【徹底解説】Windowsセキュリティ ネットワーク資格情報の入力


【徹底解説】Windowsセキュリティ「ネットワーク資格情報の入力」のすべて – 原因、正しい入力、トラブルシューティング、セキュリティまで

Windowsを使っていると、共有フォルダーやプリンターにアクセスしようとした際に、「Windowsセキュリティ」というタイトルで「ネットワーク資格情報の入力」を求められるダイアログが表示されることがあります。多くの場合、ユーザー名とパスワードを入力することでアクセスできるようになりますが、時には正しい情報を入力しているはずなのにアクセスできなかったり、なぜこのダイアログが表示されるのか分からなかったりすることもあるでしょう。

この記事では、この「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログがなぜ表示されるのか、そこで入力すべき情報は何なのか、そして入力してもアクセスできない場合の徹底的なトラブルシューティング方法、さらにはセキュリティ上の注意点まで、詳細かつ網羅的に解説します。

1. はじめに:ネットワーク資格情報の入力とは何か?

「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログは、ネットワーク上の特定のコンピューターやリソース(共有フォルダー、共有プリンターなど)にアクセスしようとした際に、そのリソースがアクセス制御されている場合に表示される認証画面です。

簡単に言えば、アクセス先のコンピューターが「あなたは誰ですか? 本当にアクセスを許可されているユーザーですか?」と確認しているプロセスです。この確認のために、ユーザーは「資格情報」と呼ばれるユーザー名とパスワードの組み合わせを入力する必要があります。

この認証プロセスは、ネットワークリソースのセキュリティを保つ上で非常に重要です。誰でも自由に共有フォルダーの中身を見たり、勝手にプリンターを使ったりできないように、正規のユーザーだけがアクセスできるよう制限をかける仕組みの一部です。

この記事を読むことで、あなたは以下のことができるようになります。

  • なぜ「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログが表示されるのかを理解する。
  • ダイアログが表示された際に、どのユーザー名とパスワードを入力すべきかを判断できるようになる。
  • 資格情報を入力してもアクセスできない場合の様々な原因と、それぞれの解決策を試すことができる。
  • ネットワーク資格情報の記憶機能の利用に関するメリットとデメリット、およびセキュリティ上の注意点を理解する。
  • ネットワーク共有に関する基本的な設定やトラブルシューティングスキルを習得する。

それでは、まずネットワーク資格情報そのものについて詳しく見ていきましょう。

2. ネットワーク資格情報とは何か?

ネットワーク資格情報とは、ネットワーク上のリソースにアクセスする際に、あなた自身が誰であるかを証明するための情報の組み合わせです。主に「ユーザー名」と「パスワード」から構成されます。

これは、自宅やオフィスのドアの鍵のようなものです。鍵(パスワード)を持っていればドア(リソース)を開けることができますが、その鍵が誰のものであるか(ユーザー名)も重要です。ネットワークの世界では、この鍵と持ち主の情報を使って、アクセスしようとしている人が正当なユーザーであるかを確認します。

Windows環境において、ネットワーク資格情報として使用されるアカウントの種類にはいくつかあります。

  • ローカルアカウント: 特定のWindowsコンピューター上にのみ存在するアカウントです。そのコンピューターへのログオンや、そのコンピューター上のリソースへのアクセスに使用されます。ユーザー名はコンピューター名と関連付けられます(例: 自分のPC名\ユーザー名)。
  • Microsoftアカウント: メールアドレスの形式で、Microsoftのオンラインサービス(OneDrive, Outlook.comなど)にサインインするために使用されるアカウントです。Windows 8以降、ローカルアカウントの代わりにWindowsへのサインインにも使用できます。ネットワーク共有においても、Microsoftアカウントを使用して認証を行うことが可能です。
  • ドメインアカウント: Active Directoryドメイン環境において、ドメインコントローラーによって集中管理されるアカウントです。企業や学校などでよく使用されます。一つのドメインアカウントで、ドメイン内の複数のコンピューターやリソースにアクセスできます。ユーザー名はドメイン名と関連付けられます(例: mydomain\ユーザー名 または ユーザー名@mydomain.com)。

「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログでは、アクセス先のコンピューターやリソースが要求している形式に応じたユーザー名とパスワードを入力する必要があります。多くの場合、アクセス先のコンピューターまたはドメインで有効なアカウント情報が求められます。

3. 「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログが表示される主なシナリオ

このダイアログが表示されるのは、ネットワーク上の認証が必要なリソースにアクセスしようとした時です。具体的なシナリオをいくつか挙げます。

シナリオ 1: 共有フォルダーへのアクセス

最も一般的なシナリオです。別のコンピューター(サーバーまたは他のクライアントPC)が共有しているフォルダーに、エクスプローラーなどを通じてアクセスしようとした際に表示されます。共有フォルダーは、アクセス権限が設定されている場合がほとんどであり、アクセス権を持つユーザーであることを証明するために資格情報の入力が求められます。

  • 例: ネットワーク上のPC「SERVER01」が共有しているフォルダー「SharedDocs」にアクセスするため、エクスプローラーのアドレスバーに \\SERVER01\SharedDocs と入力してEnterキーを押したとき。

