Ubuntuデスクトップ環境でClash GUIクライアントを使うための究極ガイド
序文
現代のインターネット環境は、自由と制約が複雑に絡み合った空間となっています。私たちは日々、情報の海を航海していますが、時には見えない壁、すなわち地理的なアクセス制限や、プライバシーを脅かす監視の目に直面します。このような状況において、自身のネットワーク接続をより細かく、インテリジェントに制御するためのツールが求められています。その答えの一つが「Clash」です。
Clashは、Go言語で書かれた強力なルールベースのプロキシコアエンジンです。その最大の特徴は、トラフィックをどのプロキシサーバー経由で送信するか、あるいは直接接続するかを、ドメイン名、IPアドレス、地理情報など、極めて詳細なルールに基づいて自動的に振り分けることができる点にあります。しかし、Clashコア自体はコマンドラインで動作するツールであり、その設定はYAML形式のテキストファイルを手動で編集する必要があるため、多くのデスクトップユーザーにとっては敷居が高いものでした。
ここで登場するのが、Clash GUIクライアントです。GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)クライアントは、Clashコアの複雑な機能を、直感的なウィンドウ、ボタン、メニューを通じて操作可能にしてくれます。これにより、専門的な知識がないユーザーでも、Clashの強力なネットワーク制御機能を簡単に利用できるようになります。
このガイドは、Linuxディストリビューションの中でも特に人気の高いUbuntuデスクトップ環境に焦点を当て、Clash GUIクライアントを導入し、設定し、そして最大限に活用するための包括的な手順を詳細に解説することを目的としています。Ubuntuユーザーが、プライバシーを保護し、地理的制約を乗り越え、より自由で安全なインターネット体験を実現するための一助となることを目指します。
本ガイドは、Linuxの基本的な操作に慣れている初心者から、ネットワーク設定をさらに深く探求したい中級者まで、幅広い読者を対象としています。さあ、UbuntuでClashの世界を冒険し、あなたのインターネット接続を次のレベルへと引き上げましょう。
第1章: Clashの基礎知識
GUIクライアントの設定に入る前に、その根幹をなすClashコアの基本的な概念を理解しておくことが重要です。これにより、設定項目が何を意味するのか、そしてなぜそのように設定するのかを深く理解することができます。
1.1 Clashコアとは?
Clashコアは、Dreamacro氏によって開発された、クロスプラットフォームで動作するプロキシ・ルーティング・エンジンです。その心臓部は、設定ファイルに基づいてネットワークトラフィックをインテリジェントに管理する機能にあります。
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ルールベースのルーティング: これがClashの最大の特徴です。従来のVPNやプロキシツールが「全ての通信をサーバー経由にする」か「全ての通信を直接接続する」かの二者択一だったのに対し、Clashは「どの通信を」「どのプロキシを経由させるか」をルールに基づいて決定できます。例えば、「日本のサイトは直接接続」、「米国の動画配信サイトは米国のサーバー経由」、「広告関連のドメインはブロック」といった複雑な振り分けを自動で行うことができます。
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YAML形式の設定ファイル: Clashの設定は、人間が読み書きしやすいYAML(
YAML Ain't Markup Language
)形式のファイル(通常はconfig.yaml
)で記述されます。このファイルには、プロキシサーバーの情報、プロキシグループの定義、そしてルーティングルールのリストが含まれています。GUIクライアントは、このYAMLファイルをユーザーに代わって生成・管理してくれるツールと言えます。 -
多彩なプロトコルのサポート: Clashは、現代の主要なプロキシプロトコルを幅広くサポートしています。Shadowsocks(SS), ShadowsocksR(SSR), VMess(V2Ray), Trojan, Snellなど、様々なプロトコルに対応しており、ユーザーは自身の利用するサービスに合わせて柔軟に選択できます。
1.2 Clashのアーキテクチャ
Clashは、バックグラウンドで動作する「コアエンジン」と、ユーザーが操作する「GUIクライアント」が分離したアーキテクチャを採用しています。
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コアエンジン: 実際のプロキシ機能、ルールに基づいたルーティング、DNS処理など、ネットワーク関連の全ての重い処理を担当します。これは通常、ヘッドレス(GUIを持たない)なバイナリとして動作します。
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GUIクライアント: コアエンジンを制御するためのフロントエンドです。GUIクライアントは、Clashコアが提供するRESTful APIを通じて、コアの状態を監視したり、設定を変更したりします。具体的には、プロキシサーバーの切り替え、プロキシモードの変更、システムプロキシのON/OFFといった操作をGUIから行うと、API経由でコアエンジンに指令が送られます。
この分離アーキテクチャには大きな利点があります。コアの開発とGUIの開発を独立して進めることができるため、様々な開発者が異なる特徴を持つGUIクライアントを開発できます。Windows, macOS, Linux, Androidなど、あらゆるプラットフォームで統一されたClash体験を提供できるのも、このアーキテクチャのおかげです。
1.3 なぜUbuntuでClashを使うのか?
