まだ使える?macOS Catalina 10.15.7の現状と安全性、対応アプリまとめ
AppleのmacOSは、毎年秋に新しいバージョンがリリースされ、そのたびに多くの新機能やセキュリティ強化が図られます。しかし、全てのMacユーザーが最新のmacOSを使っているわけではありません。古いMacモデルを使っていたり、特定のアプリケーションとの互換性の問題があったり、あるいは単に慣れた環境を離れたくないという理由で、一つ前の、あるいはさらに前のmacOSバージョンを使い続けている方も少なくありません。
この記事では、現在「サポート終了」のステータスにあるmacOS Catalina 10.15.7に焦点を当て、その現状、安全性、そして対応アプリケーションについて詳細に解説します。「まだ使えるのか?」という多くのユーザーが抱く疑問に対し、リスクとメリットを比較しながら、実践的な情報を提供します。
はじめに:macOS Catalina 10.15.7とは何か、そしてなぜ今このテーマなのか
macOS Catalina (バージョン 10.15) は、2019年10月にAppleからリリースされたmacOSのバージョンです。その最終アップデートである10.15.7は、2020年9月に公開されました。Catalinaは、特に以下の点で大きな変更をもたらしたバージョンとして記憶されています。
- iTunesの廃止と機能分化: iTunesが「ミュージック」「ポッドキャスト」「TV」の3つの独立したアプリケーションに分割されました。
- Sidecar: iPadをMacのセカンドディスプレイとして利用できるようになりました。
- 32ビットアプリケーションの非対応: これが最も大きな変更点であり、多くのレガシーアプリケーションが動作しなくなり、ユーザーに大きな影響を与えました。
- Mac Catalyst: iPadアプリをMacで動作させるための開発フレームワークが導入されました。
Catalinaは、その後継であるBig Sur、Monterey、Ventura、そして最新のSonomaがリリースされるにつれて、古いOSとしての位置づけとなりました。Appleの公式サポートポリシーでは、最新バージョンと、その2つ前のバージョン(合計3つのOS)がセキュリティアップデートの対象となるのが一般的です。つまり、Sonomaがリリースされた現在、VenturaとMontereyがセキュリティアップデートの対象であり、Catalinaは公式サポートを終了しています。
では、なぜ今、サポート終了したCatalinaについて深く掘り下げる必要があるのでしょうか?
- 多くのユーザーがまだ利用している: 古いMacモデル(特に2012年~2014年頃のモデル)では、Catalinaが最後の公式アップデートとなるケースがあり、買い替えコストを考えると使い続けざるを得ない状況のユーザーがいます。
- 安全性への懸念: サポート終了OS最大の懸念は、セキュリティアップデートが提供されないことによるリスクです。このリスクを理解し、対策を講じる必要があります。
- アプリケーションの互換性: 特定の業務や趣味で古いアプリケーションを使っているユーザーにとって、新しいOSへの移行は困難な場合があります。Catalinaでのアプリ対応状況は依然として重要です。
この記事は、Catalinaを使い続けている、または使い続けることを検討しているユーザーに対し、現在のMac環境の現実を直視し、最適な選択をするための情報提供を目的としています。
macOS Catalina 10.15.7の現状
macOS Catalina 10.15.7が現在どのような状況にあるのかを、具体的に見ていきましょう。
1. サポート状況の詳細
Appleは通常、最新のmacOSバージョンと、その直前の2つのバージョンに対して、セキュリティアップデートを提供します。例えば、現在の最新OSがmacOS Sonoma (14)であれば、その前のmacOS Ventura (13)とmacOS Monterey (12)がセキュリティアップデートの対象となります。
- macOS Catalina (10.15) のサポート終了: Catalinaは2019年にリリースされ、その後継であるBig Sur (11)が2020年に、Monterey (12)が2021年に、Ventura (13)が2022年に、そしてSonoma (14)が2023年にリリースされました。このリリースサイクルから考えると、Catalinaへのセキュリティアップデートは、Montereyのリリース後しばらくして終了しました。具体的には、2022年7月にリリースされたmacOS Security Update 2022-005 Catalinaが最後のセキュリティアップデートとされています。
- 公式サポート終了の意味: これは、AppleがCatalinaで発見された新たなセキュリティ脆弱性やバグに対して、修正パッチを提供しないことを意味します。つまり、OS自体に新たな脆弱性が発見されても、それを修正する手段が提供されないため、ユーザーは常にリスクに晒されることになります。
- 機能アップデートの停止: セキュリティアップデートだけでなく、新機能の追加や既存機能の改善といったアップデートも完全に停止しています。
この状況は、Catalinaを使い続けるユーザーにとって最も注意すべき点です。
2. システム要件と対応機種
macOS Catalinaは、以下のMacモデルに対応していました。
- MacBook (Early 2015以降)
- MacBook Air (Mid 2012以降)
- MacBook Pro (Mid 2012以降)
- Mac mini (Late 2012以降)
- iMac (Late 2012以降)
- iMac Pro (2017)
- Mac Pro (Late 2013以降)
これらのモデルは、Big Sur以降の新しいmacOSに対応していない場合があります。特に、2012年から2014年頃に製造されたMacの多くは、Catalinaが最終サポートOSとなるケースが多いです。例えば、2012年製のMacBook ProやiMacは、Big Sur以降には公式に対応していません。
なぜ古いMacでは最新OSにアップデートできないのか?