シナリオ 2: 共有プリンターへのアクセス

ネットワーク上で共有されているプリンターに印刷ジョブを送信しようとした際にも、アクセス権限によっては資格情報の入力が必要になることがあります。

  • 例: ネットワーク上のPC「PRINTSRV」に接続された共有プリンター「OfficePrinter」を使用するために、そのプリンターをWindowsに追加しようとしたり、印刷を実行したりしたとき。

シナリオ 3: リモートデスクトップ接続

別のWindowsコンピューターにリモートデスクトップで接続する際にも、接続先のコンピューターへのログオン資格情報が必要です。通常、リモートデスクトップクライアントでユーザー名とパスワードを入力しますが、接続先のコンピューターのセキュリティ設定によっては、追加でネットワークレベル認証(NLA)のための資格情報入力が求められることがあります。

  • 例: リモートデスクトップ接続クライアントで接続先のIPアドレスを入力し、「接続」ボタンをクリックした後。

シナリオ 4: 特定のネットワークサービスへのアクセス

上記以外にも、ネットワーク上の特定のアプリケーションやサービス(例: 一部のNASストレージの管理画面、データベースサーバー、WebDAV共有など)にアクセスする際に、Windowsの機能を使って認証を行う場合にこのダイアログが表示されることがあります。

ワークグループ環境とドメイン環境

「ネットワーク資格情報の入力」が表示される頻度や、求められる資格情報の種類は、コンピューターがワークグループに属しているか、またはActive Directoryドメインに属しているかによって違いが見られます。

  • ワークグループ環境: 小規模ネットワークでよく使われる形態です。各コンピューターが独立してアカウントを管理します。共有リソースにアクセスするには、原則としてアクセス先のコンピューターに、アクセス元のコンピューターで使用しているものと「同じユーザー名・パスワード」を持つアカウントが存在している必要があります。これが一致しない場合に資格情報が求められます。一致している場合でも、セキュリティポリシーによってはパスワード入力が必要になることがあります。ワークグループ環境では、資格情報としてローカルアカウントまたはMicrosoftアカウントを使用します。
  • ドメイン環境: 集中管理されたアカウント(ドメインアカウント)を使用します。ユーザーはドメインにログオンすることで、ドメイン内のリソースにアクセスできます。通常、一度ドメインにログオンすれば、アクセス権のあるリソースには追加の資格情報入力なしでアクセスできることが多いです。これは、ログオン時に取得したドメイン資格情報(Kerberosチケットなど)が自動的に使用されるためです。しかし、異なるドメインのリソースにアクセスする場合や、特定のサービスへのアクセスなどでは、追加で資格情報入力が必要になることがあります。

これらのシナリオにおいて、Windowsはアクセス先の要求に応じて、適切な資格情報をユーザーに求めるために「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログを表示します。

4. 認証プロセス – なぜ資格情報が必要なのか?

ネットワークリソースへのアクセスにおける認証プロセスは、概ね以下のような流れで行われます。

  1. アクセス要求の開始: あなたのコンピューター(クライアント)が、ネットワーク上の別のコンピューター(サーバー)が提供する共有フォルダーなどのリソースにアクセスしようとします。
  2. サーバーからの認証要求: サーバーは、そのリソースが匿名アクセスを許可していない(または匿名アクセスよりも高い権限が必要)ことを確認すると、クライアントに対して認証を要求するメッセージを返します。この認証要求には、サーバーが受け入れ可能な認証プロトコル(NTLMやKerberosなど)の情報が含まれます。
  3. クライアントによる認証ダイアログの表示: クライアントのWindows OSは、サーバーからの認証要求を受け取ると、ユーザーに対して「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログを表示し、アクセスに必要なユーザー名とパスワードの入力を求めます。
  4. ユーザーによる資格情報の入力: ユーザーはダイアログにユーザー名とパスワードを入力し、「OK」をクリックします。
  5. クライアントからサーバーへの資格情報送信: クライアントは入力された資格情報を、サーバーが指定した認証プロトコルに従って暗号化またはハッシュ化し、サーバーに送信します。
  6. サーバーによる資格情報の検証: サーバーは受け取った資格情報を、自身の持つアカウント情報(ローカルアカウントデータベース、またはドメイン環境であればActive Directoryなど)と照合して検証します。
    • 認証成功 (Authentication Successful): 入力されたユーザー名とパスワードが正しい場合、サーバーは認証が成功したと判断します。
    • 認証失敗 (Authentication Failed): 入力された情報が正しくない場合、サーバーは認証失敗と判断します。
  7. アクセス許可の確認 (Authorization): 認証が成功した場合、サーバーは次に、認証されたユーザーアカウントが要求されたリソース(共有フォルダー内の特定のファイルなど)にアクセスする権限(読み取り、書き込み、変更など)を持っているかを確認します。これは「アクセス許可(Authorization)」と呼ばれ、認証とは別のプロセスです。共有フォルダー自体の共有許可や、そのフォルダーが置かれているNTFSファイルシステムレベルのアクセス許可設定(NTFSアクセス許可)に基づいて行われます。
  8. 結果の応答:
    • 認証が成功し、かつアクセス許可もあれば、サーバーはクライアントにアクセスを許可し、要求された操作(フォルダーの内容表示、ファイルの読み取り/書き込みなど)が可能になります。
    • 認証は成功したが、アクセス許可がない場合、サーバーはアクセス拒否のエラーを返します。
    • 認証が失敗した場合、サーバーは認証失敗のエラーを返し、クライアントは再度資格情報の入力を求めるか、アクセス拒否のエラーを表示します。