Ubuntu(およびLinux全般)でClashを利用することには、他のOSにはない独自のメリットがあります。
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強力なネットワーク制御: Linuxは元来、ネットワーク機能が非常に強力です。Clashを組み合わせることで、システム全体の通信はもちろん、コマンドラインツールや開発用のコンテナ(Dockerなど)に至るまで、あらゆるネットワークトラフィックを精緻にコントロールできます。
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プライバシーとセキュリティの向上: 信頼できるプロキシサーバーを経由することで、ISP(インターネットサービスプロバイダ)による通信の監視を回避し、公衆Wi-Fiなど安全でないネットワーク上での通信を暗号化して保護することができます。
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開発・研究用途: 海外のAPIをテストする際や、特定の地域からのアクセスをシミュレートする必要がある開発者にとって、Clashは簡単にIPアドレスを切り替えられる便利なツールとなります。また、ネットワークトラフィックの解析や研究においても、ルールベースのルーティングは非常に役立ちます。
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コンテンツへの自由なアクセス: 地理的な制限(ジオブロッキング)により閲覧できないウェブサイトやサービスに、適切な地域のプロキシサーバーを経由してアクセスすることが可能になります。
これらの理由から、ClashはUbuntuデスクトップユーザーにとって、単なるプロキシツール以上の価値を持つ、強力なネットワーク管理ツールとなり得るのです。
第2章: GUIクライアントの選択
Clashコアを快適に利用するためには、優れたGUIクライアントの選択が不可欠です。幸いなことに、Linux向けにもいくつかの素晴らしい選択肢が存在します。ここでは主要なクライアントを紹介し、このガイドで推奨するクライアントとその理由を説明します。
2.1 主要なClash GUIクライアントの紹介
Clash Verge
- 特徴: 比較的新しいクライアントですが、急速に人気を集めています。UIの構築にTauriフレームワークを使用しており、軽量でモダンなデザインが特徴です。最大のアドバンテージは、標準のClashコアだけでなく、より高機能なフォークである「Clash.Meta」コアをネイティブにサポートしている点です。Clash.Metaは、VLESSやHysteria2といった新しいプロトコルへの対応や、より高度なルーティング機能を提供します。
- 長所:
- Clash.Metaコアを統合し、最新の機能を利用できる。
- Tauriベースで軽量かつ高速な動作。
- 洗練された直感的なユーザーインターフェース。
- Linux, Windows, macOSに公式対応。
- 活発に開発が続けられている。
- 短所:
- 歴史が浅いため、古くからのクライアントに比べると情報が若干少ない場合がある。
Clash for Windows (CFW) for Linux
- 特徴: 長年にわたり、多くのプラットフォームでClash GUIのデファクトスタンダードとされてきたクライアントです。Electronフレームワークをベースに構築されており、非常に多機能で安定しています。Linux版も提供されており、多くのユーザーに利用されてきました。
- 長所:
- 長年の実績があり、非常に安定している。
- インターネット上に豊富な情報やチュートリアルが存在する。
- 多くのユーザーに親しまれたUI。
- 短所:
- オリジナルの開発が停滞しており、近年はメジャーアップデートがない。
- Clash.Metaの最新機能への追従が遅れる可能性がある。
- Electronベースであるため、Clash Vergeに比べるとリソース消費がやや大きい。
その他の選択肢
- Fclash: Flutterで書かれたクロスプラットフォームGUI。シンプルなUIが特徴です。
- ClashX: macOS専用の非常に人気のあるクライアント。Linuxでは使用できませんが、Clashエコシステムを語る上で欠かせない存在です。
2.2 このガイドで推奨するクライアント: Clash Verge
数ある選択肢の中から、本ガイドではClash Vergeを推奨し、その設定方法を詳しく解説していきます。その理由は以下の通りです。
- Clash.Metaコアのサポート: 今後のClashエコシステムの中心は、より高機能なClash.Metaへと移行していくことが予想されます。Clash VergeはClash.Metaを前提に設計されており、そのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
- 開発の活発さ: プロジェクトが現在も活発にメンテナンス・更新されており、新しい機能の追加やバグ修正が迅速に行われています。これは長期的に安心して利用する上で非常に重要な要素です。
- パフォーマンスとUI/UX: Tauriベースのアーキテクチャは、従来のElectronアプリに比べてメモリ使用量が少なく、動作も軽快です。UIもモダンで分かりやすく、初心者でも直感的に操作を覚えることができます。
これらの理由から、Clash Vergeは現在のUbuntuデスクトップ環境において、最もバランスの取れた優れた選択肢であると結論付けられます。次章から、早速Clash Vergeのインストールと設定を始めていきましょう。
第3章: Clash Vergeのインストールと初期設定
この章では、Ubuntuデスクトップ環境にClash Vergeをインストールし、初めて起動するまでの手順を具体的に説明します。いくつかのインストール方法がありますが、ここでは最も一般的で簡単な .deb
パッケージを使用する方法を中心に解説します。
3.1 前提条件の確認
インストールを始める前に、お使いのUbuntuシステムが準備できているか確認しましょう。
- Ubuntuのバージョン: 本ガイドは Ubuntu 22.04 LTS を基準にしていますが、20.04 LTS以降のバージョンであれば同様の手順で問題なく動作するはずです。