Appleは、新しいmacOSバージョンを設計する際、最新のハードウェア機能(例えば、Metal APIに対応したグラフィックスカード、より高速なCPU、大量のRAM、SSDなど)を前提としています。古いMacはこれらの要件を満たせないため、安定性やパフォーマンスの問題が発生する可能性があり、Appleは公式サポート対象から外します。これにより、ユーザーは新しいMacへの買い替えを促されることにもなります。
安全性(セキュリティリスクと対策)
サポートが終了したmacOS Catalinaを使い続ける上で、最も重要な懸念は「安全性」です。セキュリティリスクを理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
1. 公式サポート終了が意味するもの
前述の通り、CatalinaはAppleからのセキュリティアップデートが停止しています。これは、以下の深刻な問題を引き起こします。
- セキュリティ脆弱性への対応停止: 新たに発見されたOSの脆弱性(例:OSのカーネル、ネットワークスタック、システムライブラリなどに存在するバグ)が修正されません。これらの脆弱性は、攻撃者にとってマルウェアの感染経路やシステムへの不正アクセス手段となり得ます。
- ゼロデイ攻撃のリスク: 未知の脆弱性が発見され、それが公開される前に悪用される「ゼロデイ攻撃」に対して、OSレベルでの防御策が全くない状態となります。修正パッチが提供されないため、一度脆弱性が露見すれば、即座に攻撃の標的となる可能性があります。
- アプリケーションのセキュリティ問題: OSだけでなく、OS上で動作する標準アプリケーション(Safariなど)や、OSの機能に深く依存するサードパーティアプリケーションも、OS自体のセキュリティ脆弱性の影響を受ける可能性があります。
2. 具体的なセキュリティリスクの例
Catalinaを使い続けることで直面する可能性のある具体的なリスクは多岐にわたります。
- マルウェア、ランサムウェア: 脆弱性を悪用して侵入し、データを破壊したり、身代金を要求したりする悪質なソフトウェアに感染するリスクが高まります。
- フィッシング詐欺: OSやブラウザの脆弱性が悪用され、偽のウェブサイトへ誘導されたり、個人情報を盗まれたりする可能性が高まります。
- ブラウザの脆弱性: Safariなどの標準ブラウザはOSのセキュリティアップデートに依存しています。もしSafariの最新バージョンがCatalinaで利用できなくなり、セキュリティパッチが提供されない場合、ウェブサイト閲覧中にマルウェアに感染したり、情報が盗まれたりするリスクが高まります。Google ChromeやMozilla Firefoxなどのサードパーティ製ブラウザも、いずれはCatalinaのサポートを終了し、最新版が利用できなくなる日が来ます。
- ネットワークプロトコルの脆弱性: Wi-Fi接続やインターネット通信に使われる各種プロトコルに脆弱性が発見された場合、これもOSのアップデートでしか修正できません。これにより、盗聴やデータ改ざんのリスクが生じます。
- ドライバやファームウェアの脆弱性: プリンタ、スキャナー、外部ストレージなどの周辺機器のドライバやMac本体のファームウェアに脆弱性が見つかっても、OSのアップデートが停止しているため、修正が困難になる場合があります。
3. Catalinaを使い続ける上での安全性対策
これらのリスクを完全にゼロにすることはできませんが、以下に示す対策を講じることで、リスクを大幅に軽減することが可能です。
最優先:データのバックアップ
- Time Machine: 最も手軽で効果的なバックアップ方法です。外部HDD/SSDを用意し、定期的にTime Machineでバックアップを取りましょう。万が一、マルウェア感染やシステム障害が発生しても、データを復元できます。
- クラウドサービス: iCloud Drive、Dropbox、Google Drive、OneDriveなどのクラウドストレージサービスを利用し、重要なファイルを同期・バックアップしておきましょう。
- 外部ストレージへの手動バックアップ: 重要なプロジェクトファイルや個人的な写真・動画などは、定期的に別の外部ストレージにもコピーしておくことを強く推奨します。
ブラウザの選択とアップデート
- Safariの使用は避ける: macOS CatalinaのSafariは、最新のセキュリティパッチが適用されていません。ウェブ閲覧時のリスクを避けるため、Safariの使用は極力避けましょう。