「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログは、この認証プロセスにおいて、ユーザーに資格情報を入力させるためのインターフェースです。正しく認証されない限り、その先にあるアクセス許可の確認プロセスに進むことすらできません。

5. 入力すべき資格情報

「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログが表示された際に、最も重要なのは「どのコンピューター/リソースに対する、誰の資格情報」を入力すべきかを正しく判断することです。

基本的には、「アクセスしようとしている共有リソースが置かれているコンピューター(またはそのコンピューターが属するドメイン)で有効な、かつそのリソースへのアクセス権限を持つユーザーのアカウント情報」を入力する必要があります。

入力形式は、使用しているアカウントの種類によって異なります。

5.1 ローカルアカウントの場合

アクセス先のコンピューターで作成されたローカルアカウント情報を使用する場合です。通常、ワークグループ環境で、アクセス元のコンピューターとアクセス先のコンピューターで同じユーザー名・パスワードのアカウントを作成していない場合に必要になります。

  • ユーザー名: アクセス先のコンピューターでのローカルユーザー名を入力します。多くの場合、ユーザー名の前にアクセス先のコンピューター名を \ で区切って付け加える必要があります。
    • 形式: コンピューター名\ユーザー名
    • 例: アクセス先のコンピューター名が TARGET-PC で、ユーザー名が targetuser の場合 → TARGET-PC\targetuser
    • または、アクセス先のコンピューター自体を示す記号 .\ を使用することもできます。
    • 形式: .\ユーザー名
    • 例: .\targetuser
    • アクセス先のコンピューターでログオン画面に表示されるユーザー名(全角・半角、大文字・小文字含む)を正確に入力してください。
  • パスワード: そのローカルアカウントに設定されているパスワードを入力します。

5.2 Microsoftアカウントの場合

アクセス先のコンピューターがMicrosoftアカウントでサインインしており、そのアカウントを使用してネットワークリソースを共有している場合、またはアクセス先のコンピューターがMicrosoftアカウントでの認証を受け入れる設定になっている場合に使用します。

  • ユーザー名: Microsoftアカウントに登録しているメールアドレスを入力します。
  • パスワード: そのMicrosoftアカウントのパスワードを入力します。

Microsoftアカウントで認証を行う場合、ネットワーク共有の設定によっては、Microsoftアカウントのパスワードではなく、Windowsへのサインインに使用しているPINが必要になることもあります。これはWindowsの設定によりますが、通常はパスワードが求められます。

5.3 ドメインアカウントの場合

アクセス先のコンピューターがActive Directoryドメインに参加しており、ドメインアカウントを使用してリソースへのアクセス制御が行われている場合です。

  • ユーザー名: ドメインユーザー名を入力します。ユーザー名の前にドメイン名を \ で区切って付けるか、ユーザー名の後に @ とドメイン名を付けて入力します。
    • 形式: ドメイン名\ユーザー名
    • 例: ドメイン名が MYDOMAIN で、ユーザー名が domainuser の場合 → MYDOMAIN\domainuser
    • 形式: ユーザー名@ドメイン名 (UPN – User Principal Name 形式)
    • 例: [email protected]
    • どちらの形式が有効かは、ドメインの設定やアクセス先のサービスによりますが、ドメイン名\ユーザー名 の形式が広く使われます。
  • パスワード: そのドメインアカウントのパスワードを入力します。

5.4 入力時の注意点

  • 大文字・小文字の区別: パスワードはもちろん、ユーザー名も正確な大文字・小文字で入力する必要がある場合があります。特にローカルアカウント名やドメインアカウント名で大文字・小文字が区別されることは少ないですが、確実を期すためにアクセス先のコンピューターでの表示通りに入力するのが安全です。
  • CapsLockとNumLock: パスワード入力時には、CapsLockキーやNumLockキーの状態に注意してください。意図しない文字が入力される原因になります。
  • キーボードレイアウト: 異なる言語のキーボードレイアウトを使用している場合、入力される文字が画面表示と異なる可能性があります。
  • 正しいコンピューター名/ドメイン名: ローカルアカウントの場合はアクセス先のコンピューター名、ドメインアカウントの場合はドメイン名を正確に入力してください。コンピューター名が不明な場合は、アクセス先のPCで「システムのプロパティ」やコマンドプロンプトで hostname コマンドを実行して確認できます。ドメイン名が不明な場合は、所属するシステムの管理者に確認してください。

5.5 「資格情報を記憶する」オプション

「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログには、「資格情報を記憶する」というチェックボックスが表示されることがあります。

  • チェックを入れる: このオプションを有効にすると、入力したユーザー名とパスワードがあなたのWindowsプロファイル内に保存されます。次回同じネットワークリソースにアクセスする際には、自動的に保存された資格情報が使用されるため、再度入力する手間が省けます。保存された資格情報は「資格情報マネージャー」で確認・管理できます。
  • チェックを入れない: 資格情報は一時的にのみ使用され、Windowsを再起動したり、しばらく時間が経過したりすると忘れられます。次回アクセス時には再度入力が必要になります。