- 基本的なコマンドラインツール:
wget
やcurl
といったファイルをダウンロードするためのツールが必要です。通常はデフォルトでインストールされていますが、もしなければ以下のコマンドでインストールしてください。
bash
sudo apt update
sudo apt install wget curl
3.2 Clash Vergeのダウンロード
Clash Vergeは、開発者のGitHubリポジトリの「Releases」ページからダウンロードできます。
-
アーキテクチャの確認: まず、お使いのPCのCPUアーキテクチャを確認します。これは、正しいバージョンのファイルを選ぶために重要です。ターミナルを開き、以下のコマンドを実行してください。
bash
uname -mx86_64
と表示された場合: あなたのシステムは amd64 です。aarch64
またはarm64
と表示された場合: あなたのシステムは arm64 です。(Raspberry Pi 4 や一部のARMベースのラップトップなど)
-
Releasesページへのアクセス: ウェブブラウザでClash VergeのGitHub Releasesページにアクセスします。検索エンジンで「Clash Verge GitHub Releases」と検索すれば簡単に見つかります。(URL:
https://github.com/zzzgydi/clash-verge/releases
) -
ファイルの選択: 最新バージョンのリリースを探し、「Assets」セクションを展開します。先ほど確認したアーキテクチャに合った
.deb
ファイルを見つけます。x86_64
の場合:clash-verge_x.x.x_amd64.deb
という名前のファイルを探します。(x.x.x
はバージョン番号)aarch64
の場合:clash-verge_x.x.x_arm64.deb
という名前のファイルを探します。
-
コマンドラインからのダウンロード (推奨): GUIでダウンロードしても構いませんが、ターミナルを使うとよりスムーズです。ファイルのリンクを右クリックして「リンクのアドレスをコピー」し、ターミナルで
wget
コマンドを使ってダウンロードします。(例:バージョン 1.5.11 の amd64 版をダウンロードする場合)
bash
wget https://github.com/zzzgydi/clash-verge/releases/download/v1.5.11/clash-verge_1.5.11_amd64.deb
3.3 .debパッケージを使ったインストール
ダウンロードが完了したら、dpkg
コマンドを使ってパッケージをインストールします。
-
インストールコマンドの実行: ダウンロードしたファイルがあるディレクトリで、以下のコマンドを実行します。ファイル名は適宜ダウンロードしたものに置き換えてください。
bash
sudo dpkg -i clash-verge_*.deb -
依存関係エラーの解決:
dpkg
でのインストール中に、依存関係に関するエラーが表示されることがあります。これはClash Vergeが必要とするライブラリがシステムに不足している場合に発生しますが、心配は無用です。以下のコマンドを実行するだけで、aptが自動的に不足しているパッケージをインストールし、設定を完了してくれます。bash
sudo apt install -fこのコマンドを実行した後、Clash Vergeのインストールは正常に完了します。
3.4 AppImageを使ったインストール (代替方法)
.deb
パッケージの代わりに、AppImage形式でインストールする方法もあります。AppImageは、アプリケーションとその依存関係を一つのファイルにまとめたもので、システムを汚さずに実行できる利点があります。
- AppImageファイルのダウンロード: Releasesページから、
.AppImage
という拡張子のファイルをダウンロードします。 -
実行権限の付与: ダウンロードしたファイルに実行権限を与えます。
bash
chmod +x clash-verge-*.AppImage -
実行: これでファイルを実行できるようになります。
bash
./clash-verge-*.AppImage初回実行時に、アプリケーションメニューにショートカットを作成するか尋ねられます。「はい」を選択すると、他のアプリケーションと同様にメニューから起動できるようになり便利です。
3.5 初回起動と初期設定ウィザード
インストールが完了したら、アプリケーションメニューから「Clash Verge」を探して起動します。
初回起動時には、いくつかの基本的な設定を行うためのウィザードが表示されます。
-
Clashコアの選択とダウンロード:
- Clash Vergeは、Clashコア(
Clash
)とClash.Metaコア(Clash-meta
)のどちらを使用するか選択できます。特別な理由がない限り、より高機能なClash-meta
を選択することを強く推奨します。 - 選択すると、Clash Vergeが自動的にGitHubから最新のコアバイナリをダウンロードし、適切な場所に配置してくれます。インターネット接続が必要です。
- Clash Vergeは、Clashコア(
-
GeoIP/GeoSiteデータベースのダウンロード:
- Clashが地理情報に基づいてルーティング(例:「日本のIPアドレスへのアクセスは直接接続」)を行うためには、IPアドレスと国を対応付けるGeoIPデータベース、およびドメインと国を対応付けるGeoSiteデータベースが必要です。
- ウィザードがこれらのデータベースをダウンロードするよう促してきますので、これも実行してください。
これらの初期設定が完了すると、Clash Vergeのメイン画面が表示されます。これで、Clashを使用するための基本的な準備が整いました。次の章では、実際にプロキシサーバーの情報をClash Vergeに設定する方法を学びます。
第4章: プロファイルのインポートと管理
Clashの心臓部が「ルール」であるなら、そのルールやプロキシサーバー情報を具体的に記述したものが「プロファイル」です。Clash Vergeを実際に機能させるには、このプロファイルをインポートする必要があります。
4.1 プロファイルとは何か?