- 最新版のサードパーティ製ブラウザを利用: Google Chrome、Mozilla Firefox、Microsoft Edgeなど、Catalinaでもまだ最新版が提供されているブラウザを使用しましょう。これらのブラウザは、それぞれが独自のアップデートサイクルを持っており、OSのセキュリティアップデートとは独立して脆弱性に対応している場合が多いです。ただし、これも永遠に続くわけではありません。いずれはCatalinaのサポートを打ち切る日が来ることを認識しておきましょう。
- ブラウザの自動アップデートを有効にする: 必ず最新の状態に保つよう設定し、手動でも定期的にアップデートを確認しましょう。
セキュリティソフトの導入
- アンチウイルスソフトの導入: macOSにもマルウェアは存在します。Bitdefender、Kaspersky、Norton、Avast、Sophos Homeなどの評判の良いアンチウイルスソフトを導入し、常に最新の状態に保ち、定期的にシステムスキャンを実行しましょう。
- VPNの検討: 公衆Wi-Fiなど、セキュリティが不確実なネットワークを利用する機会が多い場合は、VPN(Virtual Private Network)サービスの利用を検討しましょう。通信が暗号化され、傍受されるリスクを軽減できます。
不審なメールやサイトに注意(基本的なセキュリティ意識の向上)
- フィッシング詐欺対策: 送信元が不明なメールや、URLがおかしいリンクは絶対にクリックしないようにしましょう。特に、個人情報やログイン情報を求めるメッセージには警戒が必要です。
- 信頼できないウェブサイトからのダウンロード回避: ソフトウェアやファイルをダウンロードする際は、必ず公式サイトや信頼できる配布元から入手しましょう。
重要情報の取り扱い
- ネットバンキング、クレジットカード情報の入力回避: サポート終了OSでは、金融関連の取引やクレジットカード情報の入力など、機密性の高い情報のやり取りは極力避けるべきです。もし行う必要がある場合は、最新OSのMacやスマートフォン、Windows PCなど、より安全なデバイスを使用することを検討してください。
- パスワードの使い回しを避ける: 各種サービスで異なる強固なパスワードを設定し、二段階認証を積極的に利用しましょう。パスワード管理アプリの利用も有効です。
ネットワーク環境の安全確保
- ルーターのファームウェア更新: 自宅のWi-Fiルーターのファームウェアを常に最新の状態に保ちましょう。ルーターの脆弱性もネットワーク全体のセキュリティリスクを高めます。
- 強固なWi-Fiパスワード: WPA3(またはWPA2)暗号化を使用し、推測されにくい複雑なパスワードを設定しましょう。
- ゲストネットワークの利用: 来客者にはメインのネットワークではなく、ゲストネットワークを利用してもらいましょう。
不要なサービスの停止
- 自動ログインの無効化: Macの起動時にパスワードなしでログインできる設定は、セキュリティリスクを高めます。必ずパスワードを要求するように設定しましょう。
- ファイル共有の無効化: 必要がない限り、システム環境設定の「共有」で、ファイル共有や画面共有などのサービスをオフにしておきましょう。
- ファイヤーウォールの有効化: macOSに標準搭載されているファイヤーウォールを有効にし、不正なアクセスからMacを保護しましょう。
二段階認証の活用
Apple IDや主要なオンラインサービス(Google、Microsoft、SNSなど)で、可能な限り二段階認証(または多要素認証)を設定しましょう。パスワードが漏洩しても、不正ログインを防ぐ最後の砦となります。
アプリのダウンロード源の吟味
App Store以外の場所からアプリをダウンロードする際は、必ず公式サイトから直接ダウンロードし、信頼できないサイトやP2Pネットワークからのダウンロードは避けるべきです。
古いバージョンのソフトウェアは利用しない
特にWebブラウザ、メールクライアント、オンライン会議ツールなど、インターネットに接続する機会の多いソフトウェアは、古いバージョンを使用するとセキュリティリスクが跳ね上がります。もしCatalinaでこれらのソフトウェアの最新版が利用できない場合、使用を控えるか、代替手段を検討すべきです。
互換性と対応アプリケーション
macOS Catalinaのもう一つの大きなテーマは、アプリケーションの互換性です。特に32ビットアプリケーションの非対応は、多くのユーザーに影響を与えました。
1. 32ビットアプリの非対応問題
Catalinaのリリースで最も大きな変更点の一つが、32ビットアプリケーションのサポート終了です。これは、Mac App Storeで配布されているアプリだけでなく、インターネットからダウンロードしたすべてのアプリに適用されました。
- 影響: 2018年以前に開発された古いゲーム、グラフィックツール、ユーティリティ、一部のプリンタドライバなどが32ビットアプリケーションとして提供されており、Catalinaにアップデートするとこれらが一切動作しなくなりました。