このオプションの利用については、後ほどセキュリティ上の注意点として詳しく解説します。

6. トラブルシューティング – 資格情報入力がうまくいかない場合

正しい資格情報を入力しているはずなのに、あるいは何をどう入力すれば良いか分からない場合に、アクセスが拒否されることがあります。ネットワーク資格情報に関する問題は様々な原因が考えられます。ここでは、考えられる原因とその解決策を網羅的に解説します。

6.1 入力した資格情報自体に誤りがある

最も基本的な原因です。

  • 確認点:
    • ユーザー名とパスワードは正確か? 特にパスワードは入力中に「目のアイコン」をクリックして表示させ、間違いがないか確認する。
    • 大文字・小文字の区別は合っているか?
    • CapsLockやNumLockが意図しない状態になっていないか?
    • アクセス先のコンピューターまたはドメインで、本当にそのユーザーアカウントが有効か? パスワードの有効期限は切れていないか? アカウントがロックアウトされていないか?
    • ローカルアカウントの場合、ユーザー名の入力形式 (コンピューター名\ユーザー名 または .\ユーザー名) は正しいか?
    • ドメインアカウントの場合、ユーザー名の入力形式 (ドメイン名\ユーザー名 または ユーザー名@ドメイン名) は正しいか? ドメイン名は合っているか?
  • 解決策:
    • 資格情報を再確認し、慎重に再入力する。
    • アクセス先のコンピューターで、該当ユーザー名とパスワードで直接ログオンできるか試してみる。これにより、アカウント自体が有効か、パスワードが正しいかを確認できる。
    • ドメインアカウントの場合は、別のドメインコンピューターでログオンできるか試す、またはドメイン管理者にアカウントの状態を確認してもらう。

6.2 アクセス先のコンピューターで、入力した資格情報のアカウントが存在しない、または無効になっている

特にワークグループ環境でよくある問題です。アクセス元のPCのローカルアカウント情報でアクセスしようとしても、アクセス先のPCに同じユーザー名・パスワードのアカウントがなければ認証できません。

  • 確認点:
    • アクセス先のコンピューターに、入力したユーザー名と同じ名前のローカルアカウントが存在するか?
    • そのアカウントは有効になっているか(無効化されていないか)?
    • ローカルアカウントの場合、そのアカウントにパスワードが設定されているか? (パスワードなしのアカウントは、ネットワーク経由でのアクセスが制限される場合がある)
  • 解決策:
    • アクセス先のコンピューターにログオンし、入力したいユーザー名と同じ名前のローカルアカウントを「設定」→「アカウント」または「コンピューターの管理」→「ローカルユーザーとグループ」で確認する。
    • アカウントが存在しない場合は、アクセス先のコンピューターに新しいローカルアカウントを作成し、パスワードを設定する。
    • アカウントが存在するが無効になっている場合は、有効化する。
    • 最も簡単な方法は、アクセス先のコンピューターに、アクセス元のコンピューターで使用しているローカルアカウントと「全く同じユーザー名・パスワード」を持つローカルアカウントを作成することです。これにより、多くの場合は資格情報の入力を求められることなくアクセスできるようになります(セキュリティ上のリスクも伴います)。

6.3 共有設定またはアクセス許可に問題がある

認証は通ったとしても、アクセス先の共有フォルダーやファイルに対する「アクセス許可(Authorization)」がそのユーザーアカウントに与えられていない場合、アクセスは拒否されます。

  • 確認点:
    • アクセス先の共有フォルダーに対して、入力したユーザーアカウントにアクセス許可(読み取り、変更、フルコントロールなど)が付与されているか?
    • NTFSファイルシステムレベルでのアクセス許可も確認が必要。共有フォルダーのパス上の各フォルダーについて、入力したユーザーアカウントまたはそのユーザーが所属するグループに適切なNTFSアクセス許可が付与されているか?(共有許可とNTFS許可の両方が必要です。どちらか厳しい方の権限が適用されます)。
    • 共有設定自体が正しいか? 隠し共有 (共有名$) ではないか?
  • 解決策:
    • アクセス先のコンピューターで、共有フォルダーのプロパティを開く。
    • 「共有」タブで「詳細な共有」を開き、「アクセス許可」を確認・編集する。入力したユーザーアカウントまたは「Everyone」グループに適切な許可が付与されているか確認する。
    • 「セキュリティ」タブを開き、NTFSアクセス許可を確認・編集する。入力したユーザーアカウントまたはそのユーザーが所属するグループに適切な許可(例: Usersグループに対する読み取りと実行、フォルダーの内容の一覧表示、読み取り権限)が付与されているか確認する。必要に応じて「編集」からユーザーやグループを追加し、許可を設定する。
    • ワークグループ環境で「すべてのユーザー」に対してアクセスを許可したい場合は、「共有」タブの「アクセス許可」と「セキュリティ」タブの両方で「Everyone」グループを追加し、適切な権限を付与する(セキュリティリスクを理解した上で行ってください)。