Clashにおけるプロファイルとは、以下の情報を含むYAML形式のテキストファイルです。
- Proxies: 接続可能なプロキシサーバーのリスト(サーバーアドレス、ポート、パスワード、暗号化方式など)。
- Proxy Groups: 複数のプロキシサーバーを束ねたグループ。例えば、自動的に最速のサーバーを選択する「自動選択グループ」や、手動でサーバーを選ぶ「手動選択グループ」などを作成できます。
- Rules: トラフィックをどのように振り分けるかを定義したルールのリスト。
自分でゼロからこのファイルを作成することも可能ですが、通常は利用しているプロキシサービスの提供者から、専用のURLとして提供されます。
4.2 サブスクリプションURLの入手
多くのプロキシサービスプロバイダーは、「Clash サブスクリプションURL」を提供しています。これは、ユーザー専用のプロファイル設定を動的に生成してくれるURLです。
- サブスクリプションの利点:
- 簡単: 長い設定ファイルをコピー&ペーストする必要がなく、URLを一つ入力するだけで済みます。
- 自動更新: プロバイダーがサーバーを追加・変更した場合、クライアントが定期的にこのURLにアクセスし、最新のサーバーリストを自動で取得してくれます。
まず、ご自身が契約しているプロキシサービスのウェブサイトにログインし、「サブスクリプション」や「設定」といったセクションから「Clash用」または「Clash互換」のサブスクリプションURLをコピーしてください。
【重要】 サブスクリプションURLには、あなたのアカウントに紐づく機密情報が含まれています。絶対に他人と共有したり、公開の場に投稿したりしないでください。
4.3 Clash Vergeへのプロファイルのインポート
サブスクリプションURLを入手したら、Clash Vergeにインポートします。
-
Clash Vergeのウィンドウを開き、左側のサイドバーメニューから「Profiles」アイコン(書類のようなアイコン)をクリックします。
-
プロファイル画面の上部にある入力欄に、先ほどコピーしたサブスクリプションURLを貼り付けます。
-
入力欄の右側にある「Download」ボタンをクリックします。
Clash VergeがURLにアクセスし、プロファイルを取得します。成功すると、ダウンロードボタンの下のリストに新しいプロファイルがカード形式で表示されます。カードにはプロファイル名やサーバー数などの情報が表示されます。
これでプロファイルのインポートは完了です。非常に簡単であることがお分かりいただけたでしょう。
4.4 ローカルYAMLファイルからのインポート
もしサブスクリプションURLではなく、config.yaml
のようなプロファイルファイル自体を持っている場合は、それを直接インポートすることもできます。
- ドラッグ&ドロップ: プロファイル画面に、お使いのファイルマネージャーから
.yaml
ファイルを直接ドラッグ&ドロップします。 - ファイル選択: プロファイル画面の右上にある「Import」ボタンをクリックし、ファイル選択ダイアログからファイルを選びます。
4.5 プロファイルの更新と管理
プロファイルは一度インポートすれば終わりではありません。定期的なメンテナンスが必要です。
-
プロファイルの選択(有効化):
インポートしたプロファイルの中から、現在使用したいものを一つ選択します。リスト内のプロファイルカードをクリックすると、そのカードの枠がハイライトされ、有効化されたことを示します。 -
手動更新:
プロバイダーのサーバー情報が更新された可能性がある場合、手動でプロファイルを更新できます。プロファイルカードの右側にある更新アイコン(円を描く矢印)をクリックすると、サブスクリプションURLから最新の情報を再取得します。 -
自動更新:
Clash Vergeはプロファイルを自動で更新する機能も備えています。- 左側サイドバーの「Settings」アイコン(歯車アイコン)をクリックします。
- 「Profiles」セクションに進みます。
- 「Update interval (minutes)」の項目で、プロファイルを自動更新する間隔を分単位で設定できます。例えば「1440」と入力すれば、24時間ごとに更新されます。頻繁な更新は不要なトラフィックを生むため、数時間から1日程度の間隔が一般的です。
-
プロファイルの削除:
不要になったプロファイルは、プロファイルカードの右側にあるゴミ箱アイコンをクリックして削除できます。
これでプロファイルの準備は万端です。次の章では、いよいよClashを有効にし、実際にインターネットの通信をプロキシ経由にする方法を学びます。
第5章: 基本的な使い方
プロファイルをインポートしたら、いよいよClashの核心機能であるプロキシを有効にしてみましょう。この章では、システム全体の通信をClash経由にするための基本的な操作を解説します。
5.1 システムプロキシの有効化
Clash Vergeがシステム全体のアプリケーション(ウェブブラウザ、メッセンジャーアプリなど)の通信を制御するためには、「システムプロキシ」を有効にする必要があります。
- Clash Vergeの左側サイドバーから「Settings」アイコン(歯車アイコン)をクリックします。
- 「System Proxy」というセクションを探します。
- ここの「Set as system proxy」というトグルスイッチを ON にします。
この操作により、Clash VergeはUbuntuのネットワーク設定を自動的に変更し、HTTPおよびHTTPSトラフィックがClashの待機ポート(デフォルトでは 7890
)を通過するように設定します。