- 確認方法: 自分のMacに32ビットアプリケーションがインストールされているかどうかは、「システム情報」アプリで確認できます。
- 画面左上のAppleメニューから「このMacについて」を選択。
- 「システムレポート…」をクリック。
- サイドバーの「ソフトウェア」セクションにある「アプリケーション」を選択。
- 「64ビット (Intel)」列を見て、「いいえ」となっているものが32ビットアプリケーションです。
- 代替策:
- 64ビット版への移行: 多くの開発者は、Catalinaのリリースに先立ってアプリケーションを64ビット版にアップデートしました。まずは、使用しているアプリの公式サイトで64ビット版が提供されていないか確認しましょう。
- 仮想化ソフトウェアの利用: Parallels DesktopやVMware Fusionなどの仮想化ソフトウェアを使用し、その中にMojave以前のmacOS(32ビットアプリが動作する最後のOS)をインストールし、その上で32ビットアプリを実行する方法があります。ただし、これにはライセンス費用やシステムリソースの消費が増えるデメリットがあります。
- 特定の業務専用機の確保: どうしても32ビットアプリが必要な場合は、CatalinaにアップデートせずにMojave以前のOSを搭載した古いMacを専用機として残しておくという選択肢もあります。
2. Apple純正アプリケーション
macOS Catalinaにプリインストールされている、またはApp Storeから入手可能なApple純正アプリケーションは、Catalina環境で動作します。
- Pages, Numbers, Keynote: これらのiWorkアプリケーションはCatalinaで動作しますが、最新のmacOSバージョンで提供される新機能は利用できません。また、最新のmacOSで作成されたiWorkファイルは、CatalinaのiWorkで開けない場合や、レイアウトが崩れる場合があります。互換性を保つためには、PDFやMicrosoft Office形式でファイルをやり取りするのが無難です。
- 写真、ミュージック、TVアプリ: CatalinaでiTunesが分割され、これらのアプリが導入されました。基本機能は利用できますが、新しいハードウェア(例:最新のiPhone/iPad)との同期や、Apple Music/TV+の最新機能には制限が出る可能性があります。
- メール、カレンダー、メモ、リマインダー: これらの基本的な生産性アプリは問題なく動作します。ただし、iCloud経由で最新OSのデバイスと同期する際に、ごく稀に互換性の問題が発生する可能性もゼロではありません。
- Safari: 上記「安全性」セクションで述べた通り、CatalinaのSafariはセキュリティアップデートが停止しています。使用は避けるべきです。
- App Store: App Store自体はCatalinaで動作しますが、最新のアプリはCatalinaをサポートしない場合が増えてきます。
3. 主要サードパーティアプリケーションの対応状況
サードパーティアプリケーションの対応状況は、開発元の方針やリソースによって大きく異なります。一般的に、新しいmacOSへの移行が進むにつれて、古いOSのサポートは順次終了していきます。
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Webブラウザ:
- Google Chrome: Googleは通常、主要なOSの直近のバージョンをサポートしますが、徐々に古いOSのサポートを終了する傾向にあります。CatalinaのChromeは、まだ最新版が利用できる可能性が高いですが、将来的にサポート終了が発表されることを考慮に入れる必要があります。Google ChromeのサポートページでCatalinaのサポート状況を確認してください。
- Mozilla Firefox: FirefoxもChromeと同様に、比較的長い期間古いOSをサポートする傾向があります。しかし、これも永遠ではありません。公式ウェブサイトで最新のシステム要件を確認してください。
- Microsoft Edge: EdgeもChromiumベースであるため、Chromeと似たサポートポリシーを持つことが多いです。
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Microsoft Office (Word, Excel, PowerPoint, Outlook):
- Office 2019: macOS Catalinaをサポートしていますが、セキュリティアップデートは終了しています。