6.4 ネットワーク設定または接続に問題がある

アクセス先のコンピューターと正しく通信できていない場合も、資格情報入力に失敗する原因になります。

  • 確認点:
    • アクセス元のコンピューターからアクセス先のコンピューターに対してpingが通るか? (コマンドプロンプトで ping コンピューター名 または ping IPアドレス)
    • 両方のコンピューターが同じネットワークセグメントに接続されているか? ルーターやスイッチは正しく機能しているか?
    • ネットワーク探索とファイル共有が有効になっているか?
      • 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「ネットワークの詳細設定」→「共有の詳細設定」で、「ネットワーク探索を有効にする」「ファイル共有を有効にする」がオンになっているか確認する。特に「プライベートネットワーク」のプロファイルで有効になっていることが多い。
    • ファイアウォールが通信をブロックしていないか?
  • 解決策:
    • pingコマンドで通信を確認する。pingが失敗する場合は、ネットワークケーブル、Wi-Fi接続、ルーター、スイッチなどを確認する。
    • ネットワーク探索とファイル共有が有効になっていることを確認する。無効になっている場合は有効にする。
    • Windows Defender Firewallまたはサードパーティ製ファイアウォールソフトの設定を確認する。ファイルとプリンター共有に関連するルールがブロックされていないか確認する。一時的にファイアウォールを無効にしてアクセスできるか試す(問題特定のための一時的な措置とし、解決後は必ず有効に戻す)。
    • IPアドレスでアクセスを試してみる(例: \\192.168.1.100\SharedDocs)。これでアクセスできる場合は、コンピューター名の名前解決に問題がある可能性がある。

6.5 ファイアウォールの設定

前述のネットワーク設定と関連しますが、ファイアウォールは認証プロセスに直接影響を与えることがあります。

  • 詳細:
    • Windows Defender Firewallには、「ファイルとプリンターの共有 (SMB受信)」や「ネットワーク探索 (LLMNR-UDP受信)」などの受信規則があります。これらの規則が無効になっていると、ネットワーク共有に関する通信(認証要求を含む)がブロックされます。
  • 解決策:
    • 「コントロールパネル」→「Windows Defender Firewall」→「Windows Defender Firewallを介したアプリまたは機能を許可する」を開く。
    • リストの中から「ファイルとプリンターの共有」を探し、プライベートまたはパブリックネットワークのチェックボックスがオンになっているか確認する。オンになっていない場合はチェックを入れて「OK」をクリックする。
    • アクセス先のコンピューターでも同様の設定を確認する。
    • サードパーティ製ファイアウォールを使用している場合は、その設定画面でファイル共有に関連するポート(通常はTCP 445, UDP 137/138, TCP 139)が許可されているか確認する。

6.6 保存された資格情報が競合または間違っている

過去に同じサーバー名やIPアドレスに対して誤った資格情報で「資格情報を記憶する」にチェックを入れてアクセスしようとしたことがある場合、Windowsは保存された間違った資格情報を自動的に使用しようとし、結果として認証に失敗します。しかし、ダイアログは表示されずにエラーになることもあれば、何度も資格情報入力を求められることもあります。

  • 確認点:
    • 「資格情報マネージャー」に、アクセス先のコンピューター名やIPアドレスに関連付けられた資格情報が保存されていないか?
  • 解決策:
    • 「コントロールパネル」を開き、「資格情報マネージャー」を選択する。
    • 「Windows資格情報」のセクションを開く。
    • アクセスしようとしているコンピューターの名前やIPアドレスを含む項目を探す(例: \\SERVER01, SERVER01, 192.168.1.100 など)。
    • 関連する資格情報が見つかった場合、それをクリックして詳細を表示し、「削除」をクリックして削除する。
    • 削除後、再度アクセスを試みると、新しい「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログが表示されるはずなので、正しい資格情報を入力する。必要に応じて「資格情報を記憶する」にチェックを入れるか検討する。
    • 「汎用資格情報」のセクションも確認が必要な場合がある。

6.7 パスワード保護共有の設定

ワークグループ環境において、パスワード保護共有の設定がアクセスに影響することがあります。

  • 確認点:
    • アクセス先のコンピューターで、パスワード保護共有が有効になっているか無効になっているか?
      • 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「ネットワークの詳細設定」→「共有の詳細設定」で、「パスワード保護共有」の設定を確認する。
  • 解決策:
    • パスワード保護共有が有効な場合: アクセス先のコンピューターで有効なユーザーアカウント(パスワードが設定されているアカウント)の資格情報を入力する必要がある。匿名アクセスは許可されない。
    • パスワード保護共有が無効な場合: パスワードを入力せずにアクセスできる可能性がある(Guestアカウントによるアクセス)。しかし、Guestアカウントはデフォルトで無効になっており、セキュリティ上のリスクも高いため非推奨。この設定を無効にしてもアクセスできない場合は、前述の「共有設定とアクセス許可」や「ファイアウォール」などの問題を確認する必要がある。通常はパスワード保護共有を有効にしたまま、特定のユーザーに適切なアクセス許可を与える設定を推奨します。

6.8 日付と時刻の同期のずれ (ドメイン環境)

Active Directoryドメイン環境では、認証にKerberosプロトコルがよく使用されます。Kerberos認証は、クライアントとサーバー(およびドメインコントローラー)の時刻が大きくずれていると失敗します。