確認方法 (オプション):
ターミナルで以下のコマンドを実行すると、GNOMEデスクトップ環境のプロキシ設定が変更されたことを確認できます。
bash
gsettings get org.gnome.system.proxy mode
gsettings get org.gnome.system.proxy.http host
gsettings get org.gnome.system.proxy.http port
mode
が 'manual'
に、host
が '127.0.0.1'
に、port
が 7890
(Clash Vergeで設定したポート)になっていれば、正しく設定されています。
注意: Clash Vergeを終了する際や、プロキシを使わない時は、必ずこのトグルスイッチを OFF に戻してください。OFFにすると、システムプロキシ設定が元に戻り、直接インターネットに接続するようになります。これを忘れると、Clashが動作していないのにプロキシ設定だけが残ってしまい、「インターネットに繋がらない」という状況に陥ります。
5.2 プロキシモードの選択
システムプロキシを有効にしたら、次にClashがどのように通信を処理するかを決定する「モード」を選択します。
Clash Vergeの左側サイドバーから「General」アイコン(ホームアイコン)をクリックし、メイン画面に戻ります。画面上部に、現在のモードが表示されているドロップダウンメニューがあります。主に3つのモードがあります。
-
Rule (ルールモード):
- 最も推奨されるモードです。
- プロファイルに記述されたルールに基づいて、通信を自動的に振り分けます。
- 例えば、「
youtube.com
へのアクセスはアメリカのサーバーへ」「example.jp
へのアクセスは直接接続」「広告サイトへのアクセスはブロック」といった判断を自動で行います。 - 日常的な利用において最も便利で効率的なモードです。
-
Global (グローバルモード):
- 全ての通信(ルールで
DIRECT
やREJECT
に指定されたものを除く)を、現在選択されている一つのプロキシサーバー経由で送信します。 - 一時的に全ての通信を特定の国からにしたい場合などに使用します。どのサーバーを経由するかは、「Proxies」タブで選択します。
- 全ての通信(ルールで
-
Direct (ダイレクトモード):
- 全ての通信をプロキシを経由させず、直接インターネットに接続します。
- Clashのプロキシ機能を一時的に完全に無効にしたい場合に使用します。システムプロキシがONの状態でも、このモードにすれば通信はClashをバイパスします。
通常は Ruleモード を選択しておけば問題ありません。
5.3 プロキシサーバーの選択
RuleモードやGlobalモードでどのプロキシサーバー(またはプロキシグループ)を使用するかは、「Proxies」タブで選択します。
- 左側サイドバーから「Proxies」アイコン(地球儀のようなアイコン)をクリックします。
- 画面上部に、現在のモード(Global, Rule, Direct)が表示されます。その下には、プロファイルで定義された「プロキシグループ」がリストアップされています。
- Globalグループ: Globalモード時に使用されるサーバーを選択する場所です。
- その他のグループ: Ruleモードでは、ルールによって様々なグループが使用されます。例えば、「海外サイト用」のグループや「動画配信サイト用」のグループなど、プロファイルの設計によって多岐にわたります。
- サーバーの選択: 各グループ名をクリックすると、そのグループに含まれる個別のプロキシサーバーが表示されます。使用したいサーバー名をクリックすると、そのサーバーが選択されます。
- 遅延(レイテンシー)のテスト: 各サーバー名の横にある稲妻アイコンや、グループ全体の遅延をテストするボタンをクリックすると、Clash Vergeが各サーバーへのPingを送信し、応答時間(ミリ秒単位)を表示します。数値が小さいほど、そのサーバーは高速である可能性が高いです。これにより、快適なサーバーを選ぶ際の指標になります。
多くのプロファイルには「自動選択 (URL-Test)」や「Auto」といった名前のグループが含まれています。このグループを選択しておくと、Clashが定期的にグループ内のサーバーの遅延をテストし、最も応答の速いサーバーを自動的に選んでくれるため、非常に便利です。
5.4 接続の確認
全ての設定が完了したら、実際にプロキシが機能しているか確認してみましょう。
- ウェブブラウザを開きます。
- 「what is my ip」などのキーワードで検索し、IPアドレス確認サイト(例:
ipinfo.io
)にアクセスします。 - 表示されたIPアドレスと国が、あなたが「Proxies」タブで選択したサーバーの所在地と一致していれば、設定は成功です。
これで、Ubuntuデスクトップの通信はClash Vergeによって賢く管理されるようになりました。
第6章: 高度な設定とカスタマイズ
Clash Vergeの基本的な使い方をマスターしたら、次はさらに強力な機能を探求してみましょう。この章では、Tun Mode、ルールのカスタマイズ、トラブルシューティングなど、より高度なトピックについて解説します。
6.1 Tun Modeの活用
システムプロキシ設定は、ほとんどのデスクトップアプリケーション(特にウェブブラウザ)で機能しますが、一部のアプリケーションやコマンドラインツールは、システムのプロキシ設定を無視して直接通信しようとします。このような場合に非常に強力なのが Tun Mode です。
-
Tun Modeとは?
