台数を増やしたり(スケールアウト)できます。Auto-Scaling機能を使えば、トラフィックの増減に応じて自動でリソースを調整することも可能です。
- 堅牢なセキュリティ: 通信の暗号化、保存データの暗号化、IPアドレスによるアクセス制限、詳細なユーザー権限設定など、エンタープライズレベルのセキュリティ機能が標準で提供されます。
- マルチクラウド対応: Amazon Web Services (AWS)、Google Cloud Platform (GCP)、Microsoft Azureという3大クラウドプロバイダーから、好きなプラットフォームとリージョン(データセンターの場所)を選択できます。
この記事で学べること
この記事は、MongoDBやクラウドデータベースが初めてという初心者の方でも、安心して読み進められるように構成されています。以下の5つの簡単なステップに沿って、実際に手を動かしながらMongoDB Atlas上にデータベースを構築し、最終的には自分のアプリケーションから接続するところまでを、2024年現在の最新のUIに基づいて徹底的に解説します。
- ステップ1:MongoDB Atlasアカウントの作成
- ステップ2:クラスターの作成(データベースサーバーの構築)
- ステップ3:データベースユーザーの作成とIPアクセスの設定
- ステップ4:データベースとコレクションの作成
- ステップ5:アプリケーションからの接続
この記事を読み終える頃には、あなたはMongoDB Atlasの基本的な使い方をマスターし、自信を持って自分のプロジェクトで活用できるようになっているでしょう。さあ、一緒にクラウドデータベースの世界への第一歩を踏み出しましょう!
ステップ1:MongoDB Atlasアカウントの作成
まずは、MongoDB Atlasを利用するためのアカウントを作成するところから始めます。無料で始められるので、クレジットカードの登録も不要です。
1. 公式サイトへアクセス
まず、お使いのウェブブラウザでMongoDB Atlasの公式サイトにアクセスします。
MongoDB Atlas公式サイト: https://www.mongodb.com/cloud/atlas
画面中央や右上に「Try Free」や「Start Free」といったボタンがあるので、そちらをクリックしてください。
2. サインアップ(ユーザー登録)
サインアップ画面が表示されます。登録方法はいくつか用意されています。
- Googleアカウントで登録: 普段お使いのGoogleアカウントと連携して簡単に登録できます。
- GitHubアカウントで登録: GitHubアカウントをお持ちの開発者はこちらも便利です。
- メールアドレスで登録: 上記アカウントを使いたくない場合は、直接情報を入力して登録します。会社名(Company)、名前(First Name, Last Name)、メールアドレス(Email)、パスワード(Password)を入力します。
ご自身の都合の良い方法を選択して登録を進めてください。利用規約の同意チェックボックスにチェックを入れ、「Sign Up」または「Create your Atlas account」ボタンをクリックします。
メールアドレスで登録した場合、確認メールが送信されます。メールボックスを確認し、記載されているリンクをクリックしてアカウントを有効化してください。
3. 初回セットアップ
アカウントが作成されると、簡単なアンケート形式の初回セットアップ画面が表示されることがあります。これは、あなたの利用目的に合った情報を提供するためのもので、回答は任意です。
- What is your goal today? (今日の目標は?)
Learn MongoDB
(MongoDBを学ぶ)Build a new application
(新しいアプリケーションを構築する) など
- What type of application are you building? (どのようなアプリケーションを構築しますか?)
Web Application
(Webアプリケーション)Mobile App
(モバイルアプリ) など
- What is your preferred language? (好きなプログラミング言語は?)