  • 確認点:
    • アクセス元のコンピューターとアクセス先のコンピューター、およびドメインコントローラーの日付と時刻が、数分以上ずれていないか?
  • 解決策:
    • 両方のコンピューターで日付と時刻の設定を確認し、インターネット上のタイムサーバーと同期させるか、ドメイン環境であればドメインコントローラーと同期するように設定する。
    • 通常、ドメイン参加しているコンピューターは自動的にドメインコントローラーと時刻を同期しますが、設定が変更されていたり、ドメインコントローラーとの通信に問題があったりする場合にずれが生じることがあります。

6.9 コンピューター名の名前解決の問題

ネットワーク上のコンピューター名をIPアドレスに変換する処理(名前解決)がうまくいかない場合、アクセスに失敗することがあります。

  • 確認点:
    • エクスプローラーのアドレスバーにコンピューター名でアクセス (\\コンピューター名\共有名) しているか?
    • コマンドプロンプトで ping コンピューター名 と実行した場合、正しいIPアドレスが表示されるか?
  • 解決策:
    • コンピューター名の代わりにIPアドレスでアクセスを試みる(例: \\192.168.1.100\SharedDocs)。IPアドレスでアクセスできる場合は、名前解決に問題がある。
    • ワークグループ環境では、両方のコンピューターのhostsファイルに相手のコンピューター名とIPアドレスを登録する(手作業でメンテナンスが必要)。
    • ルーターがDNSリレーまたはWINSプロキシ機能をサポートしているか確認する。
    • ipconfig /flushdns コマンドでDNSキャッシュをクリアする。
    • ドメイン環境では、DNSサーバーの設定が正しいか確認する。

6.10 ネットワークアダプターの設定

ネットワークアダプターの設定で、ファイル共有に必要なサービスが無効になっている可能性があります。

  • 確認点:
    • ネットワークアダプターのプロパティで、「Microsoftネットワーク用クライアント」と「Microsoftネットワーク用ファイルとプリンター共有」が有効になっているか?
  • 解決策:
    • 「コントロールパネル」→「ネットワークとインターネット」→「ネットワーク接続」を開く。
    • 使用しているネットワークアダプター(Wi-FiまたはEthernet)を右クリックし、「プロパティ」を選択する。
    • 「Microsoftネットワーク用クライアント」と「Microsoftネットワーク用ファイルとプリンター共有」のチェックボックスがオンになっているか確認する。オンになっていない場合はチェックを入れて「OK」をクリックする。アクセス元のコンピューターとアクセス先のコンピューターの両方で確認が必要。

6.11 SMBプロトコルのバージョン問題

ネットワーク共有にはSMB(Server Message Block)プロトコルが使用されます。古いWindowsバージョン(XPなど)で使われていたSMBv1はセキュリティ上の脆弱性があるため、Windows 10/11ではデフォルトで無効化されています。アクセス先のコンピューターがSMBv1しかサポートしていない場合、接続できません。

  • 確認点:
    • アクセス先のコンピューターが非常に古いOS(Windows XPなど)ではないか?
    • 両方のコンピューターでサポートされているSMBのバージョンを確認する(PowerShellで Get-SmbServerConfigurationGet-SmbClientConfiguration コマンドを使用)。
  • 解決策:
    • 可能な限り、アクセス先のコンピューターのOSを最新化し、SMBv2またはSMBv3をサポートさせる。
    • 非推奨かつセキュリティリスクが高い方法として、 アクセス元のWindows 10/11でSMBv1を有効化する。これは「Windowsの機能の有効化または無効化」から行えるが、ランサムウェアなどの攻撃対象となるリスクが高まるため、特殊な事情がない限り推奨されない。

6.12 Windows Updateが未適用、またはOSバージョンによる互換性の問題

古いOSバージョンや、重要なセキュリティアップデートが適用されていない場合、ネットワーク共有や認証プロトコルに関する問題が発生することがあります。

  • 確認点:
    • 両方のコンピューターのOSが最新の状態になっているか?
  • 解決策:
    • Windows Updateを実行し、OSを最新の状態にする。
    • 非常に古いWindowsバージョン(Windows 7以前など)と最新のWindows 10/11の間では、デフォルトのセキュリティ設定やプロトコルに違いがあり、互換性の調整が必要になることがある。

6.13 ドメイン環境特有のその他の問題

ドメイン環境では、上記以外にも以下のような原因が考えられます。

  • ドメインコントローラーとの通信問題: クライアントがドメインコントローラーと通信できない場合、ドメインアカウントの認証に失敗します。DNS設定、ネットワーク接続、ファイアウォールなどを確認する。
  • グループポリシー設定: ドメインポリシーによって、ネットワークアクセスや認証に関する設定が強制されている可能性がある。例えば、特定の認証プロトコルの無効化や、特定のユーザー/グループへのアクセス制限など。
  • SPN (Service Principal Name) の問題: Kerberos認証において、アクセス先のサービス(ファイル共有など)のSPNが正しく登録されていない場合に認証が失敗することがある(高度な問題であり、通常ユーザーが対処することは稀)。
  • ドメインアカウントのロックアウト: 複数回パスワードを間違えたことで、ドメインコントローラーによってアカウントが一時的にロックアウトされている可能性がある。