- Microsoft 365 (旧Office 365): Microsoftは通常、macOSの最新3バージョンをサポート対象としています。つまり、Sonomaが最新の場合、Ventura、Monterey、そしてBig Surがサポート対象となります。Catalinaはサポート対象外であり、最新のMicrosoft 365アプリはCatalinaで動作しないか、動作しても機能制限やセキュリティパッチの提供がない状態です。もしCatalinaでMicrosoft 365を使っている場合、古いバージョンが動作しているはずですが、こちらもセキュリティアップデートは提供されません。
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Adobe Creative Cloud (Photoshop, Illustrator, Premiere Proなど):
- Adobeは通常、macOSの最新バージョンと、その直前の2つのバージョン(合計3つのOS)をサポート対象としています。つまり、Sonomaが最新の場合、VenturaとMontereyがサポート対象です。
- Catalinaは公式サポート対象外です。過去のバージョンのCreative CloudアプリであればCatalinaで動作する可能性がありますが、新機能は使えず、バグ修正やセキュリティアップデートは提供されません。業務でAdobe製品を頻繁に使用する場合、最新OSへの移行はほぼ必須と言えます。
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コミュニケーションツール (Zoom, Slack, Discord, Microsoft Teams):
- これらのアプリはオンラインサービスに依存しており、セキュリティアップデートや新機能の提供が頻繁に行われます。
- 多くの場合、最新のmacOSバージョンに合わせたアップデートが提供され、古いOSのサポートは段階的に終了していきます。例えば、ZoomはすでにCatalinaでの公式サポートを終了しており、最新版が利用できないか、動作しても不具合が生じる可能性があります。SlackやTeamsなども同様の傾向にあります。オンラインでの共同作業が中心の場合、互換性の問題は大きな支障となります。
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開発ツール (Xcode, Homebrewなど):
- Xcode: Xcodeは常に最新のmacOSバージョンに強く依存します。Catalinaで動作するXcodeは、非常に古いバージョン(Xcode 11.x)であり、最新のiOS/macOSアプリ開発には対応できません。
- Homebrew: MacのパッケージマネージャーであるHomebrewも、新しいmacOSバージョンに合わせてアップデートされます。Catalinaでは、古いバージョンのHomebrewしか利用できず、最新のライブラリやツールをインストールできない場合があります。
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その他ユーティリティ:
- クラウドストレージクライアント (Dropbox, Google Drive, OneDrive): これらのデスクトップクライアントは、OSのセキュリティやファイルシステム機能に深く依存するため、OSのサポート終了に伴って最新版のサポートも終了する可能性が高いです。古いバージョンが動作していても、同期エラーやセキュリティリスクが生じる場合があります。
- VPNクライアント: VPNプロバイダーが提供するクライアントアプリも、OSのバージョンに依存します。古いOSだと最新のVPNプロトコルに対応できなかったり、アプリ自体が動作しなくなる可能性があります。
- アンチウイルスソフト: セキュリティソフト自体もOSのアップデートに追従する必要があります。Catalinaをサポートするアンチウイルスソフトはまだあるかもしれませんが、それらもいずれサポートを終了するでしょう。
4. アプリ利用の傾向と注意点
- 新しい機能の恩恵を受けられない: 最新のmacOSで提供される便利な新機能(例:連係カメラ、ステージマネージャなど)は、当然Catalinaでは利用できません。
- セキュリティパッチの提供停止: 上記で繰り返し述べているように、OSのサポート終了に伴い、アプリのセキュリティパッチも提供されなくなる可能性が高まります。
- サポート終了時期の把握: 各アプリケーションの公式サイトで、常にシステム要件とサポート終了時期を確認することが重要です。
- 公式発表の確認の重要性: 不明な点は、必ず開発元の公式発表やサポートページを確認しましょう。
Catalinaを使い続けるべきか、それともアップデートすべきか?