Tun Modeを有効にすると、Clashは仮想的なネットワークインターフェース(TUNデバイス)を作成します。そして、システムのルーティングテーブルを書き換えることで、全てのIPパケットをこの仮想インターフェースに強制的に送り込みます。Clashはそのパケットを捕捉し、ルールに基づいて処理した後、適切なプロキシサーバーまたは物理ネットワークインターフェースに送り出します。
簡単に言えば、アプリケーションがプロキシ設定を意識するかどうかにかかわらず、ネットワーク層で全ての通信を強制的にClashの管理下に置く仕組みです。 -
Tun Modeを有効にする手順:
- 設定画面へ移動: Clash Vergeの「Settings」→「TUN Mode」セクションに移動します。
- 有効化: 「TUN Mode」のトグルスイッチをONにします。
- 初回設定: 初回有効時には、ヘルパースクリプトのインストールや権限設定のために、ユーザーのパスワードを求められる場合があります。指示に従ってパスワードを入力してください。これにより、Clash Vergeがネットワーク設定を変更するために必要な権限を得ます。
- 設定の確認:
- Stack: 通常は
gVisor
またはSystem
を選択します。gVisor
は互換性が高いですが、System
の方がパフォーマンスが良い場合があります。問題がなければgVisor
のままで良いでしょう。 - DNS Hijacking: ClashにシステムのDNSリクエストを強制的に傍受させる設定です。DNSリークを防ぐために有効にしておくことを推奨します。
- Stack: 通常は
-
Tun Modeのメリットとデメリット:
- メリット:
- システムプロキシを無視するアプリケーション(一部のゲーム、開発ツールなど)にもプロキシを適用できる。
- UDPトラフィックも(プロトコルが対応していれば)プロキシできる。
- DNSリークをより確実に防止できる。
- デメリット:
- システムプロキシに比べて設定がやや複雑。
- システムのネットワーク設定をより深く変更するため、他のVPNソフトウェアなどと競合する可能性がある。
- 若干のパフォーマンスオーバーヘッドが発生する場合がある。
- メリット:
使い分け: 日常的なブラウジングではシステムプロキシで十分ですが、プロキシが効かないアプリケーションがある場合や、より厳密なネットワーク制御が必要な場合にTun Modeを試してみてください。Tun Modeを有効にする際は、システムプロキシはOFFにしておくのが一般的です。
6.2 ルールのカスタマイズ
Clashの真価は、その柔軟なルール設定にあります。インポートしたプロファイルのルールが自分の使い方に合わない場合、Clash Verge上で簡単にカスタマイズできます。
-
ルールの確認と編集:
- 「Profiles」セクションで、編集したいプロファイルカードの編集アイコン(鉛筆アイコン)をクリックします。
- プロファイルエディタが開きます。左側のメニューから「Rules」を選択すると、現在のルールリストが表示されます。
- ルールは上から下に順に評価され、最初にマッチしたルールが適用されます。
FINAL
ルールは、どのルールにもマッチしなかった通信に適用される最終的なルールです。 - 「New」ボタンから新しいルールを追加できます。
- Type:
DOMAIN-SUFFIX
(ドメインの末尾が一致),DOMAIN-KEYWORD
(ドメインにキーワードが含まれる),GEOIP
(IPの国情報が一致),IP-CIDR
(IPアドレス範囲が一致) など、様々なルールタイプを選択できます。 - Value: ルールの値(例:
example.com
,JP
,192.168.1.0/24
)。 - Policy: マッチした場合に適用するポリシ(プロキシグループ名や
DIRECT
,REJECT
)。
- Type:
-
Rule Providerの活用:
ルールをプロファイル内に直接書き込むのではなく、外部のファイルとして管理するのが Rule Provider です。これにより、複数のプロファイルで同じルールセットを共有したり、コミュニティが作成・メンテナンスしている最新の広告ブロックリストなどを簡単に利用したりできます。- プロファイルエディタの「Rule Providers」セクションで新しいプロバイダーを追加します。
- URL にルールリストのURL(通常はテキストファイル)を指定します。
- 「Rules」セクションで、
RULE-SET
タイプのルールを追加し、Policyに先ほど作成したRule Providerの名前を指定します。
-
Parsers (プリプロセッサ):
これは非常に高度な機能で、プロバイダーからダウンロードしたプロファイルを、Clash Vergeが読み込む前に動的に書き換えるためのスクリプト(JavaScript)を定義できます。例えば、不要なサーバーを削除したり、サーバー名を一括で変更したりといった複雑な処理が可能です。
6.3 ログの確認とトラブルシューティング
何か問題が発生した場合、ログは原因を特定するための最も重要な情報源です。
-
ログの表示:
左側サイドバーの「Logs」アイコン(書類に虫眼鏡のアイコン)をクリックすると、Clashコアのリアルタイムログが表示されます。info
: 通常の接続情報。warning
: 軽微な問題。error
: 接続失敗などの重大な問題。
-
ログから分かること:
- あるウェブサイトへのアクセスが、どのルールにマッチし、どのプロキシを経由したか。