6.14 ワークグループ環境特有のその他の問題

ワークグループ環境では、以下のような原因が考えられます。

  • ホームグループ (Windows 7/8): Windows 10以降では廃止された機能ですが、古いOSとの混在環境では影響する可能性がありました。ホームグループを使用している場合は、ホームグループパスワードによる認証も検討する必要がありましたが、現在は非推奨です。
  • Guestアカウント: 前述のパスワード保護共有を無効にした場合に利用される可能性のあるアカウントですが、デフォルトで無効化されています。セキュリティ上の理由から、Guestアカウントを有効にしてネットワーク共有を行うことは推奨されません。特定のユーザーアカウントを作成し、そのアカウントに適切な許可を与えるのが安全な方法です。

これらのトラブルシューティング手順を一つずつ確認し、問題の原因を特定していくことが重要です。最も可能性が高いのは、入力した資格情報自体に誤りがあるか、アクセス先の共有設定やアクセス許可に問題があるケースです。

7. セキュリティ上の考慮事項

ネットワーク資格情報の入力は、セキュリティと利便性のトレードオフを伴います。いくつかの重要なセキュリティ上の考慮事項を理解しておくことが重要です。

  • 強力なパスワードの使用: ネットワークリソースへのアクセスに使用するアカウントのパスワードは、推測されにくい強力なものを使用してください。これにより、ブルートフォース攻撃などによる不正アクセスを防ぎます。
  • 不要な共有の無効化: 意図しないリソースが共有されていないか確認し、不要な共有は無効にしてください。
  • アクセス許可の最小権限の原則: 共有リソースへのアクセス許可は、必要最小限のユーザーまたはグループに、必要最小限の権限(読み取りのみなど)を与えるように設定してください。「Everyone」グループにフルコントロールの権限を与えるのは非常に危険です。
  • 「資格情報を記憶する」オプションのリスク: このオプションを有効にすると、資格情報があなたのコンピューターに保存されます。
    • 公共の場所や共有PC: 公共の場所や他の人も使用する可能性のあるコンピューターでは、絶対に「資格情報を記憶する」にチェックを入れないでください。
    • 自宅PCでもリスク: 自宅で使用しているPCでも、マルウェアに感染した場合や、PCを紛失・盗難された場合に、保存された資格情報が悪用されるリスクがあります。
    • リスクと利便性のバランス: 自宅の信頼できるネットワーク内で、自分しか使わないPCであれば、利便性のためにチェックを入れることを検討できますが、リスクを理解しておくべきです。
  • GuestアカウントやEveryoneグループへの過度なアクセス許可: 前述の通り、これらの設定は誰でもパスワードなしでアクセスできてしまうため、非常に危険です。特定のユーザーアカウントにアクセス許可を与える方法を強く推奨します。
  • SMBv1の無効化: 古いSMBv1プロトコルは多くの脆弱性が発見されており、多くのOSでデフォルトで無効化されています。有効化する必要がある場合は、そのリスクを十分に理解し、必要最小限の範囲にとどめるべきです。
  • ファイアウォールの適切性: ファイアウォール設定が適切であることを確認し、不要なポートが開いていないか確認してください。

8. 「資格情報を記憶する」オプションの詳細と管理

「資格情報を記憶する」オプションを選択すると、入力したネットワーク資格情報はWindowsの「資格情報マネージャー」に保存されます。

資格情報マネージャーとは?

資格情報マネージャーは、WindowsがWebサイト、接続されたアプリケーション、ネットワークリソースへのサインインに使用するユーザー名、パスワード、証明書などを一元管理する機能です。主に以下の2種類の資格情報を扱います。

  • Web資格情報: Webサイトへのサインイン情報(Microsoft EdgeやInternet Explorerが保存したものなど)。
  • Windows資格情報: ネットワーク上のコンピューターやサービスへのアクセスに使用される資格情報(共有フォルダー、リモートデスクトップなど)。「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログで「資格情報を記憶する」にチェックを入れた場合に保存されるのはこちらです。
  • 汎用資格情報: Web資格情報やWindows資格情報に分類されない、特定のアプリケーションやサービスによって保存される資格情報。

保存されたネットワーク資格情報の確認と削除

  1. 「コントロールパネル」を開き、「資格情報マネージャー」を選択します。(検索バーに「資格情報マネージャー」と入力しても見つかります)。
  2. 「資格情報マネージャー」ウィンドウが表示されたら、「Windows資格情報」をクリックして展開します。
  3. ここに、過去に「資格情報を記憶する」にチェックを入れて保存したネットワーク資格情報の一覧が表示されます。各項目は通常、アクセス先のコンピューター名やIPアドレス、またはサービスのアドレス(例: \\SERVER01, 192.168.1.100, Microsoft_VIRTUAL_DESKTOP_SSO_Credential など)で識別されます。
  4. 確認したい資格情報をクリックして展開すると、ユーザー名などの詳細が表示されます。
  5. 不要になった資格情報や、間違った情報が保存されている資格情報は、展開した項目内の「削除」をクリックして削除できます。削除を確認するメッセージが表示されるので、「はい」をクリックします。

新しい正しい資格情報を再入力したい場合は、まず資格情報マネージャーから既存の古い/間違った資格情報を削除してから、再度ネットワークリソースにアクセスしてダイアログを表示させ、正しい情報を入力して「資格情報を記憶する」にチェックを入れてください。

コマンドラインからの管理 (cmdkey コマンド)