JavaScript
Python
Java
など
いくつか質問に答えると、その内容に基づいてダッシュボードがパーソナライズされます。特にこだわりがなければ、正直に答えるか、スキップしても問題ありません。
4. ダッシュボードへようこそ
セットアップが完了すると、MongoDB Atlasの管理画面であるダッシュボードに移動します。ここで、MongoDB Atlasの基本的な階層構造について理解しておきましょう。
- Organization (組織): 最上位の管理単位。複数のプロジェクトをまとめることができます。通常、1つの企業やチームで1つのOrganizationを作成します。
- Project (プロジェクト): Organizationの下に位置し、関連するデータベースクラスターをまとめる単位です。例えば、「開発環境用プロジェクト」「本番環境用プロジェクト」のように分けることができます。アカウント作成時に「Project 0」という名前のプロジェクトが自動で作成されています。
- Cluster (クラスター): Projectの中に作成される、実際のデータベースサーバー群です。高可用性を実現するために、複数のサーバー(レプリカセット)で構成されています。
最初の画面では、多くの場合、最初のクラスターを作成するよう促す画面が表示されます。次のステップで、このクラスターを作成していきましょう。
ステップ2:クラスターの作成(データベースサーバーの構築)
アカウントが作成できたら、次はいよいよデータベースの本体となる「クラスター」を作成します。クラスターとは、簡単に言うと、データを実際に保存し、処理を行うデータベースサーバーの集まりです。MongoDB Atlasでは、冗長性(耐障害性)と高可用性を確保するため、デフォルトで3台のサーバーからなるレプリカセットとしてクラスターが構成されます。
1. クラスター作成の開始
ダッシュボードの「Database」セクションにある「Create」ボタンや、「Create a deployment」といったボタンをクリックして、クラスター作成プロセスを開始します。
2. クラスタータイプの選択
最初に、どのタイプのクラスターを作成するかを選択します。MongoDB Atlasは、用途に応じていくつかのプランを提供しています。
- M0 (Free Tier): 学習や小規模な個人プロジェクト、プロトタイプ開発に最適な無料プランです。
- M10+ (Dedicated): 本番環境向けの有料プラン。専用のサーバーリソースが割り当てられ、より高いパフォーマンスと多くの機能が利用できます。
- Serverless: リクエストに応じて自動でスケールする従量課金制のプラン。トラフィックが予測不能なアプリケーションに適しています。
今回は入門記事ですので、迷わず「M0 (Free Tier)」を選択しましょう。「Create a cluster」ボタンをクリックします。
M0無料プランの主な仕様
- ストレージ容量: 512MB
- メモリ(RAM): 共有
- vCPU: 共有
- バックアップ: 限定的なバックアップのみ(Point-in-Timeリカバリは不可)
- 一部の高度な機能(VPC Peeringなど)は利用不可
これらの制限はありますが、MongoDBの基本的な機能を学び、小規模なアプリケーションを動かすには十分すぎるスペックです。
3. クラウドプロバイダーとリージョンの選択
次に、クラスターをどのクラウドプロバイダーのどのデータセンターに構築するかを選択します。
- Cloud Provider (クラウドプロバイダー): AWS, Google Cloud, Azureの3つから選択できます。無料プランで選択できるリージョンはプロバイダーによって若干異なりますが、基本的にはどれを選んでも性能に大きな差はありません。好みで選んで大丈夫です。
- Region (リージョン): 実際にサーバーが設置される地理的な場所です。これは非常に重要な選択です。アプリケーションをホストするサーバーや、アプリケーションの利用者がいる場所から物理的に最も近いリージョンを選択することで、レイテンシー(通信遅延)を最小限に抑えることができます。
日本に住んでいる、あるいは日本向けのサービスを開発している場合は、東京リージョン(AWSなら ap-northeast-1
, GCPなら asia-northeast1
, Azureなら japaneast
)を選択するのがベストプラクティスです。
4. クラスター名の設定
ページの下部で、クラスターに名前を付けることができます。デフォルトでは「Cluster0」という名前になっていますが、後で見て分かりやすいように、プロジェクトに関連した名前に変更することをお勧めします。
例: my-first-cluster
, blog-app-db
, dev-cluster
5. クラスターの作成
すべての設定を確認したら、画面右下にある緑色の「Create Cluster」ボタンをクリックします。
これでクラスターの作成指示は完了です。Atlasがバックグラウンドでサーバーのプロビジョニング(準備)や設定を開始します。この処理には通常3分から5分ほどかかります。
クラスターのデプロイが完了すると、ステータスが「Provisioning」から緑色の「Active」に変わります。この待っている間に、次のステップであるセキュリティ設定を進めることができます。多くの場合、クラスター作成直後にセキュリティ設定を促す画面(Quickstart)が表示されますので、それに沿って進めていきましょう。