ここまで見てきたように、macOS Catalinaを使い続けることにはメリットとデメリットの両方があります。最終的な判断は、ユーザー自身の状況、用途、そしてリスク許容度によって異なります。
1. Catalinaを使い続けるメリット
- 古いMacでの安定動作: 最新OSが対応しない、あるいは動作が重くなる古いMacでは、Catalinaが最も安定して動作する最後のOSである可能性があります。無理に新しいOSをインストールすると、パフォーマンスの低下や予期せぬ不具合が発生するリスクがあります。
- 特定のレガシーアプリの利用継続(32ビットアプリ以外): 32ビットアプリは使えませんが、Catalina以前のOSで動作し、かつ開発元がCatalinaまでのサポートを継続している、あるいはアップデートが停止している古い64ビットアプリを使い続けたい場合にメリットがあります。特に、買い切り型の高価なソフトウェアで、最新バージョンへのアップグレードに費用がかかる場合などです。
- 慣れた操作環境: 新しいmacOSバージョンでは、UIの変更や機能の追加・削除などがあり、慣れるまでに時間がかかることがあります。慣れたCatalinaの操作環境を維持したいというシンプルな理由もあります。
2. Catalinaを使い続けるデメリット
- セキュリティリスク増大: これが最大のデメリットです。Appleからのセキュリティアップデートが提供されないため、常に新たな脆弱性による攻撃の危険に晒されます。特にインターネットに接続して使用する場合、このリスクは無視できません。
- 最新アプリの非対応、機能制限: 最新のソフトウェアやオンラインサービスは、新しいmacOSバージョンを前提として開発されます。Catalinaでは、これらの最新アプリが動作しないか、機能が制限された状態でしか利用できません。これにより、生産性や利便性が低下する可能性があります。
- 将来的な互換性の問題: 現在動作しているサードパーティ製アプリやウェブサービスも、将来的にCatalinaのサポートを終了する可能性が高いです。そうなると、業務や日常生活に支障をきたすことになります。
- 最新ハードウェアとの連携の限界: 最新のiPhone、iPad、Apple Watchなどのデバイスとの連携機能(例:Handoff、AirDrop、Universal Clipboardなど)や、新しい周辺機器(例:最新のプリンタ、外部ストレージなど)は、最新のmacOSで最適化されています。Catalinaでは、これらの機能や機器の性能を十分に引き出せない場合があります。
- 開発者からのサポート終了: ソフトウェア開発者も、古いOSをサポートし続けるのはコストがかかるため、段階的にサポートを終了します。これにより、問題が発生しても解決策が得られなくなる可能性があります。
3. アップデートを検討すべきケース
もしあなたのMacがmacOS Monterey、Ventura、またはSonomaにアップグレードできるモデルであれば、可能な限りアップデートすることを強く推奨します。
- 対応機種を持っている場合: 2015年以降のMacモデルであれば、ほとんどの場合Catalinaより新しいmacOSにアップグレード可能です。まずは「このMacについて」でモデル年を確認し、Appleの公式サイトで最新OSのシステム要件をチェックしましょう。
- 最新のセキュリティを重視する場合: 個人情報や機密性の高いデータを扱う場合、ネットバンキングやオンラインショッピングを頻繁に利用する場合など、セキュリティを最優先するユーザーは速やかにアップデートすべきです。
- 最新アプリ、サービスを利用したい場合: 仕事や趣味で最新のソフトウェアやオンラインサービスが必要な場合、新しいOSへの移行は必須です。
- 新しいハードウェアや周辺機器との連携を重視する場合: 最新のAppleデバイスや周辺機器を購入する予定がある場合、それらを最大限に活用するためには最新OSが不可欠です。