上級者向けですが、資格情報マネージャーはコマンドプロンプトやPowerShellから cmdkey コマンドを使って操作することも可能です。

  • 保存されている資格情報の一覧を表示: cmdkey /list
  • 特定の資格情報を削除: cmdkey /delete:ターゲット名 (例: cmdkey /delete:SERVER01)
  • 資格情報を追加: cmdkey /add:ターゲット名 /user:ユーザー名 /pass:パスワード (パスワードをコマンドラインに平文で入力するのはセキュリティ上推奨されません)

これらのコマンドは、スクリプトによる自動化や、GUI操作が難しい場合に役立ちますが、通常は資格情報マネージャーのGUIを使用するのが簡単です。

9. 代替のアクセス方法/共有方法

ファイルやリソースを共有し、アクセス制御を行う方法は、ネットワーク資格情報を使用したWindowsファイル共有以外にもいくつかの方法があります。シナリオによっては、これらの代替方法がより適している場合もあります。

  • クラウドストレージ(OneDrive, Google Drive, Dropboxなど): インターネット経由でファイルを共有する最も一般的な方法です。アカウントベースの認証と、共有リンクによるアクセス制御が可能です。異なるネットワークやデバイス間での共有が容易ですが、大容量の共有やオフラインアクセスには制限がある場合があります。
  • FTP/SFTPサーバー: ファイル転送に特化したプロトコルです。認証が必要で、特定のユーザーにファイルへのアクセス権限を与えることができます。Webサイトの公開などによく使われます。
  • WebDAV: HTTPプロトコルを拡張して、Webサーバー上のファイルをネットワークドライブのように扱うことができるようにしたものです。認証とアクセス制御が可能で、インターネット経由でのファイルアクセスに利用されることがあります。
  • リモートアクセスツール(Remote Utilities, TeamViewer, AnyDeskなど): 画面共有やリモート操作を主目的としたツールですが、多くの場合、ファイル転送機能も備えています。ユーザーアカウントまたはセッションパスワードによる認証を行います。特定のPCへのリモートアクセスに適しています。
  • VPN (Virtual Private Network): 離れた場所から企業ネットワークなどに安全に接続するための技術です。VPN接続が確立されれば、あたかも社内ネットワークにいるかのように、通常のWindowsファイル共有などを使用してリソースにアクセスできるようになります。認証はVPN接続時に行われます。

これらの代替方法は、それぞれ異なる認証メカニズムやセキュリティモデルを持っています。どのような方法が最適かは、共有したいリソースの種類、アクセスする頻度、ユーザーの場所、必要なセキュリティレベルなどによって異なります。しかし、LAN内のPC間でのファイル共有という目的であれば、Windowsの標準機能であるファイル共有(SMB)が最も手軽で一般的であり、「ネットワーク資格情報の入力」を正しく理解・対処することが重要となります。

10. まとめ

Windowsセキュリティの「ネットワーク資格情報の入力」ダイアログは、ネットワーク上の共有リソースへのアクセスを制御するための重要な認証ステップです。このダイアログが表示されるのは、アクセス先のコンピューターやドメインが、あなた自身が正当なユーザーであることを証明するための情報(ユーザー名とパスワード)を求めているからです。

重要なポイントの再確認:

  • 入力すべき資格情報は、アクセスしようとしている共有リソースが置かれているコンピューター(またはそのコンピューターが属するドメイン)で有効なアカウント情報です。
  • アカウントの種類(ローカルアカウント、Microsoftアカウント、ドメインアカウント)によって、ユーザー名の入力形式が異なります(コンピューター名\ユーザー名、メールアドレス、ドメイン名\ユーザー名 など)。
  • パスワードは正確に、大文字・小文字に注意して入力する必要があります。
  • 「資格情報を記憶する」オプションは便利ですが、セキュリティリスク(特に公共の場や共有PCでの使用、マルウェア感染、紛失・盗難)を伴うため、利用は慎重に検討すべきです。
  • 資格情報を正しく入力してもアクセスできない場合は、入力間違いだけでなく、アクセス先の共有設定やアクセス許可、ネットワーク接続の問題、ファイアウォールの設定、保存された古い資格情報、日付と時刻のずれなど、様々な原因が考えられます。一つずつトラブルシューティングを行うことが解決への鍵です。
  • トラブルシューティングの際には、「資格情報マネージャー」を確認し、保存されている古いまたは間違った資格情報を削除することが有効な対策の一つです。

ネットワーク共有と資格情報は、Windowsを複数台利用している環境や、オフィスでの共同作業において不可欠な機能です。この記事で解説した内容を参考に、正しく資格情報を入力し、必要に応じてトラブルシューティングを行うことで、よりスムーズかつ安全にネットワークリソースを活用できるようになるでしょう。

もしこの記事を読んでも問題が解決しない場合は、アクセスしようとしている具体的な環境(ワークグループかドメインか、Windowsのバージョン、共有設定の詳細など)に関する情報を持って、システムの管理者や専門家に相談することをおすすめします。


これで、Windowsセキュリティの「ネットワーク資格情報の入力」に関する約5000語の詳細な解説記事は完了です。ユーザーが直面する可能性のある様々な側面(原因、入力方法、トラブルシューティング、セキュリティ、管理)を網羅し、具体的な手順や考慮事項を含めて説明しました。

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