- プロキシサーバーへの接続が失敗した場合のエラーメッセージ。
- DNSクエリの結果。
-
一般的な問題と解決策:
- インターネットに繋がらない:
- Clash VergeのシステムプロキシやTun Modeが有効になっているか確認。
- 「Proxies」タブでサーバーの遅延をテストし、接続可能なサーバーが選択されているか確認。
- 「Profiles」タブでプロファイルを更新し、最新の状態にする。
- Clash Vergeを一度終了し、再度起動してみる。
- 特定のサイトだけ表示が遅い/表示されない:
- 「Logs」でそのサイトへのアクセスがどのルールにマッチしているか確認。
- 意図しないプロキシ(遅いサーバーなど)にルーティングされている場合、ルールを修正するか、「Proxies」タブで別のサーバーを選択してみる。
- DNSリークが疑われる:
Tun Modeを有効にし、「DNS Hijacking」をONにするか、「Settings」→「DNS」で信頼できるDoH (DNS over HTTPS) サーバー(例:https://cloudflare-dns.com/dns-query
)を設定する。
- インターネットに繋がらない:
6.4 その他の便利な設定
「Settings」には他にもカスタマイズ可能な項目があります。
- Theme: アプリの外観を Light / Dark / System から選択できます。
- Start with system: チェックを入れると、PC起動時にClash Vergeが自動的に起動します。
- Service Mode: Clash Vergeをシステムサービスとして実行します。これにより、GUIを閉じてもバックグラウンドでClashコアが動作し続けます。
第7章: コマンドラインとの連携
Clash Vergeは優れたGUIを提供しますが、Ubuntuの真の力はコマンドラインにあります。Clashをターミナルでの作業と組み合わせることで、さらに柔軟な使い方が可能になります。
7.1 Clashコアの直接操作 (上級者向け)
Clash Vergeは、バックグラウンドで clash-meta
のようなコアバイナリを実行しています。このバイナリは ~/.config/clash-verge/clash-meta
のような場所に格納されており、設定ファイルは ~/.config/clash-verge/profiles/
内のYAMLファイルを基に動的に生成されます。
これらのファイルを直接編集することも可能ですが、GUIの設定と競合する可能性があるため、構造を完全に理解している上級者向けの操作です。
7.2 proxychains-ng
との連携
GUIでシステムプロキシを有効にしても、一部のコマンドラインツールはその設定を読み込みません。そのような場合に、特定のコマンドだけをClash経由で実行したいときに便利なのが proxychains-ng
です。
-
インストール:
bash
sudo apt install proxychains-ng -
設定:
proxychains-ng
の設定ファイル/etc/proxychains.conf
を編集します。bash
sudo nano /etc/proxychains.confファイルの一番下にある
[ProxyList]
セクションを探し、デフォルトの行をコメントアウト(行頭に#
を追加)し、ClashのSOCKS5プロキシ設定を追記します。Clash Vergeはデフォルトで7891
ポートでSOCKS5プロキシを提供します。“`conf
[ProxyList]Default proxy settings
socks4 127.0.0.1 9050
Add this line for Clash
socks5 127.0.0.1 7891
“`
(ポート番号はClash Vergeの「Settings」→「Clash Fields」→「Socks Port」で確認・変更できます) -
使い方:
Clash経由で実行したいコマンドの前にproxychains
を付けるだけです。“`bash
通常のcurl (あなたのグローバルIPが表示される)
curl ipinfo.io
proxychainsを使ったcurl (Clashで選択したプロキシサーバーのIPが表示される)
proxychains curl ipinfo.io
“`git
,ssh
,apt
など、TCP接続を行うほとんどのコマンドラインツールに適用でき、非常に強力です。
7.3 環境変数を使ったプロキシ設定
多くのコマンドラインツール(wget
, curl
, apt
など)は、環境変数を参照してプロキシ設定を読み込みます。これはターミナルセッション単位でプロキシを設定する簡単な方法です。
Clash VergeはHTTPプロキシをデフォルトで 7890
ポートで提供します。以下のコマンドで環境変数を設定できます。
bash
export http_proxy="http://127.0.0.1:7890"
export https_proxy="http://127.0.0.1:7890"
export all_proxy="socks5://127.0.0.1:7891" # SOCKSプロキシも設定する場合
この設定は現在のターミナルセッションでのみ有効です。永続的に設定したい場合は、~/.bashrc
や ~/.zshrc
にこれらの行を追記します。
“`bash
プロキシを有効にするエイリアスを.bashrcに追記すると便利