ステップ3:データベースユーザーの作成とIPアクセスの設定
データベースをインターネット上に公開するということは、セキュリティ対策が不可欠です。不正なアクセスから大切なデータを守るため、MongoDB Atlasでは強力なセキュリティ機能が標準で備わっています。
ここでは、データベースにアクセスするための「鍵」と「通行許可証」を設定します。
- データベースユーザー (Authentication): 誰がデータベースにアクセスできるのか(認証)。IDとパスワードのセットです。
- IPアクセスリスト (Authorization): どこからデータベースにアクセスできるのか(認可)。接続を許可するIPアドレスのリストです。
この2つの設定が揃って、初めてデータベースに接続できます。
1. データベースユーザーの作成
クラスター作成中に表示されるQuickstart画面、またはクラスター詳細画面の左側のメニューから「Database Access」を選択して、ユーザー作成画面に進みます。
「Add New Database User」ボタンをクリックします。
- Authentication Method: 「Password」が選択されていることを確認します。
- Username: データベースに接続するためのユーザー名を入力します。
例:myAppUser
,admin
-
Password: パスワードを設定します。ここで、「Autogenerate Secure Password」ボタンを使用することを強くお勧めします。これにより、推測されにくい強力なパスワードが自動で生成されます。
【重要】 生成されたパスワードは、必ずコピーして安全な場所(1PasswordやLastPassなどのパスワードマネージャー)に保管してください。このパスワードは後でアプリケーションから接続する際に必須となります。自分でパスワードを設定する場合も、十分に長く複雑なものにしましょう。 -
Database User Privileges (ユーザー権限): このユーザーにどのような操作を許可するかを設定します。
- Built-in Role: よく使われる権限のセットがプリセットとして用意されています。学習目的であれば、
Read and write to any database
(readWriteAnyDatabase
)を選択しておくと、すべてのデータベースに対する読み書きが可能になり便利です。 - 【補足】 本番環境では、最小権限の原則に従い、アプリケーションが必要とする特定のデータベースやコレクションに対する読み書き権限のみを与える、より限定的なカスタムロールを作成することが推奨されます。
- Built-in Role: よく使われる権限のセットがプリセットとして用意されています。学習目的であれば、
すべての項目を入力したら、「Add User」ボタンをクリックしてユーザーを作成します。
2. IPアクセスリストの設定
次に、どこからのアクセスを許可するかを設定します。左側のメニューから「Network Access」を選択します。
「Add IP Address」ボタンをクリックします。
-
Access List Entry: ここに接続を許可したいIPアドレスをCIDR(サイダー)形式で入力します。MongoDB Atlasは、この設定を簡単にするための便利な機能を提供しています。
ADD MY CURRENT IP ADDRESS
: 最も推奨される方法です。このボタンをクリックすると、現在あなたがインターネットに接続しているグローバルIPアドレスが自動で入力されます。自宅やオフィスの固定IP環境から開発している場合に最適で、セキュリティも高まります。ALLOW ACCESS FROM ANYWHERE
: IPアドレス欄に0.0.0.0/0
を設定します。これは、あらゆるIPアドレスからの接続を許可するという設定です。
【警告】 この設定は、IPアドレスが頻繁に変わる環境(カフェのWi-Fiなど)での一時的な開発には便利ですが、セキュリティリスクが非常に高くなります。悪意のある第三者からの攻撃対象になる可能性があるため、本番環境では絶対に使用しないでください。学習目的で利用する場合も、作業が終わったらより限定的なIPアドレスに変更するか、エントリーを削除することを強く推奨します。
-
Comment (任意): どの場所からのIPアドレスか分かるように、メモを残しておくと便利です。(例:
Home Office
,Dev Server
)
設定が完了したら、「Confirm」ボタンをクリックします。IPアクセスリストの設定がクラスター全体に反映されるまで、数分かかる場合があります。
これでセキュリティに関する基本的な設定は完了です。ユーザーという「鍵」と、IPアクセスリストという「通行許可証」を手に入れ、データベースに安全に接続する準備が整いました。
ステップ4:データベースとコレクションの作成
サーバー(クラスター)の準備とセキュリティ設定が完了したので、次はいよいよデータを格納するための箱、つまり「データベース」と「コレクション」を作成します。
ここで、MongoDBの基本的なデータ構造について、リレーショナルデータベース(RDB、例: MySQL, PostgreSQL)と比較しながら理解しておきましょう。
RDB の概念 | MongoDB の概念 | 説明 |
---|---|---|
データベース | データベース | データの大きなまとまり。1つのクラスター内に複数作成可能。 |
テーブル | コレクション | 関連するドキュメントの集まり。テーブルに相当する。 |