アップデート前の注意点:
* 必ず完全なバックアップを取る: アップデート中に予期せぬ問題が発生しても、データが失われないようにTime Machineなどで完全にバックアップを取りましょう。
* アプリの互換性を確認する: 使用している全てのアプリが新しいOSに対応しているか、事前に開発元のウェブサイトで確認しましょう。特に業務で使う重要なアプリは必須です。
* 十分な空き容量を確保する: macOSのアップデートには通常、数十GBの空き容量が必要です。
* 安定したインターネット環境: アップデートファイルのダウンロードには、安定した高速インターネット接続が必要です。
4. アップデートできない場合の選択肢
Macが古すぎて最新OSにアップデートできない場合、または特定の理由でCatalinaを使い続けざるを得ない場合は、以下の選択肢を検討してください。
- インターネット接続を極力控えたオフライン運用: 最もリスクが低い運用方法です。ネットに接続せずに、ローカルでの作業やデータ保存のみに限定すれば、外部からの攻撃リスクを大幅に減らせます。
- データのバックアップと定期的な消去: 常に最新のバックアップを取り、重要でないデータは定期的に消去するか、オフラインストレージに移動させましょう。
- 新しいMacへの買い替えの検討: セキュリティと利便性を総合的に考慮すると、最も現実的で安全な解決策です。Apple Silicon搭載の最新Macは、性能、セキュリティ、省電力性において飛躍的に向上しています。買い替えのタイミングや費用を計画し、徐々に移行準備を進めましょう。
- 整備済み製品の活用: Apple公式サイトの整備済み製品や中古市場を活用すれば、費用を抑えて比較的新しいMacを手に入れることも可能です。
- Linuxなどの代替OSの検討(技術的なハードルは高い): 技術的な知識と時間が必要ですが、古いMacにmacOS以外のOS(例えばUbuntuなどのLinuxディストリビューション)をインストールするという選択肢もあります。これにより、最新のセキュリティパッチが提供されるオープンソースOS環境でMacを使い続けることが可能になります。ただし、macOSのアプリは利用できず、別の学習コストがかかります。
まとめ
macOS Catalina 10.15.7は、「まだ使える」OSであることは間違いありません。基本的な操作や、Catalinaに対応した既存のアプリケーションは引き続き利用できます。しかし、「安全ではない」という側面も強く持ち合わせています。
Catalinaを使い続けることは、セキュリティリスクを伴うことを十分に理解する必要があります。Appleからのセキュリティアップデートが停止しているため、新たな脆弱性が発見されても修正されず、悪意のある攻撃の標的となる可能性が高まります。
もしあなたのMacがより新しいmacOSバージョンにアップデートできるのであれば、セキュリティと機能の観点から、可能な限り最新のOSへ移行することを強く推奨します。 最新OSは、単に新機能が追加されるだけでなく、日々進化するサイバー脅威からユーザーを保護するための最新のセキュリティ対策が施されています。
やむを得ずCatalinaを使い続ける場合は、この記事で紹介した詳細なセキュリティ対策を徹底し、常に警戒心を怠らないことが極めて重要です。具体的には、データのこまめなバックアップ、最新のサードパーティ製ブラウザの使用、アンチウイルスソフトの導入、そして不審な情報への注意などが挙げられます。
最終的に、どのOSバージョンを使用するかはユーザー自身の判断と責任に委ねられます。しかし、情報セキュリティがますます重要となる現代において、ご自身のデジタルライフを守るためにも、この記事が適切な判断の一助となることを願っています。古いMacを使い続けることの魅力を理解しつつも、リスクを最小限に抑え、安全で快適なコンピューティング環境を維持するための賢明な選択をしてください。