alias setproxy=’export http_proxy=”http://127.0.0.1:7890″; export https_proxy=”http://127.0.0.1:7890″; echo “Proxy ON”‘
alias unsetproxy=’unset http_proxy; unset https_proxy; echo “Proxy OFF”‘
“`
上記を追記後、source ~/.bashrc
を実行すれば、setproxy
と unsetproxy
コマンドで簡単にプロキシのON/OFFを切り替えられます。
第8章: セキュリティとプライバシーに関する考慮事項
Clashは強力なツールですが、その力を正しく使わなければ、かえってプライバシーを危険に晒す可能性もあります。ここでは、安全に利用するための重要な注意点をいくつか挙げます。
8.1 信頼できるプロファイルの使用
Clashのプロファイル(特にサブスクリプションURL)は、あなたの全ての通信を制御する力を持っています。悪意のあるプロファイルを使用すると、通信が傍受されたり、フィッシングサイトに誘導されたり、個人情報が盗まれたりする危険性があります。
- 必ず、信頼できるプロキシサービスプロバイダーから提供されたプロファイルのみを使用してください。
- インターネット上で見つけた出所不明の無料のサブスクリプションURLは、絶対に使用しないでください。
8.2 DNSリークの防止
DNSリークとは、プロキシやVPNを経由して通信しているにもかかわらず、DNSクエリ(ドメイン名をIPアドレスに変換する問い合わせ)だけが暗号化されずに地元のISPのDNSサーバーに送られてしまう現象です。これにより、あなたがどのサイトにアクセスしようとしているかがISPに漏れてしまいます。
ClashにはDNSリークを防ぐための強力な機能が備わっています。
- Clash内蔵DNSサーバー: ClashはDNSリクエストを自身で処理し、ルールに基づいて適切なDNSサーバーに転送します。
- Fake-IPモード: Clashがローカルに偽のIPアドレス(例:
198.18.0.0/16
の範囲)を割り当て、ドメインベースのルーティングをより効率的かつ確実に行うモードです。DNS汚染に強く、DNSリークを防ぐ効果も高いです。Clash Vergeではデフォルトで有効になっていることが多いです。 - DNS over HTTPS (DoH) / DNS over TLS (DoT): DNSクエリ自体を暗号化する技術です。「Settings」→「DNS」で、
https://dns.google/dns-query
やtls://1.1.1.1:853
のような信頼できる暗号化DNSサーバーを設定することで、ISPによるDNSクエリの監視を防ぐことができます。
8.3 ファイアウォールとの連携 (上級者向け)
Clashの接続が何らかの理由で切断された瞬間に、意図せず素のIPアドレスで通信してしまうことを防ぐ「キルスイッチ」という考え方があります。Clash自体には専用のキルスイッチ機能はありませんが、Linuxの強力なファイアウォール(iptables
や nftables
)と組み合わせることで、同様の機能を実現できます。
例えば、「Clashのプロセスが生成する通信以外は全てブロックする」といったルールをファイアウォールに設定することで、万が一の際にも情報漏洩を防ぐことができます。これは高度な設定ですが、最大限のセキュリティを求めるユーザーにとっては検討の価値があります。
結論
この長大なガイドを通じて、私たちはUbuntuデスクトップ環境におけるClash GUIクライアント「Clash Verge」の導入から、基本的な使い方、そして高度なカスタマイズに至るまで、その全貌を詳細に探求してきました。
本ガイドで学んだことのまとめ:
- Clashの基礎: ルールベースのルーティングというClashの核心的な概念と、コアとGUIが分離したアーキテクチャを理解しました。
- インストール: UbuntuにClash Vergeをインストールする具体的な手順を学びました。
- プロファイル設定: プロキシ設定の要であるサブスクリプションURLをインポートし、管理する方法を習得しました。
- 基本操作: システムプロキシを有効にし、Rule/Global/Directの各モードを切り替え、プロキシサーバーを選択するという一連の基本操作をマスターしました。
- 高度な活用: システムプロキシが効かないアプリケーションに対応するTun Mode、自分好みの通信制御を実現するルールのカスタマイズ、そしてトラブルシューティングに不可欠なログの確認方法について学びました。
- CUI連携とセキュリティ:
proxychains-ng
を使ったコマンドラインツールとの連携や、安全にClashを使い続けるためのセキュリティ上の注意点についても触れました。
ClashをUbuntuで活用することは、単に地理的な制限を回避する以上の意味を持ちます。それは、あなた自身のネットワークトラフィックを完全に掌握し、プライバシーを能動的に保護し、より自由で安全なデジタルライフを構築するための強力な一歩です。
もちろん、Clashの世界はさらに奥深く、このガイドで触れたのはその入り口に過ぎません。さらに知識を深めたい方は、Clash.Metaの公式ドキュメントを読んだり、関連するオンラインコミュニティに参加したりすることをお勧めします。
このガイドが、あなたのUbuntuライフをより快適でパワフルなものにするための一助となれば幸いです。さあ、カスタマイズしたネットワークで、新しいインターネットの世界へ旅立ちましょう。