レコード/行 | ドキュメント | 1つのデータ単位。JSONに似たBSON形式で表現される。 |
カラム/列 | フィールド | ドキュメント内のキーと値のペア。 |
MongoDBでは、まず「データベース」を作成し、その中にデータを格納するための「コレクション」を作成します。
方法1:サンプルデータをロードする(初心者におすすめ)
MongoDB Atlasの機能をすぐに試してみたい初心者にとって、最も簡単な方法がサンプルデータセットのロードです。
- クラスターの概要画面に戻り、「Browse Collections」タブをクリックします。
- コレクションがまだ一つもない場合、画面に「Load a Sample Dataset」というボタンが表示されます。これをクリックします。
- 確認のポップアップが表示されたら、再度「Load Sample Dataset」をクリックします。
Atlasがバックグラウンドでデータのロードを開始します。これには5分から10分程度かかる場合があります。完了すると、sample_mflix
(映画情報)、sample_airbnb
(宿泊施設情報)、sample_geospatial
(地理空間データ)など、様々なテーマのデータベースとコレクションが自動的に作成されます。
これらの豊富なデータを使って、クエリの練習をしたり、データの可視化を試したりすることができ、学習に非常に役立ちます。
方法2:手動でデータベースとコレクションを作成する
もちろん、自分で一からデータベースを構築することもできます。
- 「Browse Collections」タブに移動します。
- 「Add My Own Data」または画面上部にある「Create Database」ボタンをクリックします。
- ポップアップウィンドウが表示されるので、以下の情報を入力します。
- Database Name: 新しく作成するデータベースの名前を入力します。(例:
myStore
) - Collection Name: そのデータベースの中に作成する最初のコレクションの名前を入力します。(例:
products
)
- Database Name: 新しく作成するデータベースの名前を入力します。(例:
- 「Create」ボタンをクリックします。
これだけで、myStore
という名前のデータベースと、その中に products
という空のコレクションが作成されました。画面左側のデータベースリストに、今作成したものが表示されていることを確認できます。
GUIからドキュメントを挿入してみる
作成したコレクションにデータを追加してみましょう。
- 左側のリストから
myStore
データベースの中のproducts
コレクションを選択します。 - 画面に「Insert Document」というボタンが表示されるのでクリックします。
-
ポップアップが表示され、JSON形式でデータを入力できるエディタが現れます。
{}
の中に、キーと値を入力していきます。_id
は自動で生成されるユニークなIDですが、自分で指定することもできます。今回は自動生成に任せましょう。- 「+」ボタンをクリックし、「Add Field After
_id
」を選択して、新しいフィールドを追加します。
json
{
"_id": {
"$oid": "..."
},
"name": "High-Performance Laptop",
"price": 1999.99,
"category": "Electronics",
"inStock": true,
"tags": [
"computer",
"powerful",
"new"
]
}
4. 入力が終わったら「Insert」ボタンをクリックします。
これで、最初のドキュメント(データ)が products
コレクションに追加されました。GUI上でデータがどのように格納されているかを確認できます。
ステップ5:アプリケーションからの接続
いよいよ最終ステップです。構築したMongoDB Atlasのデータベースに、外部のプログラムやツールから接続します。接続方法はいくつかありますが、ここでは代表的な3つの方法を紹介します。
- Drivers: Node.js, Python, Javaなどのプログラミング言語から接続する方法。
- MongoDB Compass: 公式のGUI(グラフィカル)クライアントツールから接続する方法。
mongosh
: CUI(コマンドライン)の対話型シェルから接続する方法。
接続文字列(Connection String)の取得
どの方法で接続するにしても、接続文字列という特別なURLのような情報が必要になります。
- クラスターの概要画面に戻り、「Connect」ボタンをクリックします。
- 接続方法を選択するポップアップが表示されます。
1. Drivers経由での接続 (Node.jsの例)
Webアプリケーションなど、プログラムからデータベースを操作する場合にこの方法を使います。ここでは、JavaScriptとの親和性が高く広く使われているNode.jsを例に解説します。
- 「Connect」のポップアップで、「Drivers」を選択します。
- Driverのリストから「Node.js」を選択し、バージョンは最新のものを選択します。
- Connection Stringが表示されます。これが接続に必要な情報です。
mongodb+srv://<username>:<password>@my-first-cluster.xxxxx.mongodb.net/...
という形式になっています。
【重要】- この文字列の中の
<password>
の部分を、ステップ3で作成したデータベースユーザーの実際のパスワードに置き換える必要があります。 <username>
には、同じくステップ3で作成したユーザー名が入っています。
- この文字列の中の
- 「Copy」ボタンをクリックして、接続文字列をクリップボードにコピーします。
Node.jsサンプルコード
それでは、実際にNode.jsから接続し、データの挿入と検索を行ってみましょう。
まず、Node.jsプロジェクトを作成し、公式のMongoDBドライバをインストールします。
“`bash
プロジェクト用のディレクトリを作成し移動
mkdir atlas-connect-test
cd atlas-connect-test
npmプロジェクトを初期化
npm init -y
mongodbドライバをインストール
npm install mongodb
“`
次に、index.js
というファイルを作成し、以下のコードを貼り付けます。
“`javascript
// index.js
const { MongoClient, ServerApiVersion } = require(‘mongodb’);
// 接続文字列をここにペーストします。
//
// 【注意】本番コードでは、接続文字列を直接コードに書かず、環境変数を使用することを強く推奨します。
const uri = “mongodb+srv://myAppUser:[email protected]/?retryWrites=true&w=majority&appName=Cluster0”;
// MongoClientインスタンスを作成
const client = new MongoClient(uri, {
serverApi: {
version: ServerApiVersion.v1,
strict: true,
deprecationErrors: true,
}
});
async function run() {
try {
// MongoDBサーバーに接続します
await client.connect();
console.log(“Successfully connected to MongoDB Atlas!”);
// 使用するデータベースとコレクションを選択します
const database = client.db("myStore");
const products = database.collection("products");
// --- 1. ドキュメントを1件挿入 ---
const newProduct = {
name: "Wireless Mouse",
price: 49.99,
category: "Accessories",
inStock: false,
tags: ["ergonomic", "bluetooth"]
};
const insertResult = await products.insertOne(newProduct);
console.log(`A document was inserted with the _id: ${insertResult.insertedId}`);
// --- 2. ドキュメントを1件検索 ---
const query = { name: "Wireless Mouse" };
const foundProduct = await products.findOne(query);
console.log("Found a product:", foundProduct);
} catch (err) {
console.error(“An error occurred:”, err);
} finally {
// 接続を閉じるのを忘れないようにしましょう
await client.close();
console.log(“Connection closed.”);
}
}
run().catch(console.dir);
“`
【実行前の確認】
* uri
変数の値に、先ほどコピーした自分の接続文字列を貼り付けます。
* YOUR_ACTUAL_PASSWORD
の部分を、ステップ3で設定したパスワードに正しく置き換えます。
準備ができたら、ターミナルで以下のコマンドを実行します。
bash
node index.js
コンソールに以下のような出力が表示されれば成功です!
Successfully connected to MongoDB Atlas!
A document was inserted with the _id: 65f...
Found a product: { _id: 65f..., name: 'Wireless Mouse', ... }
Connection closed.
2. MongoDB Compass (GUIツール)での接続
Compassは、データを視覚的に操作できる非常に便利なデスクトップアプリケーションです。
- 「Connect」のポップアップで、「Compass」を選択します。
- まだインストールしていない場合は、表示されるダウンロードリンクからOSに合ったCompassをダウンロードし、インストールします。
- Compass用の接続文字列が表示されるので、コピーします。
- Compassを起動すると、「New Connection」画面が表示されます。コピーした接続文字列を一番上の入力欄に貼り付けます。
- 接続文字列からユーザー名などは自動で解析されますが、パスワードは手動で入力する必要があります。 ステップ3で設定したパスワードを入力してください。
- 「Connect」ボタンをクリックします。
接続に成功すると、左側のペインにデータベースとコレクションの一覧が表示されます。コレクション名をクリックすれば、中のドキュメントをスプレッドシートのように閲覧・編集・削除することができ、非常に直感的です。
3. mongosh
(コマンドライン)での接続
mongosh
は、ターミナルからMongoDBを対話的に操作するためのコマンドラインシェルです。素早いデータ確認や管理タスクに適しています。
- 「Connect」のポップアップで、「Shell」を選択します。
mongosh
がインストールされていない場合は、表示される手順に従ってインストールします。(npmやHomebrewなどで簡単にインストールできます)mongosh
用の接続文字列がmongosh "mongodb+srv://..."
の形式で表示されるので、これを丸ごとコピーします。- お使いのターミナルを開き、コピーしたコマンドを貼り付けてEnterキーを押します。
- パスワードの入力を求められるので、ステップ3で設定したパスワードを入力してEnterキーを押します。(入力中の文字は画面に表示されません)
接続に成功すると、プロンプト(test>
や my-first-cluster [primary] >
のような表示)が現れます。これで、MongoDBのコマンドを直接実行できます。
“`bash
データベースの一覧を表示
show dbs
myStore データベースに切り替え
use myStore
products コレクション内のすべてのドキュメントを検索
db.products.find()
新しいドキュメントを挿入
db.products.insertOne({ name: “Keyboard”, price: 75 })
終了
exit
“`
発展的なトピック:Atlasのさらなる可能性
ここまでで、MongoDB Atlasの基本的なセットアップと利用方法をマスターしました。しかし、Atlasの魅力はこれだけではありません。ここでは、あなたの開発をさらに加速させる、いくつかの高度な機能を紹介します。
-
監視 (Monitoring) とパフォーマンス改善 (Performance Advisor)
Atlasのダッシュボードには「Metrics」タブがあり、CPU使用率、メモリ、ディスクI/O、接続数などをリアルタイムでグラフ表示できます。また、「Performance Advisor」は、実行に時間のかかっているクエリ(スロークエリ)を自動で検出し、パフォーマンスを改善するためのインデックス作成を提案してくれる非常に強力な無料ツールです。 -
バックアップ (Backup) とリストア (Restore)
無料のM0クラスターでは基本的なバックアップのみですが、M10以上の有料プランにアップグレードすると、継続的なクラウドバックアップが有効になります。これにより、過去24時間以内の任意の時点にデータベースを復元するPoint-in-Time Recoveryが可能になり、万が一のデータ損失時にも安心です。 -
スケーリング (Scaling)
アプリケーションの人気が出てアクセスが増えても心配ありません。Atlasでは「Cluster Tier」の設定を変更するだけで、CPUやメモリ、ストレージを数クリックで簡単にスケールアップできます。また、サーバー台数を増やすスケールアウトも可能です。「Auto-Scaling」を有効にすれば、負荷に応じて自動でスケールアップ・ダウンさせることもできます。 -
Atlas Search, Atlas Vector Search
データベースに保存されたデータに対して、Google検索のような高度な全文検索機能を追加できるのが「Atlas Search」です。さらに、近年注目を集めるAI/機械学習アプリケーション向けに、ベクトルデータを高速に検索できる「Atlas Vector Search」も提供されており、類似画像検索やセマンティック検索などを簡単に実装できます。 -
Atlas Charts, App Services
「Atlas Charts」を使えば、プログラミング不要でデータベース内のデータをドラッグ&ドロップで可視化し、美しいダッシュボードを作成できます。「App Services」は、データベースの変更をトリガーに関数を実行したり(Triggers)、サーバーレスなAPIを構築したりできるバックエンドサービスで、開発を大幅に効率化します。
これらの機能は、MongoDB Atlasが単なるデータベースサービスではなく、包括的なアプリケーションデータプラットフォームであることを示しています。
まとめ
この記事では、2024年版としてMongoDB Atlasの基本的な使い方を、以下の5つのステップに沿って詳細に解説しました。
- アカウント作成: 無料で簡単にサインアップし、管理ダッシュボードにアクセスしました。
- クラスター作成: 無料のM0クラスターを、クラウドプロバイダーとリージョンを選択して数分で構築しました。
- セキュリティ設定: データベースユーザーを作成して「誰が」アクセスできるかを定義し、IPアクセスリストで「どこから」アクセスできるかを制限しました。
- DB/コレクション作成: サンプルデータのロードや手動での作成を通じて、データを格納する場所を準備しました。
- アプリケーションからの接続: Node.js、GUIツールのCompass、CUIの
mongosh
という代表的な3つの方法で、作成したデータベースに接続し、実際にデータを操作しました。
MongoDB Atlasを利用することで、これまで専門知識が必要だったデータベースの構築や運用管理の大部分を自動化し、開発者は本来の価値創造、つまり優れたアプリケーションを開発することに集中できます。
今回作成した無料のM0クラスターは、機能の学習やプロトタイピングには最適です。ぜひ、この記事で学んだことをベースに、様々なクエリを試したり、自分のアプリケーションと連携させたりして、MongoDB Atlasのパワフルさと利便性を体感してみてください。
次のステップへ
さらに深く学びたい方には、以下のリソースが役立ちます。
- MongoDB University: MongoDB社が提供する無料のオンライン学習コース。初心者から上級者まで、体系的に学べます。
- MongoDB Atlas 公式ドキュメント: すべての機能に関する詳細な情報が網羅されています。
この記事が、あなたのMongoDB Atlasを使った開発の第一歩となり、クラウドネイティブなアプリケーション構築の旅を力強くサポートできれば幸いです。Happy coding